遊戯王ARCーⅤ 〜波瀾万丈、HERO使い少女の転生記〜
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四話 お邪魔です。
ピッピッピ♪と目覚まし時計の軽快なアラーム音が寝ている私を叩き起こす。まだ多少眠たいが起きなければと身体を起こそうとするが重りが乗ったように身体が動かない。
か、金縛り⁉︎
即座にその単語が思い浮かび、どうにかしようと動かない身体で必死にもがいているとうーんと誰かの声が聞こえた。発生源は掛け布団の中からだ。
私の腰辺りにちょうど人一人分の膨らみができており、もぞもぞと動いていると、その塊が布団の中から出てくる。
「ふわぁ〜……。おはようございます♪優希さん」
ドクロ柄のパジャマを着たデスガイドが少し眠たそうな表情をしながらも満面の笑みを浮かべ、朝の挨拶をしてくる。
金縛りの正体はこいつか……。
金縛りなどではなく、ただ単にこの阿保が私を抱き枕にして寝ていた為に動けなかったのだ。というか、いつの間に実体化していた!?
「アレ?どうしました?まだ、眠いんですか〜?しょうがないですねー、私が添い寝してあげますよ♪」
そういうとまた布団に潜り、寝始めようとする。
「寝言は寝てから言え!」
マイペース過ぎる私の精霊に腹が立ち、ベットから蹴落とす。ギャフンと悲鳴をあげつつ、強打した腰をさすっている。
「イタタ……なんか酷くありません?まぁ、冷たい優希さんもいいですけど」
こいつ、強過ぎる⁉︎百合に加え、Mだと!もう弱点ないじゃん!
ハァとため息を吐くとベッドから降りて服を着替えていく。もうデスガイドなんて無視だ、無視!
ふと部屋に備え付けられた時計を目にし、あることを思い出す。
「って、今何時⁉︎」
「一大事〜‼︎って、痛い⁉︎なんで叩くんです!」
今日は弟の徹とデュエルディスクを買いに行ったりする約束をしていたのだ。そして、時間を確認すると朝の9時。8時に起きようと思っていたのに寝坊だ。急いでリビングに行くと案の定、不機嫌です。と頬をぷっくり膨らませながら食パンを齧る我が弟がいた。
リスみたいで可愛いと思ったのは内緒である。
その後、なんとか徹の機嫌を宥め、出発できたのは約一時間後だった。
姉って、何かと大変だ……。
◆◇◆
ーー時間は飛んで午後2時過ぎ
「おい、デュエルしろよな」
「蟹の台詞をとるな」
「??」
ショッピングを終え、やれ一休みと思っていたらこの展開である。さすが、デュエル万能論が平然と成り立つ世界。
え?状況がわからない?説明すればいいんでしょー。
さっくり簡潔に言うと休んでた私たちの所に太めの男の子がやってきて、徹に喧嘩を売り始めたと思ったら、急に某蟹の台詞を盗用。そこで私が叱ったという場面である。お判りいただけたであろうか?
「そーいや、この子誰?」
ベンチに腰掛けている私たちの目の前で腰に手を当て踏ん反り返っている齢12歳くらいの子を指差していう。
「剛力 太志だ。徹のクラスメイトだ、覚えとけ」
徹に聞いたはずなのだが、太志君が答える。なんだが、偉そうだ
私が考え事をしていると徹と太志君との間で勝手に話が進んでいた
「お前のレアカード寄越せよ」
「ヤダよ!なんで、太志くんにやらなきゃいけないのさ!」
「あぁ?おまえなんかがカード持ってても宝の持ち腐れだろ。俺が貰って有効活用してやるよ。」
「ヤダ!」
「おまえのカードは俺のもんでもあるんだ!いいからよこしな」
「太志君なんかにやるもんか!!」
「なんだと、口答えすんのか⁉︎じゃあ、デュエルだ!負けた方が勝った方にレアカードを差し出す。良いな?」
なんだこのデュエルまでの出来レースのような話運びは⁉︎しかも、太志君の考え方が完全にジャイアニズムである。この世界にも剛田主義は広まっていた!?
しかし、太志君は所為、苛めっ子かガキ大将なのか?
気づくと徹が視線で助けてと訴えてかけていた。男の子なんだから頼るなよ……。
「頑張れ。それに私がレクチャーしてあげたんだ負けるはずないじゃん。」
ぐっとサムズアップして我が弟を励ます。それで勇気が出たのか、諦めたのかしぶしぶとデュエルディスクをセットする。太志君はニヤニヤと気色悪い笑みを浮かべ、徹の準備を待っているのだろう。
どうせ、取らぬ狸の皮算用でもしてんでしょー。まぁ、そんなやつに負けるわけないじゃん
「デュエルだぁ!!」
「はぁ……デュエル」
半ば無理やりにデュエルが開始される
「僕の先行、モンスターをセットしてエンド」
昨日と比べ、割と消極的な一ターン目。初手が悪かったのか、今だビビってるのか?
「俺のターンだ!ドロォー!来たぜ、俺のエース!バルバロスを妥協召喚!」
【神獣王 バルバロス】 地 ☆8 ATK3000→1900
バルバか〜……。スキドレ・突撃命令型かな?まぁ、冥界軸っていう選択肢もあるけど妥協召喚してきたから前者だろうね。
「いくぜ!バルバでセットモンスターに攻撃だ!トルネード・シェイパー!」
風を纏った大槍が伏せカードを貫く
「オジャマ・ブルーの効果発動!デッキからおジャマ・レッドとおジャマ・デルタ・ハリケーンをサーチするよ」
おジャマと聞いた瞬間、キョトンとするもすぐに再起動し大笑いしだす
「ハハハハ!マジかよ!そんな弱小モンスターデッキかよォ。いつもの凡骨デッキはどうしたんだぁ?」
ワハハと大笑いしている太志君を見て肩をすくめている徹。多分、もう手札に揃ってんだろうね。
「カード二枚伏せて、エンドだ。この勝負俺の勝ちだわー。諦めてサレンダーしたらどうだよー」
挑発的な笑いをして、徹を煽る。
「行くよ、ドロー!手札からテラ・フォーミングを発動して、おジャマ・カントリーをサーチして、そのまま発動する。そして、おじゃまカントリーの効果でおじゃマジックを捨て、墓地のブルーを特殊召喚!そして、マジックの効果発動。デッキから黄、黒、緑のおじゃまをサーチする!そして、手札からおジャマ・レッドを召喚!そして、効果発動!」
おジャマデッキにとって理想的な動きを見せる徹だが、その流れに待ったをかけるのが一人
「やらせるかよ!レッドの効果にチェーンしてスキドレ発動!さらにチェーンして最終突撃命令を発動!」
突撃命令で強制攻撃、スキドレでレッドの効果を無効にしつつバルバの攻撃力を元に戻す。中々理想的だが、甘い!!
「カードを二枚伏せる」
「オォッと?突撃命令の効果で攻撃表示になってもらうぞ?」
ニヤリと笑みを浮かべる。このままじゃ、次のターンに無謀にも晒されてるおジャマが攻撃され、大ダメージを食らってしまう。
だが、徹は諦めの表情をするどころか、笑っている
「まだ終わってない!手札抹殺発動!」
ここで、手札交換か〜。ということは、伏せカードは……アレか……
太志君も手札交換に驚きを見せているものの余裕の笑みをみせている。悪足掻きくらいにしか思ってないのだろう。
この手札抹殺、手札交換が本命じゃない。それは手札の三体のおジャマを墓地に送る事だ!
「リバースカードオープン!トライワイトゾーン。墓地から黄、黒、緑のおジャマを特殊召喚!おじゃまだよ、全員集合!!」
徹の場に赤、青、黄、黒、緑全てのおじゃまが集結する。
「そして、もう一枚のリバースカード、おジャマ・デルタ・ハリケーン!ぶっとばせぇ!」
強烈な暴風が太志君の場をスッキリさせる。一方、一掃された太志くんは絶望的表情である。ハハ、ざまみろ
「おジャマでダイレクトアタック!」
「うぎゃぁぁ⁉︎」
三体のヒップアタックをモロくらい尻餅をつく。う〜ん、ジャストキル。やったね、TFならDPにおまけがつくよ。
そんなことを考えていると太志君が、よろよろと起き上がってくる。そして、謝罪の言葉でも述べると思いきや……。
「お前、仕組んでただろ!なんであんな雑魚モンスターに負けなきゃいけねーんだ!デルタハリケーンなんて早々決まるもんじゃねーし。」
負けた理由が徹のインチキだと言い出す太志君。理不尽な言い訳に徹も困惑した表情をとる。
「そもそもお前なんかに俺が負けるわけねーんだ!LDSに通ってるエリートの俺が…………ひっ⁉︎」
言いたい放題言っていた太志君が急に小さい悲鳴をあげる。
「言いたい事はそれだけ…………かな?」
私はニコリと笑いながら太志君へと話しかける。
◆◇◆
side徹
休日、久しぶりに姉ちゃんと買い物を楽しんでいた。けど、すぐに嫌な時間へと変わってしまう。なぜならクラスの苛めっ子 太志君がやってきたからだ。太志君は身長が僕よりも高く、体格もガッチリとしているため力では絶対に敵わない。そして、彼は僕よりもデュエルの実力が上だ。いつも地区の大会で当たると負けてしまう。この前は運良く彼が出場せずに勝ち残る事ができ、それを姉ちゃんに自慢したがアレはたまたま運がよかっただけだ。
そして、半ば無理やりデュエルを申し込まれ姉ちゃんに助け船を求めるも逆に応援される始末。姉ちゃんに組んでもらったおジャマデッキを唯一の心の支えとしてデュエルを開始した。そして、最初の手札を見たとき、確信した。"彼に勝てる"と……。そして、途中スキドレによる妨害があったものの《一撃必殺 おジャマ・デルタ・コンボ(姉命名)》を決めて勝つことができた。そして、太志君から負け惜しみの言葉でも聞けるかと少し期待していたらとんでもないことを言い出した。
インチキだ!と……。
即座に言い返したかったが、行動に移す勇気が出なかった。デュエルでは勝てても、ケンカでは勝てない。反論すれば逆ギレして殴ってくるだろう。それが嫌で何も言い返せなかった。だけど、途中言いたい放題言っていた太志君が悲鳴をあげた。そして、太志君の視線を辿り、姉ちゃんを見るとゾクリと悪寒を感じた。そこには、いつもの姉ではなく、修羅がいた。
姉ちゃんは肝が冷えるような低くゆったりとした口調で太志君へと話しかけた。その時の表情は一応笑顔を作っているものの、目がまったく笑っていない。こんな姉ちゃんは初めて見る……。
◆◇◆
「弟の友人関係に口出しとかあまりしたくないけどね…………。流石に私でも、二つほど見過ごせない事があったよ。」
人差し指と薬指の二本を立てて、太志君へと見せる。
「デュエルを賭け事に使ったり、ケンカに使ったり私に関係ないことだから構わないけどね、負けたからには潔く負けを認めようか?負けたのを相手のせいにするのはかっこ悪いし、それにマナー違反だからね。」
諭すように、それでいて威圧し反論を許さないような口調で話す。太志君は縮こまりながら、はい……と小さく答える。
「それで二つ目。………………あんまり私の弟を馬鹿にしないでくれるかな?男の子だから多少のケンカやいざこざは見逃してあげるけど、度が過ぎると……
………………潰すよ」
すっと目つきが鋭くなり、太志君を睨みつける。蛇に睨まれた蛙のようにガクガクとその場で震え動けず、ただ首をこくこくと動かすだけだった。
そこまで言うと、また笑顔に戻り一言。
「あ、今度、弟にケンカ売る時は私がたか〜く買ってあげるからそのつもりで。コテンパンにのして、遊戯王がトラウマになるくらいに潰してあげるからね♪」
最後に特大の爆弾を投下すると僕の手を引いて、歩いて行ってしまう。
◆◇◆
ーー帰宅後
「やってしまった……」
私はベットへと突っ伏し、昼に自分が行った事に対し後悔していた。幾ら何でも小学生の子にやり過ぎた。それにあの時は、自分でも自分が自分ではない誰かのように感じた。
「うぅ、絶対弟に嫌われた〜〜…………」
『そんなことないですよ、弟を助ける姉みたいな感じでかっこよかったですよ』
「ホント……?」
目元に涙を溜めながらも顔を上げ、慰めの言葉をかけてくれるデスガイドを見上げる。なぜか、デスガイドの頬が紅い……
『そうですそうです。それに……』
「それに?」
先を促すと、
『落ち込んで、涙目の優希さんも可愛いですよ♪』
頬に手を当て、身体をくねらせ照れながら言う。あまりにも予想外過ぎて、ベットから落っこち腰を強打する。
「イテテ……。だ、駄目だこいつ」
半ば諦めたように呟く
『おっと?弟さんがきたようですよ〜。私はお邪魔なので失礼しま〜す』
「うへぇい⁉︎ちょ、待て!」
ニヤニヤしながら身体が透けて見えなくなっていく。
残された私は腰の痛みからなかなか立ち上がれず、オロオロと慌てる。
「お姉ちゃん、入るね?」
ガチャリとドアが開けられ、徹が部屋へと入ってくる。そして、床で必死に立ち上がろうと私と目線が重なり、何やってんだと目が訴えてくる。
「ど、ドしタの⁉︎」
気まずくなり、話を切り出そうとするが思っていたより慌てていたため声が裏返り、変な発音となってしまう。弟の目はお前のが何やってんだよと言っている。
おうふ……絶対変な誤解をされてそうだよ
「えーと……お昼の事でさ……話があるんだ」
「な、なに、かな?」
よ、よりにもよって、そ、そのことかぁ⁉︎絶対文句言われるでしょ!だって、苛めっ子に対して喧嘩売るなら高く買ってやんよ!とか、潰す宣言してたし、私が。あぁ、どーしよ、なんて言われるんだろ
表では無理やり平静を装い、内心では台風の如く大荒れである
ビクビクとしながら、弟の次の言葉を待つ
「…………ありがとね。」
「ごめ、……え?」
思っていた言葉とは真反対のベクトルの言葉が発せられ、思わず語尾が疑問系になってしまう。
「嬉しかったんだ、姉ちゃんが僕を庇ってくれてさ……。いつもは太志君にあんな事言われても殴られるのが怖くて反論できなくて悔しかった。けど、姉ちゃんが太志くんを叱ってくれてスカッとした。」
「そ、そう…………よかった」
思考がついて行かず、一言二言しか言葉が続かない。
そうなんだ。完全に頭に血が上って、勢いで行動してたけど結果オーライだったみたいだね
内心、ホッとする
「けど……」
「けど?何?」
弟の言葉がまだ続く。正直嫌な予感しかしない
「あの時はお姉ちゃん、めっちゃ怖かった……。なんていうか、修羅?みたいだったよ」
恐怖がぶり返したのか少し顔が蒼ざめている。一方私は……
「グハッ!」
弟に修羅とか言われて精神に大ダメージ。効果は抜群だ!
「お、お姉ちゃん⁉︎ちょ、大丈夫⁉︎」
「む、無理っぽい……」
ぐったりと力尽き、立ち直れるまでしばらく時間がかかった私だった。
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