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姉を慕い

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第五章


第五章

「それはな」
「是非来てもらって」
 また話す二人だった。そうしてであった。
 神名は正大の家に来た。彼の両親は彼女を笑顔で迎えた。そしてその顔を見てだ。
「これは」
「そうね」
「そっくりだな」
「だからなのね」
 また顔を見合わせそのうえで話し合うのだった。
「だからか、あいつが自分から声をかけて」
「そうして交際してるのね」
 二人は全てがわかった。彼女の顔を見てだ。
 そのうえで二人で頷き合ってだ。また話すのだった。
「これならな」
「きっとね」
「上手くいく」
「そうね」
 そうしてであった。彼女を家に招き入れた。正大もいる。まずは一家揃って母親が作った御馳走を食べた。そのうえで団欒の話となった。
「そうですか、本屋で働いているのですか」
「あの本屋ですか」
「はい、あのお店で、です」
 笑顔で話す彼女だった。
「働かせてもらってます」
「それで正大と知り合ったと」
「そういう縁ですか」
「そうです。正大さんにはとてもよくしてもらっています」
 今度は神名から話した。
「それで今も」
「わかりました。それで」
「あの場所に案内させてもらいますね」
 ここで、だった。両親は彼女にこう言ってきたのである。
「それで宜しいですね」
「あそこで」
「あそこって?」
 しかしであった。正大はだ。両親の言葉の意味がわからず目をしばたかせた。
「何処のことなんだい?」
「御前も知ってる場所だよ」
「そこよ」
 両親は息子の問いにはこう返した。
「そこに今から行くぞ」
「いいわね」
「何処なんだろう」
 正大にはどうしてもわからないことだった。それで首を捻ってしまっていた。 
 だが二人は神名、そして彼をその場所に案内した。そこはだ。
 仏壇だった。家の仏壇の前に連れて来たのである。そしてそこには一枚の写真が飾ってあった。そこにいたのはというとだった。
 神名がいた。紛れもなくだ。そこに笑顔でいたのである。 
 そしてそれを見た彼女はだ。真剣な顔で頷いた。無言でだ。
「えっ、まさか」
「やっぱり気付いてなかったな」
「そうだったのね」
 両親は驚いている我が子に対して言った。
「毎日手を合わせていても」
「肝心なことはね」
「何で。神名さんと姉さんが」
 まさにであった。一緒の顔だったのだ。二人の顔は誰がどう見ても同じ顔であった。仏壇とその前にそれぞれいたのである。
 彼は今やっと気付いた。そうしてだった。
「僕はまさか」
「そうだよ、無意識のうちにな」
「あんたは選んでたのよ」
 両親はまた我が子に告げる。
「本当に気付いてなかったんだな」
「全くだったのね」
「まさか。神名さんは」
 彼女は気付いていた。そうなのだった。
「そういうことだったんだ」
「やっと気付いたのか」
「全く」
 両親はそんな我が子に今度は呆れた。
 
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