戦国†恋姫~黒衣の人間宿神~
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十九章
実地訓練
「ご苦労。登り加減はどうだ?」
「楽勝です。既に目的地にボルトを埋めてきて、ロープを垂らしてたときだったので」
先行しているひよと小波がいるはずだが、ひよの声が聞こえたので行ってみた。山の麓にある洞窟から身を乗り出して、ひよが元気に手を振っている。
「ほう。こんなところに洞窟があったのか」
「誰も使って様子がなかったので、ここにいれば良いかなって。食料なんかも運び込んでおきました!」
「ご苦労。小波は?」
「周囲の見回りに出ています」
「ふむ。まあ人の目で判断した方がいいけどな。俺達の上には船がいるからな、何か怪しいのがあればすぐ連絡してくるし」
船には地上の監視をせよと言ってあるし、まあ大丈夫だろう。普通なら通信機器を使っていればバレるが、ここは戦国時代で、通信機や電話などがない時代だ。気配さえ察知されなければ大丈夫だろう。
「けど一真様。本当にこんな所、登るんですか?」
歌夜は最初から自信がなかったけど、実際の目で見た崖を見た感想がこれだった。まあ初めてだからそうとも言うがこちらは準備完了で、いつでも登れるからな。ロープも人数分あるし。俺は今回は飛ぶ方だけど、頂上まで行って様子見と言う感じだ。一人は指導で登るけど。あとの二人は下で待機だ。
「綾那はどうだ?」
「む、むむむー」
「何がむむむだ。・・・・さっきまでの余裕はどうした?」
「思った以上に真っ直ぐなのです・・・・」
まあ崖って言っても、岩が剥きだしの崖ではない。重さで圧縮された固まった土の壁があって、草木が生えているという感じの崖だ。軽く蹴ってもしっかりとした感じだし、とっかかりもあるから何とかなるだろうし。それに土の壁だから、穴を開ければ踏み台になれそうだ。
「無理そうなら、侵入は黒鮫隊と小波でやろうか?」
「む、む、無理なんて言葉は綾那の懐紙には書かれていないのです!」
まるで梅みたいなことだなぁ。
「今日からはここで訓練なのですよね?ならその間に何とかするのです!綾那はやれば出来る子なのです!」
「その調子だ。ただし俺たちの指示に従って訓練を受けろ。誤って落ちたら死ぬからな」
「分かっているです!」
そんな話をしていると、やがて洞窟の入口に見慣れた姿が戻ってきた。
「ただいま戻りました。ご主人様、もうお着きだったのですね」
「ああ、ちょうどよかった。これから今後の予定を決めようと思う」
「周りの様子はどうでしたか?」
「はい。流石にここから侵入する者がいるとは思ってもいないでしょう。監視はさして厳しいものではありませんでした」
「敵の目は十分欺けているという事だな」
作戦の前提としては十分だ。
「ならば、小波は引き続き、周囲と城内の調査をお願いしたい。侵入経路、脱出経路、人の配置、巡回の行動の繰り返しというより型か。それを探ってきて欲しい」
「人の動きの流れですね。了解しました」
「残った者は蒼太・大地・海斗の指導のもと、崖登りの練習を。優奈・真央・奈々はISを展開して周囲の警戒を頼む」
『了解!』
「分かったです!」
こうして蒼太・大地・海斗のもとで、崖登りの本格的な指導が始まった。まあ、ロープはすでに吊るしてあるからあとは登れればいいこと。夜になってからも指導が続いたが、小波が戻ってきた。
「小波、お帰り。・・・・随分と遅かったがどうかしたか?」
「はっ、それが少々面倒な事に・・・・」
話を聞くと城内の警戒が厳しくなっているそうだ。ま、当たり前だろうな。
「どうやら先日のころ殿の侵入騒ぎから、警備を増やしたようで・・・・」
「あー・・・・」
「まあ、普通増やしますよね」
「人質の場所は変わっていないか?」
「目標の場所は変わりありませんでした。・・・・ここの真上の直江屋敷となります」
「接触はしたですか?」
「いえ。ひとまず姿を確認した後、城内の警戒網の調査を行っておりました」
「ふむ。さすがだな、小波」
「あ、はいっ!」
「では、これからどうしますか?一真様」
「予定を変える気はない。今の所バレていないようだし、美空と歩調を合わせないとこの作戦の効力は薄くなる。こいつらの指導のおかげで登れるようだし、周囲の警戒もしているが、今の所異常はなし。今後新たな動きがあるかもしれないから、小波は引き続き城内を調べてこい」
「了解しました」
「なら、その間にこちらのもですよね。ところで、黒鮫隊の者たちは?」
「今食事と風呂に向かわせた。なんなら、風呂入る?」
と言ったら全員入る!と言ってきたので、まずは俺以外の者たちを船の風呂場前に行かせた。そこに案内係役の沙紀がいるのでな。俺はその間にノーパソで報告書を見ていたけど。あと皆は食事もしてくれば?といったので風呂の後に食事もとな。小波もだけどな。小波の代わりに小型偵察機でしてると言ってあるから問題はない。食事が終わったと聞いた俺は再び空間を歪ませて戻ってきた諸君。偵察機を帰還させてから小波は引き続き調べにいった。で、今度は俺の番なので、風呂に入ってから食ってから戻ってきたけど。そのときは指導員と周囲の警戒する役の者たちと一緒にな。
一方前線基地である神社ではというと。
「・・・・そうか、そちらは順調か。こちらもつつがなく進んでおる。・・・・ではな」
「小波殿ですか?」
「主様たちは万事、順調に進めておるそうだ」
「左様ですか・・・・」
「・・・・・・うむ」
「・・・・双葉様は聡いお方です。ご心配なさらずとも、あちらも万事、つつがなく進んでおりますよ。むしろ、公方様よりつつがなく進めていらっしゃるのではないかと」
「・・・・であれば良いのだがな」
「ご心配は、延暦寺の生臭どもですか?」
「高野はまだ何とかなろうがな。・・・・双葉はともかく久遠もおるし、奴らと反りが合わねばそれこそ焼き討ちにでもしかねん」
「流石にそこまでは・・・・」
「主様のおかげでなりを潜めておるが、あれも根元は人修羅と同じよ。魔王とでも呼ぶべき気性を備えておる」
「はてさて。久遠殿が魔王なら、公方様は・・・・」
「魔王でも人修羅でも構わん。今の余は主様のものじゃ」
「その主様も、今は山の向こうですか。それも神仏の類でありますからな」
「早う雑多なことを済ませて、主様と茶枳尼天の如き日々を送りたいものよ」
「それこそ夜叉ではありませぬか。まあ、本物の夜叉を見た事はありますがな。八大夜叉将軍。一真様は神でもあり閻魔の化身でもあるお方ですからな」
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