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日向の兎

作者:アルビス
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1部
  5話

 
前書き
10月7日、日間ランキング3位……予想外過ぎて思わずスマホを落としてしまいました(笑)
更新は不定期もいいところですが、皆様本当にありがとうございます!! 

 
ある日の事だ、アカデミー内でヒナタを見つけ声をかけようと近づいて見ると、彼女は誰かを見ているようだ。ふむ、心拍数やらから察するに恋という奴か?
むう……私も姉として妹のそういう感情は喜ぶべき事なんだが、ヒジリという一個人としては嫉妬のような感情を抱かずにはいられない。とはいえ、その相手がロクでもない男であれば躊躇いなく男を解体するんだがな。
というわけで、ヒナタの視線を追ってみるとそこには手裏剣を投げている見覚えのある少年がいた。
「ナルトか……悪くはないか」
「ね、姉さん!?」
「それほど深い仲ではないが中々見所のある男だ。なに、私は応援するよヒナタ」
「お、応援って何を!?」
「私に隠し事は出来ない、それはヒナタがよく分かってるんじゃないか?」
「う、うう……」
「なに、恥じる事はない。が、見守るだけでいいというのは良くないな」
顔を赤らめて俯くヒナタの頭を撫でてから、ナルトの方へ近づく。すると彼は気配を察したらしく、手裏剣を投げるのをやめて振り向いた。
「ウサギのねーちゃん!?」
私だとは分からなかったようだが……ヒナタといいナルトといい何故私を見ると驚くのだ?
「ナルト、退屈そうだな。どれ、また遊んでやろうか?」
「よし!!俺ってば今日はねーちゃんに勝てる気がするってばよ!!」
「それは結構。ただし、今回は条件がある」
「条件?」
「ああ、ヒナタ!!」
先程から柱に隠れていたヒナタを呼ぶと、彼女は少しの間躊躇う素振りを見せたが、しばらくしてからおずおずと柱の影から姿を見せた。
「こ、こんにちは……」
「私の愛すべき妹のヒナタと組んで貰う、それが条件だ」
「2対1?ちょっとねーちゃんが不利過ぎるってばよ」
ナルトは少なからず不満げな表情でこちらを見る。ふむ、どうにも侮られていると思っているようだな。
とはいえ、本気を出す訳にも白眼も使う訳にもいかんしな。前者は人殺し以外出来なくなり、後者は体術に関しては動きが完璧に読める為に負けようがなくなる。
さて、どうしたものか……ああ、そうだこれがあった。
「では忍術を使わせてもらおう、それでどうだ?」
「姉さん、忍術使えたんですか?」
「使う必要があまりないが、使えない訳じゃない。ナルトもそれでいいな?」
「ね、ねーちゃん、一応確認するけどその忍術ってば、前のあれみたいなんじゃないよな?」
前のあれ……ああ、木を破裂させたあれか。
「当然だ、そもそもあれは体術に近いものだからな。それでは二人で簡単に作戦会議をするといい、初対面同士で連携も何もないだろう」
私は二人にそう言ってから、ヒナタの耳元で、
「頑張りたまえ、私の妹よ」
と呟き、私は忍術の為の準備をする為に少し離れた場所にある水飲み場へ向かう。


如何せん私は忍術が下手なので、少々の下準備が無ければ私の望む効果を発揮できないのだ。
体術は真似る事は出来るが、忍術と幻術はこの眼で印を真似るのが手一杯だ。仮に発動は出来たとしてもどの程度のチャクラが必要で、どの辺りに力を込めればいいのかが分からないので性能が残念な事になる。
というわけで、私は今現在水道でペットボトルに水を汲んでいる訳だ。忍術も真っ当に使えれば柔拳と相性は良いのでどうにかしたいものだな……
む?ああ、これで充分だな。
体術といい忍術といい、普通の方法で学びたいものだ。体術は眼で学び、忍術はほぼ我流のものでしかない。
……いや、人との関わりが限られていたので仕方ないとは言え我ながら酷いものだ。いい加減、真っ当な師に出会ってご教授願いたいな。体術重視で忍術も扱える教員はいないものか……
書物頼りの修行も限度がある。一応は色々と調べ、私の得意な忍術は水遁だというのは分かりそれを重点的に鍛えているのだが、具体的な鍛錬方法も何も分からんので池の水などを操るなどで経験を積むしかない。
そもそも日向の蔵書には忍術の指南書が殆どないのだ。柔拳や白眼の書物が多いのは仕方がないものの、もう少し忍術方面にも書物を残して置いて欲しかった。所詮小娘の我儘でしかないのだが、私も年相応の我儘くらい言うさ。
さて、そろそろいいだろう。二人の話も終わっただろうし、これ以上考えていては愚痴っぽくなってかなわん。





「さて、準備はできているな?」
「もちろんだってばよ」
「はい」
「よろしい、いつも通りこの面を取れれば君達の勝ち、君達が動けなくなれば私の勝ちだ。では、かかって来たまえ」
私の言葉と同時にナルトが煙玉を地面に叩きつけ、ヒナタが距離を詰めて柔拳で挑んできた。
ふむ、私が眼を使わないという事でこういう手段できたか。ヒナタは白眼で私のチャクラを見て煙の中でも私を補足し、私は煙で視界の狭い中で柔拳をかわさなければならない。
が、おそらくこれは陽動だ。いくら視界が悪くともヒナタの扱う柔拳は既に覚え尽くしているので、僅かでも動きが見えれば対応できる。言ってしまえば、ヒナタの動きの型は完全に私は把握済みという事だ。
それに関してはヒナタも知っているおり、つまりはナルトも先程の作戦会議でそれは把握しているだろう。では、何をするのか?簡単だ、ヒナタで私の動きを止めてナルトが何かしらの手段で私の面を狙うのだろう。
とはいえ、その手段は流石に把握できない。さて、こうなると私も忍術を使う必要があるな。
ヒナタの掌底を受け流し、彼女の体を傷付けないように注意を払いつつ押して距離をとる。そして、ペットボトルの中の水を周囲にばら撒き印を結ぶ。
「水遁 弁財天(べんざいてん)の舞」
周囲に撒いた水が薄衣のように私の身を包み、本物の布と同じようにひらひらと舞う。そして、布は一人でに一枚の木の葉を覆い、私はそれの木の葉に打撃を放つ。
「げふぅ!?」
「な、ナルトくん!?」
木の葉は煙を放ち、いつの間にやらナルトに姿を変えた。いや、ナルトは木の葉に化けてそれを維持出来なくなったというのが正確か。
「な、なんでバレたってばよ!?」
「ああ、これさ」
そう言ってか私は水の布を持ち上げ、ナルトに見せる。
「この術は音に反応する探知用の術でな、私の周囲の異音を感じ取りそこへ伸びるようになっているのだ。
原理としては水に伝わる音の振動を……面倒になったから細かい説明は省こう。
要するにナルト、お前が変化で隠れているだろう事は想像できたのでこの術でお前の心臓の鼓動を感知し、強引に探し当てたという事だ」
「今回は上手くいくって思ったのにな……あー悔しいってばよ!!」
「ご、ごめんねナルトくん。私がもう少し姉さんを抑えられてれば……」
「ヒナタは悪くないってばよ。ただねーちゃんの術を考えなかった俺のミスだってばよ」
「ほう?ナルトが考えたのか、この作戦」
「変化は俺の考えで、煙玉を使っての足止めはヒナタの考えだってばよ」
「成る程、二人ともよく考えたな。偉いぞ、褒めてやろう。そうさな、何かしらの褒美をやるが……何がいい?」
「じゃあ、俺ってばねーちゃんの作ったラーメンが食べたいってばよ!!」
「あ、私も。姉さんの手料理は美味しいから……」
ラーメンか、随分と面倒な物を要求するな……仕方ないやってみるか。
「初めて作るので味の保証はしかねるが、それでいいなら明日辺り作ってやろう」
さて……麺はどうやって作るんだ?












 
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