インフィニット・ストラトス~黒衣の創造神~
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第2巻
対戦のあと×風呂
「一つ忠告しておくぞ。アイツに会うことがあれば、心は強く持て。あれは未熟者のくせにどうしてか、妙に女を刺激するのだ。油断していると惚れてしまうぞ」
そんな風に言う教官はひどく嬉しそうで、それでいてどこかで照れくさそうで、なんだか見ているほうがモヤモヤとした。だから、今ならわかる。あれはそう、ちょっとしたヤキモチだったのだ。それでつい、あんなことを聞いてしまった。
「教官も惚れているのですか?」
「姉が弟に惚れるものか、馬鹿め」
ニヤリとした顔で言われて、私はますます落ち着かなくなる。教官にこんな顔をさせる、その男が羨ましい。そして出会ってわかった。戦って、理解した。強さとは何か、その答えは無数にあるだろう。と目を開けたら知らない天井だった、医療のにおいがするから保健室かと思った。
「う、ぁ・・・・」
「気が付いたか」
その声は聞き覚えあるどころか、私の敬愛する教官である織斑千冬だった。
「私・・・・は・・・・」
「全身に無理に負荷がかかったことで筋肉疲労と打撲がある。しばらくは動けないだろう。無理をするな」
千冬はそれとなくはぐらかしたつもりだったが、そこはさすがにかつての教え子。簡単に誘導されてはくれなかった。
「何が・・・・・起きたのですか・・・・・?」
無理をして上半身を起こそうにも起きれなかった、全身に痛みがあり顔を歪める。目だけは真っ直ぐに千冬を見つめていた。
「ふう・・・・。一応、重要案件である上に機密事項なのだがな」
しかし、そう言って引き下がる相手ではないので、千冬はここだけの話として語る。
「VTシステムは知ってるな?」
「はい・・・・。正式名称はヴァルキリー・トレース・システム・・・・。過去のモンド・グロッソの部門受賞者の動きをトレースするシステムで、確かあれは・・・・」
「そう、IS条約で現在どの国家・組織・企業においても研究・開発・使用すべてが禁止されている。それがお前のISに積まれていた」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「巧妙に隠されてはいたがな。操縦者の精神状態、機体の蓄積ダメージ、そして何より操縦者の意志・・・いや、願望か。それらが揃うと発動するようになっていたらしい。現在学園がドイツ軍に問い合わせているが、織斑によればすでに国連軍が強制捜査をしているそうだ」
千冬の言葉を聞きながら、ボーデヴィッヒはぎゅぅっとシーツを握りしめた。その視線はいつの間にかうつむいていたが、一つだけ聞きなれない言葉を聞いた。国連軍という言葉
を。なぜと思ったら千冬が口を開いた。
「なぜ、国連軍がということだが。既に知っていたようだ、つまり泳がせていたと聞く。そして映像を証拠にして、現在強制捜査をしてるということだ。それを聞いたのはついさっきのことだが」
「私が・・・・・望んだからですね」
あなたに、なることを。その言葉は口にはしなかったが、千冬には伝わった。
「ラウラ・ボーデヴィッヒ!」
「は、はいっ!」
いきなり名前を呼ばれ、ボーデヴィッヒは驚きを合わせて顔をあげる。
「お前は誰だ?」
「わ、私は・・・・・。私・・・・・は、・・・・・」
その言葉に続きが出てこない。自分がボーデヴィッヒであると、今の状態ではどうしても言えない。
「誰でもないのなら、ちょうどいい。お前はこれからラウラ・ボーデヴィッヒになるがいい。何、時間は山のようにあるぞ。何せ三年間はこの学園に在籍しなければいけないからな。そのあとも、まあ死ぬまで時間はある。たっぷり悩めよ、小娘」
千冬の言葉が意外だった。まさか、自分を励ましてくれるなんて思ってもみなかった。ボーデヴィッヒいやラウラは、何を言うべきか考えていたが口を開いたままになっていた。そんなラウラに、千冬は席を立ってベッドから離れる。もう言うべきことはないのであろう、教師の仕事があるからだ。
「ああ、それから」
ドアを手にかけたところで、振り向くことなく再度言葉を投げた。
「お前は私にもなれないし、一夏にもなれないぞ。この前までは弟だったのに、今は兄となってしまった。私は立場が逆転して妹になってしまったがな」
にやりと笑みを残して行ってしまったが、千冬が部屋を去ってから数分後なぜか笑っていた。
『トーナメントは事故により中止となりました。ただし、今後の個人データ指標と関係するため、全ての一回戦は行います。場所と日時の変更は各自個人端末で確認の上』
ピ、と誰かが学食のテレビを消す。俺は醤油ラーメンを食べていた、セシリアとシャルも一緒に夕食を食っていたが。
「一夏さんの言うとおりになりましたね」
「だが、セシリアとシャルは一回戦やるんだろう。まあ勝つと思うが」
「そうだね。あ、一夏、七味取って」
俺たちはあのあと教師部隊と見ていた千冬と山田先生に説教した。命令に背いたからだ、で最後にハリセン一発して始末書を書けと言っておいた。説教したあと、食堂に行くとなぜか多くの生徒がいた。おそらくあのことを聞きたいのかなと思いながら食事をした、そのあとのテレビでの帯での連絡事項が入った。
「ふー、ごちそうさん。学食といい食堂といい、この学園の料理はうまいな。・・・・ん?」
なぜだか知らんが、さっきまで俺たちの食事が終わるのを待っていたが、女子一同はひどく落胆していた。
「・・・・優勝・・・・チャンス・・・・消え・・・・」
「交際・・・・無効・・・・・」
「・・・・うわああああああんっ!」
バタバタと数十名の女子が泣きながら走って行く様子を見た、セシリアとシャルは。
「一夏さん、トーナメントの優勝者は一夏さんと交際できるということでしたの」
「噂で聞いたけど、まさか本当だったとはね。一夏、あそこに箒がいるけど大丈夫かな?」
とそこにいたのは魂が抜けかかっていた箒だった。ひとまず、俺は箒のそばに行く。
「そういえば箒、先月の約束だが・・・」
「ぴくっ」
反応したから生きてたな。
「約束だが断っておく、それに俺とお前の歳を考えてみろ」
と言ってから席に戻った、箒は固まっていたがすぐに復活し俯いたまま部屋に戻って行った。
「一夏、あれでよかったの?」
「いいんだ、あれで。それに俺には既に好きな人がいることはお前ら知ってるだろう」
「確かにそうですが、私たちも負けられませんわよ」
俺は言うことを言って食器を片づけて、飲み物を飲んでいた。そこへ来たのは山田先生だった、ハリセンの後遺症なのかたまに頭をさすっていた。
「あ、織斑さん。ここにいましたか」
「それよりどうしましたか?」
「織斑さんに朗報です、今日から男性の大浴場使用が解禁です!」
「あれ、それは来月になるはずでしたよね」
「それがですね。今日は大浴場のボイラー点検があったので、もともと生徒たちが使えない日なんです。でも点検自体はもう終わったので、それなら男性である織斑さんに使ってもらおうって計らいなんですよ」
そういうことか、この疲れは風呂でしっかりと取りたいと思っていたがちょうどいい。なんか俺が出場するとトラブルが続くが、まあいいか。
「ありがとうございます、山田先生」
と思ったらいいことを考えた、落胆した生徒を元気づけるためにも。俺は山田先生に、小声で言ったら赤くした。
「そ、それはダメですよ。いくら織斑さんが男性であっても一緒に入りたい生徒なんて」
「先生、ここにいましてよ。あとシャルロットさんも」
「え、えっと。ダメなものはダメですよ!『さっき個人端末に俺と一緒に風呂入りたい奴はいるか?いる奴は食堂に集合と書いておいた』え?」
そしたら少人数だったが、来た女子たち。ほとんどが一年だったけど、しかも着替えを持っている。あと女性教師もいた、その中には千冬もいた。
「お、織斑先生。ダメですよね、これは」
「本来ならダメだが、もう集まってしまったから諦めるしかないぞ山田先生」
「で、ですよね。アハハハ。はあ」
ため息が出た山田先生、セシリアとシャルは着替えを持ってきていた。準備速いなと思って大浴場に行った、ちなみに女子たちにはこう言ってある。
「女の裸は見慣れてる」
とね、俺は奥に行って量子変換機で制服から裸になりタオルを腰に巻いた。かごには量子変換機で出した下着と半袖とズボンを置いて。女子たちのところへ行くと俺の体を見た者は赤くなっていた。先に入って、体と頭を洗ってから湯船に入った。洗ってるあいだも腰にタオル巻いてる、女子たちは入ってきたが千冬は堂々としてた。ちなみにセシリアとシャルも堂々としてたけど、まあいいやと思って湯船に入る。
「まったく、本来ならダメなんだぞ一夏」
「いいじゃねえか、男の裸見るのもいい経験になると思うが。なあセシリアとシャル」
風呂の周りは女子と女性で埋め着くされたがまあいいとしよう。外がうるさいな、何だと思い防水された端末を見ると大浴場の前には女子が集まっていた。おそらく端末に入れといたメッセージを今見た女子たちだろうな、教師たちが通せんぼしてる。湯船に入ってから、結構経つので出ることにした。タオルを巻いて脱衣室に行くと、そこには女子たちがいた。俺は、気にしないで奥のほうに行き、タオルで拭いたあと下着をはいて半袖と長ズボンをはいて大浴場からでた。扉を開けると女子で埋まっていたが俺が出ると撤退した。そのまま部屋に行ってから頭を拭いて、タオルを量子変換機の中に入れた。次の日になって教室に行くと、昨日の風呂の話題になっていた。入れた女子は顔を赤くして入れなかった女子は落胆していた。箒もそのうちの一人だった。
「織斑さん、昨日のことで本当だったのですか?」
「何がだ。ああ風呂のこと、マジに決まってるじゃん。まあ一緒に入ったよ」
「一夏ぁっ!!!!!」
ん?なんだ。ISを展開した鈴は衝撃砲をこちらに撃ったので、こちらもISを装備して当たった。煙から現れたのは、ボーデヴィッヒだった。その姿はシュヴァルツェア・レーゲンを装備してたが、レールカノンがなかった。俺はISを解除させて、ラウラに向けて謝礼をした。とその前に。
『パシィィィィィぃぃイイン』
「馬鹿者!勝手に装備するんじゃない!死ぬかと思ったぞ」
「い、一夏!昨日女子と風呂に入ったっていうのは本当?」
「そうだが、それも教師の許可で入った。それが何か?あととっとと教室に戻れ。でお前のIS直ったのか」
「・・・・コアはかろうじて無事だったからな。予備パーツで組み直した」
そうかという前に何かしようとしたラウラにハリセン一発。
「何をする、ラウラ」
「何をってキスをしようとしただけだが」
再びハリセン一発。そして一言。
「馬鹿者!人前でキスするバカがいるか。さっさと席に戻れ!」
と言ったあと渋々席に戻るラウラだった。そのあと国連軍からのメールでドイツ軍にあったVTシステムの研究所は強制捜査により、全てのデータを削除。ドイツ軍には、たっぷりと謝礼金が払われた。
一方その頃ある秘密ラボでは。
「むーん・・・」
そこは奇妙な部屋であった。部屋のいたるところには機械の備品がちりばめられ、ケーブルがさながら樹海のように広がっている。部屋にいるのはISを開発した張本人である、篠ノ之束だった。束はIS学園でやっていた映像を見ていた、そこには妹の箒と弟のように可愛がっていて織斑一夏の姿が。しかし、昔と違いなぜか束より歳が1個か2個下になってしまった。なぜだろうといろいろ調べたがわからずにいた。そこでIS学園でやっていたトーナメントで愛しの一夏のISを見たときは興味津々だった。
「おー、おー、これがいっくんのISかぁ。見たことないなー」
そして始まって10分で箒をリタイアにまで追い込んだあのIS。超調べたいと思った束であった。そのあとからは、ジャミングによって映像は見れなかったが最後だけ見れたのはいっくんのISが大きくなったことだった。そこで映像は切れたが、束さんは興味津々だった。時間が結構経ったときに電話が鳴った、しかもこの音はゴッド・ファーザのテーマだった。
「こ、この着信音はぁ!トウッ!」
大ジャンプ。もとい、携帯電話にダイブする。そしてすぐさま携帯電話を耳に当てる。
「も、もすもす?終日?」
「・・・・・・・・・・」
ぶつっ。切れた。二重の意味で。
「わー、待って待って!」
束の願いが通じたのかはたまた神様のいたずらか、携帯電話は再度鳴り響いた。
「はーい、みんなのアイドル・篠ノ之束ここに、待って待ってぇっ!ちーちゃん!」
「その名で呼ぶな」
「おっけぃ、ちーちゃん!」
「・・・・はぁ。まあいい。今日は聞きたいことがある」
「何かしらん?」
「お前は今回の件に一枚噛んでるのか?」
「今回、今回、はて?」
束は首をかしげる。とぼけてるのではなくわからない。
「VTシステムだ」
「ああ、あれ?うふふ、ちーちゃん。あんな不細工なシロモノ、この私が作ると思うかな?私は完璧にして十全な篠ノ之束だよ?すなわち、作るものも完璧において十全でなければ意味がない」
「・・・・・・・・・・・・・・」
「ていうか忘れてたけど、つい前に国連軍の人たちが研究所を爆破したそうだよ。データも削除されてた死亡者ゼロだったよ」
「そうか。では、邪魔したな。あと解析してほしいISがあるんだが」
「何かな?もしかしていっくんのISかな。あのとき白騎士を装着したちーちゃんの前に出てきたのがいっくんだったなんて驚きだよ」
「解析は後程で構わない。では、またな」
ぶつっと切れる。今度はもうかかってこない。
さっそくいっくんのISを調べようにも調べられなかった。そのあと、ずっと動画を見てたら着信音が鳴った。それに反応して再び携帯電話に耳を当てる。
「やあやあやあ!久しぶりだねぇ!ずっとずーーーーーーーーっと、待ってたよ!」
「・・・・。・・・・・姉さん」
「うんうん。用件はわかってるよ。欲しいんだよね?君だけのオンリーワン、代用無きもの、箒の専用機が。モチロン用意してあるよ。最高性能にして規格外仕様。その名は『紅椿』」
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