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戦国†恋姫~黒衣の人間宿神~

作者:黒鐡
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ニ十章
  春日山城潜入作戦前×作戦行動の再確認

握りしめるのは、目の前にそびえ立つ巨大な岩肌。蒼太は慣れているのかすぐに登っていく。

「蒼太さん。頑張るのですよ!」

「蒼太ー。頑張るのー!」

と応援されているので、蒼太は軽々と登って行く。蒼太が登っているのは、先に安全確認として登っているからだ。頂上にはすでに隊長がいて、ボルトを打ち込んでロープを結んでから、今俺は登っています。

「二人ともー。登ってきていいですよ」

「了解です!」

「わかったのー!」

二人はそう答える。すでにブラック・シャーク隊のとは指示を聞くようになっているので、一真隊の者たちはちゃんと聞いてくれる。するとあっという間に登ってくるのを見た俺は、やっぱこの時代のスペックは半端じゃないと思った。愛紗さんたちもだけど。他の外史では大抵が現代人よりスペックが高い。というかステータスがおかしい。

「お待たせなの!」

「次行くです、次!」

前回みっちりと訓練した綾那さんはともかく、ほとんど訓練していない鞠さんがまさか登れるとは。まあ道具の扱いや登り方の基本は教えたのですが。まあそう愚痴っても仕方がないので上に進みましょうか。大地と海斗はすでに上にいて、隊長と一緒にいる。今回は一真隊だけではなく黒鮫隊も出ることになったからである。といっても少数部隊ですけど。桜花、結衣、沙紀も上にいます。

「では次、行きますね」

まあこういう作戦を決めたのは隊長が言うには今日の朝へと遡ります。

「まったく。雫さんの仰る通りでしたわね。あの越後の虎猫、またなんという面倒事を・・・・」

「春日山城の城門に忍び込んで開けるだけなんて、簡単な任務ではないか」

空たちを美空のもとに送り届けてから数日後。俺達は疲れは癒えているが美空たちは癒えていない様子だった。再び春日山城へと軍を進めていた。

「またハニーはそんな簡単に言いますわね」

「でも一真、何度も城内に忍び込んでは頸を取ったり門を開けたりしているから、きっと大丈夫なの。ねー!」

「ねー!」

「ねーではありません・・・・」

「まあ冗談ではあるが、鞠が言ったことはホントだぞ?それくらいで怒らないでほしいな」

「怒りたくもなります・・・・。が、鞠さんの言う通り事実ですからね」

「なんだよ?詩乃はいつものあれ、やんねーのか?ほら、怒っているのではありません、呆れているだけですぅ~、とか」

「そんな子供のようなこと、した覚えもございませんが?」

「・・・・ほお」

「ふむふむ」

「んもー!お頭、詩乃ちゃんだけずるいですー!」

「何がずるいんだが。一々言葉にしなくても分かるだろうに。そうやって信頼を取ったのだからな」

「余も妾ではあるが、羨ましいのぅ」

とまあこんな感じで話しているが、俺の通信機から連絡が入った。すでに崖に登る準備は出来たと、そして今回のメンバーもすでに配置済み。あとは俺達が来るのを待つのみだと。

「二度も同じやり方で侵入を許すほど、向こうも甘いわけではないだろうと・・・・」

「いーーーーいーーーーーなーーーーー!」

「うぅぅ・・・・」

「さっき連絡が入った。黒鮫隊の者たちの配置は完了したとのこと。いつでも登れるとな、あとは城門を開けるだけだから俺達では簡単な任務なのだから、諸君も奮闘いたせ」

「はい!」

「・・・・・・」

返事がない。ただの屍、いやシカトのようなのでハリセンを準備。

「おい。返事をしろ」

「・・・・・・・」

「・・・・・・・」

俺はため息を出しながら、空間に手を突っ込んでシカトした奴をハリセンで叩いた。後ろからな。

『パシィィィィイン!パシィィィィイン!パシィィィィイン!』

「主様を無視するからこうなるのだ。戦が終わったら、主様を囲んで酒池肉林ぞ!」

「うぅぅぅ・・・・・お、おーっ!」

「酒池は結構ですけれど、肉林は大歓迎ですわ!」

「うぅぅぅ・・・・。お頭のそれは痛い。でも頑張ろーっ!」

一方後ろにいる長尾勢はというと。

「何やら一真隊の方で笑いが起きておりますね」

「一真さんの例の音が聞こえた」

「あそこはいつもあんな感じっすねー」

「そうね。戦の前なのに、どうしてあんなに気楽なのだか・・・・」

「・・・・だからでしょ」

「だから、ですか?」

「あいつの周りには常に誰かが居て、笑いがある。・・・・それはきっと、そういうことなんでしょ」

「はぁ・・・・?」

「分からなければいいわ。・・・・さぁ、一真隊だけに功をあげさせるわけにはいかないわよ。これは本来、越後の問題なんだから」

「そうっす!柘榴たちが気張らないと、長尾衆の名折れっす!気張るっすー!」

「柘榴に任せた」

「任せるっす!手柄は全部柘榴のものっす!」

「任せるじゃないでしょ。松葉ちゃんもちゃんとやりなさい」

「私は御大将の護衛が仕事」

「それはいいから、あんたも手柄立ててらっしゃい」

「・・・・御大将が言うなら」

「柘榴が松葉のぶんまで手柄を上げるから大丈夫っす!秋子さんにも譲らないっすよ!この柿崎景家の独壇場っす!」

「はいはい。だったら後詰めは任せておきなさい。そのぶん、柘榴ちゃんは先鋒よろしくね」

「了解っす!あ、でも御大将はどうするっす?」

「私?決まってるじゃない」

「三昧耶曼荼羅?」

「だーめーでーす!!」

「いいじゃない。最後なんだから、景気よく行きましょうよ」

「景気よくありません!それに三昧耶曼荼羅は乱用すると仏罰が下るっておっしゃっていたじゃありませんか・・・・」

「誰が?」

「美空様がですー!」

「・・・・そうだっけ?」

と言ってたら、美空の後ろから空間が歪みハリセンが出てきて勢いよく叩いた。

『パシィィィィィイン!』

「いったぁぁぁぁい!誰よ、後ろから叩いたのは!って腕が浮かんでいる!?」

その音で柘榴たちは浮かんでいる腕を見た。ハリセンだけで俺だとわかったらしい。

「美空。今のお前に三昧耶曼荼羅を使おうとしても無駄だ。俺がちゃんと見ているから使おうとすると、仏罰じゃなく神罰が下ると思え。それに使おうとしても護法五神を出せないようにしといたから、それなしで戦うんだな。それでは諸君、ちゃんと監視しておいてくれよ?」

と言ったらハリセンと腕は空間から戻っていき、何もない状態になった。

「そういうわけですので使うのはおやめくださいね。美空様」

「まだ頭がじーんとするわ。これは本当に使えないようね。というか前に一真隊がいるのに、どうして聞こえたのかしら?」

「おそらくですけど、一真さんの船から監視をしているのでは?」

「まあいいわ。先陣きって入城するわ。負けないわよ、柘榴」

「望むところっす!」

一方一真隊はというと、ちょうど俺が腕を戻したときだった。

「やっぱり三昧耶曼荼羅を使おうとしたらしい。はたいて正解だったな」

「やれやれ。主様の勘はよく当たるから怖いの」

「まあ、いい音がなったのは間違いない」

楽しそうな会話だったけど、最後はハリセンの音だったが。

「一真様。そろそろ分かれ道が見えて参りました」

「よし。最後にもう一度作戦を確認する」

俺の言葉でハリセンで叩かれた者も表情を向き直る。空気が変わったのはいいことだ。まだ頭に手を置いていたが。

「今回の俺達の任務は、春日山の城門を開けるだけという何とも簡単な任務だ。正面の大手門と裏の千貫門を開けたあと、長尾衆が入城する予定になっている」

詳細な兵の割り振りは美空もいつもみたいに考えてないようだが、大手門は柘榴か美空、千貫門は松葉か秋子だろう。

「稲葉山城と同じですね。久しぶりに腕が鳴ります!」

「あのとき、ひよは怖がっていただけでしょ」

「そ、そんなことないもんねー!」

「流石に昨日の今日です。春日山も警戒を強めているのは間違いありません」

「ですわね・・・・」

「以前侵入したところはそうであるが、俺達はさらにその上を行くことになる」

「一真様。先行の小波さんからの連絡です。潜入予定の毘沙門堂裏に到着。それと同時に黒鮫隊の配置も確認、敵方の警戒は予想通り、それほどでもないとのこと」

「ほらな」

前に侵入した直江屋敷裏に吊り下げたロープはすでに回収済み。崖の上の警戒は少し増えていたが、予想通りの配置のようだ。人手不足かやる気のなさだろう。きっと春日山城の奴らはこう思っているはず。「こんな所から何度も登り降りするわけがない」という考えだが、それは甘い考えだ。

「ただし、崖は前回以上の峻嶮な岩壁。先遣隊として麓まで同行した綾那さん、歌夜さんのお二人も、間違いなく前よりも厳しいとのこと。黒鮫隊の者たちは慣れ慣れしく登っていたと」

「ほらな」

それも予想通りなんだな。トレミーからヴェーダに送っての計算をしてもらい、どこを登るかも計算済み。綾那さえ直江屋敷裏より厳しいって見るより岩壁なら、向こうのはこう思うだろう。「ここはいくらなんでも無理だろう!」とな。こちらはその裏を突くわけだ。

「だ、大丈夫ですの?」

「心配はない。先遣隊の俺達の者も言っていたが、簡単だそうだ。相手の虚を突くのは兵法の基本だろ?」

「それは間違っていませんが・・・・」

「とりあえず相手は五千だろうが、黒鮫隊の前にいたとしても敵わないほどの戦力を持っている。春日山城なんて簡単に落城させたいがな」

「大手を振って正面からぶつかりたいものですなぁ」

裏からの奇襲もちゃんとした任務だ。忍んでいくのもな。

「またワシらの出番は後回しか。まあ作戦ではそうなのだからしょうがない。ワシらが先鋒で戦うのは鬼たちとだ。温存はしておくのも手だな」

「全くですわ。私もこの将才を、いつ天下に示すことができるのでしょう」

「今回は一真隊も、春日山の城攻め部隊に入れるという話ではある」

「先鋒でなきゃ意味ねえだろ」

「その通りですわ!」

「おいガキども!一真の策に文句を言うのであれば、ワシが許さんぞ。ワシだって我慢しているんだから、ガキどもも我慢の一つはできるだろうが!」

と桐琴の説教一つで何とかなったけど。今回の戦は長尾衆がメインだ。サブならともかく、先鋒で長尾衆より目立ったら後で何か言われるんだからな。

「そうです。今までは長尾衆に貸しを作るのが重要でしたが、今回肝要なのはそこではなく、春日山を落とすこと」

「はい。この戦の成功そのものが、難局にある鬼との戦いと、後の日の本の運命に影響を及ぼす、回天の一手」

「この戦いにて、長尾衆が一真様のお味方となるかどうか。・・・・それこそが今後の大局に影響を及ぼすこととなるでしょう」

これを言ったのは二回目だったような気がするが、まあいい。作戦は必ず成功させるのが俺達だ。春日山を取り戻すまでの支払いはいつになるかは分からない。そう言われたら、手伝わないわけにもいかない。

「どうあれ、城門を開けなければなりません。・・・・一真様」

「なんだ」

「これは危険な任務です。ですが、一真様は簡単だと言いました。なので必ず成し遂げてくださいませ」

「任せろよ。俺の未来の嫁さん」

俺はそう言い、詩乃の頭を手に置いて撫でる。

「ではこの任務の重要性を再確認したわけだ。潜入隊も行くとしよう」

今回の潜入メンバーは、前回のと・・・・。

「鞠もいいんだな?」

鞠を加えた七人だ。黒鮫隊も入れると13人くらいだけど。

「もちろんなの。鞠がちゃんと、一真の背中を守るの!」

「それもいいが、城を取り戻す時の勉強もするんだろ?」

「えへへ・・・・それもなの」

潜入作戦自体は簡単だし、前の観音寺は降下作戦で降りたけど今回は下から潜入だ。

「ひよたちもいいんだな?」

「はいっ!いつでも登れます」

今回も先遣隊として黒鮫隊のIS部隊が、登る前のロープとかをもう仕込んである。見つからないようにしてあるけど。今回は一真隊もある程度の手勢が必要とのことで、身軽なメンバーを30人ほど選抜している。

「それと後詰めは・・・・」

「・・・・・・」

俺がちらりと目でをやると、烏は頼もしく応えてくれた。

「うむ。頼むぞ、烏、雀」

八咫烏隊は春日山の裏手が見える場所から、潜入部隊の支援に回る事になっている。普通の鉄砲ではダメだが、八咫烏隊の腕前なら不可能ではない。と、烏は言っている。

「任せて下さい!雀は狙撃は苦手だけど、お姉ちゃん達なら崖の上に来た兵士の五人や十人や百人や千人・・・・」

「・・・・・・」

今回は否定しないで、親指を立てているけど。

「千人もきたら大騒ぎだが、こちらにも銃の腕前は持っている。心配はないが頼んだぞ」

一真隊だけだったら、心強いけど。三十人の手練れと合せて、何十倍もの働きをしてくれるだろうな。

「で、余りは見物か」

「拗ねない。本隊は長尾衆の支援という大事な任務がある」

「それは分かっていますけれど、今回はあちらを立てねばなりませんし、いつも以上に裏方ですもの。退屈ですわ」

「そうですか?」

「おや、詩乃がそのような事を言うのは珍しい」

「そうでしょうか?良くお考え下さい。門の脇で待機するという事はそのぶん一真様が近付いて来るという事ですよ・・・・?」

「・・・・・む」

「わ、私たちに会いに?」

「まあそういう考え方もありますなぁ」

「そういうことだ」

「・・・・ふむ。そう考えるとやる気が出てきたの」

「ええ。ハニーが会いに来て下さるのなら、無様な働きなど見せるわけには参りませんわ!」

「働き過ぎもダメだからな。長尾衆が主に目立たなきゃいけないんだから」

「分かっておりますわ!」

「任せておけ!」

二人ともテンションが上がったな。別の意味で不安になるが、やる気全開でお家流出さなきゃいいんだが。

「・・・・十分注意しておきます」

「頼むよ二人とも。あと幽も」

「やれやれ。裏方のさらに裏方とは、損な役回りですなぁ」

「頼りにしているよ。さてと行こうか・・・・」

と行こうとしたら桐琴に止められた。今回は小夜叉も連れて行けと。桐琴は森衆を引き連れて城攻めにはあまりやらんと言っていた。今回は気合を入れるほどの城攻めではないからだと。それに織田のならともかく長尾がやるから、味方まで殺したら長尾に文句が言われるからだと。それにガキ曰く体がなまっているらしいから、崖登りして裏方の仕事もしてみろと言ったそうだ。なので、小夜叉も連れて行くことになった。 
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