貰った特典、死亡フラグ
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死亡フラグ貰いました。
2話:出逢い。そして建つのか? 違うフラグ
「やった、夕日見れた…」
森の中、俺は夕日を見れたことに対して涙を流していた。
神から貰った特典、“エクリプスウィルス”。それはもはや死亡フラグに等しく、いつ死んでもおかしくはない。“Force”の主人公もメチャクチャ苦しんでいたし、自己対滅などがあるため、森をさ迷いながらいつ死ぬかビクビクしていた。
「良かった、本当に良かった。あんな肉塊になりたくないよぅ……。誰かぁ、助けてぇ~」
もしかしたら転生してすぐに死んでいたかもしれないので――それもぐちゃぐちゃになる感じで――生に対する感謝が半端ない。
「腹が……」
しかし、空腹感がヤバイので、次はもしかしたら餓死しそうだ。一難去ってまた一難。“エクリプスウィルス”ではなく、空腹で死にそうになるとは。
森をさ迷い続けて、恐らく四時間程度。正直、もう動けなくなりそうだ。死ぬ前になにか食べておけば良かった。『今、なにが食べたいですか?』と問われれば、迷いなく『母の作ってくれる、味噌汁』と答える。死んでしまって、悲しんでいるだろうなぁ。親不孝か、俺は……。
「もう……無……」
言葉は最後まで続かなかった。地面に倒れてしまう。土の臭いが鼻につく。顔を上げる力も出ない。こういう状況になると、生前の自分がいかに恵まれていたのかがわかる。
『ドラ…………ーの生……危機』
蒼十字が何か言っているらしいが、よく聞こえない。このまま俺の人生はここで終わってしまうのだろうか?
(“エクリプスウィルス”じゃなくて空腹で死ぬのか俺は。はぁ、原作キャラには会いたかったなぁ……)
目が閉じていっているのがわかる。視界が段々と暗闇になる。まるで、死へのカウントダウンの様だ。
『周囲100m圏内にて、生命反応を確認。急速接近中』
(え?)
鮮明に聞こえた。その言葉で、腕に力が入る。暗闇が徐々に、徐々にと明るくなっていく。生への希望が芽生え始める。
「君! 大丈夫か? しっかりしろ!」
「誰か、人を呼んできてくれ! 管理局の人達も! 早く!」
(あ……助かっ)
でも、やっぱり意識はもたなかった。
「リアクト! あーはっはっは! 俺、最強!」
俺は、何でかは知らないが、空にいた。体にはゴツい鎧の様なもの。何でこんなもの着てんだ?
「この力で、俺は最強を目指すぜ!」
これがあれば、もう誰にも負けはしない。そんな風に思えた。
「まずは、何をしようかな~?」
「こらぁ! 何やってんだ!」
「へ?」
そこにいたのは、父さん? 何でここに?
「遊んでないで、早く帰ってこい! 夕飯の時間だ!」
父さんの姿はとても懐かしく思えた。ずっと一緒に過ごしていたのに。なぜだろう?
「ちょっ、痛い! 引っ張らないで!」
いつの間にか、俺の身に纏っていた鎧は、普通のさっきまで着ていた服に戻っていた。
「痛い~!」
「いっ!」
夢だったのか、目を開けた俺の前に迫り来るは、白い……液体?
バチャァッ!
「あっつぁーーーーーーーーーー!!!!!!」
何これ! 熱い! ヤバイ、ヤバイって!
「ぐおぉぉぉおおぉぉぉ!!!」
顔を押さえながら、地面を転げ回る。こんなに熱いものが顔にかかったのは人生で――生前を含めて――初めてだ。さっき新しい人生が始まって、終わりそうだったけどね。
「ほわぁ~、すいませ~ん!」
謝ってるのは、女の子。髪は長い銀髪で、背は俺より小さいと思う。じゃなくて!
「何すんだ! 火傷するところだったぞ!」
とりあえず、転げ回っている間に見つけたタオルで顔を拭いたが、まだヒリヒリする。
「ごめんなさい! ごめんなさい!」
女の子は必死に頭を下げている。そうすると、逆に俺が悪いように思えた。
「どうしたの!? マリ!」
息を上がらせて入ってきたのは、少女に似た、短髪で銀髪のこちらはお姉さん。
「お母さ~ん!」
マリとは恐らくこの女の子のことだろう。泣きながら、今入ってきた人に抱きついていった。
少女の母は――若くて姉に見える――俺の顔と濡れた服を見て、そして少女を見た後、ため息をはき、
「マリ、あなた、またこぼしちゃったのね?」
いや、こぼしたとかそういう次元ではない。ぶっかけ! ぶっかけだよ!
「あなたは大丈夫? 火傷とかしてない?」
「えっ、あ、はい。大丈夫だと思います」
不思議とさっきまでの顔がヒリヒリするのが、無くなっているような気がする。ミステリー。
「皆、ビックリしてたわよ? 森に倒れてるんだもの。元気そうで良かったわ。気絶している間に少しスープ飲ませたけど、余程お腹が空いてたのね。意識が無くても飲んでたわよ?」
「えと、はい。ありがとうございます」
どうやら、あのまま意識を失った俺を助けてくれたのはこの人たちのようだ。感謝、感激!
「それにしても、何であんな所で倒れていたの? 誰かとはぐれた?」
「えーと……」
ここは正直に言った方がいいのか。しかし転生とか言っても理解してもらえないと思う。
「それが気づいたら森の中にいて、さ迷ってたら、空腹で倒れました」
「もしかしたら、次元漂流者なのかしら。あなた名前は?」
「名前ですか?」
「そう。もしかして、覚えてない?」
これも困った。名前は生前のものを名乗ればいいのかどうか。というか俺ってこっちで名前何?いや、でも“リリカルなのは”外国人っぽい名前多いかし。だから俺は
「ダ……ダレン」
外国人っぽい名前で思い付いたのはこれしかなかった。若干考え込んでいたせいもあるだろう。これはあれだ、好きなものはスパイダーな少年の名前だ。感動したなぁ、あの小説。
「ダレンね。苗字は?」
「フ……フォスター」
これは昔、英語の授業で“外国人の名前”というのを勉強した時に出た名前だった気がする。
「よろしく、ダレン君。私の名前はサーシャ。サーシャ・カーターよ。こっちは娘のマリ」
「……よろしくお願いします」
さっきのことを気にしているのか、マリはサーシャさんの後ろに隠れている。俺も怒ったからなぁ。怖がられちゃったかな?
「大丈夫だから。もうさっきのことは気にしてないから」
「本当?」
「本当」
「本当に本当?」
「本当に本当」
「本当に本当に本当?」
イラっとしてきた。しかし、ここで怒っていてはまた怖がらせてしまう。
「本当に本当に本当。大丈夫、オーケー、グッド」
「よかった~」
やっと笑ってくれた。そんなに怖かったか? 俺は。
「サーシャさん、それでここは何処なんですか?」
「ここは第14無人世界の開墾地よ。私達は開拓者。ダレン君はどこから来たの?」
「それは……」
確か地球は第97管理外世界だっけ? でも俺はこの世界の地球に住んでなかったし...
「やっぱり、覚えてない?」
「はい、気づいたらここにいたので」
覚えてないんということにしておこう。どの世界に存在していたのかわからないしね。
「そう。ちょっと待ってて。今、管理局の人達を呼んでくるから」
「あ、はい」
サーシャさんは外へと出ていく。管理局。確か次元世界を管理する、警察と裁判所が一緒になった様な組織だっけか。
「あのぅ」
「なに? えっと、なんて呼べばいいかな?」
「マリでいい。わたしもダレンって呼ぶから」
「わかった、マリ。どうした?」
「さっきはごめんね。わたしドジだから、ああいうこと結構あるんだ」
あはは、と笑っている。やっぱり気にしているのだろう。
「本当に大丈夫だって。見てみろよ、俺の顔。火傷なんてしてないだろ?」
「ほんとだ~、不思議。あんなにかかっちゃったのに」
そう言いマリは、俺の顔をペタペタさわってくる。少しくすぐったい。そして恥ずかしい。
「ふふ、よかった~」
「ダレン君、呼んでき……あら、マリったらもうダレン君と仲良しね」
部屋の入り口のところで微笑むサーシャさん。言われて気づいたのだろう。ものすごい速さで離れるマリ。その時に少し爪が引っかかって痛かった。
「ち、ち、ち違うよ! 火傷! 火傷がないか確かめてたの! ね、ダレン!」
「あ、うん。そうだな、そうそう!」
「マリもやっぱり年頃の女の子ね。私の若い頃を思い出すわ~」
マリ、俺の隣でずっと慌てていないでくれ。俺だって恥ずかしかった。
管理局の人達に聞かれた話はサーシャさんから聞かれたことと一緒だったので同じように答えておいた。後日、俺を管理局の方へ連れていくらしい。身元確認のために。
その後はもう夜だったので、サーシャさんお手製のシチューを食べた。ちなみに、マリが俺にぶっかけたのもこれだったらしい。シチューってどの世界にもあるんだな。このことに感動。
あと、マリの父親にも会った。すごく豪快な人だった。その時に「マリの婿になって、一緒に開墾するか!」と言っていたが、一応断っておいた。マリが物凄く顔を赤くして、あたふたしていたのは言うまでもないだろう。
そして、就寝時間。
「問おう、何故マリの部屋なのか」
俺がいるのはマリの部屋。サーシャさんに「部屋が無いから、マリの部屋ね」と言われて、半ば叩き込まれた。その時に、マリの着替えを目撃してしまったのは、完全なる事故である。
というか、知り合って間も無さすぎる男を娘の部屋に寝かせていいんですか? 間違いがあってからでは遅いんですよ! 起こせるわけないけどな!
「どうせ俺は、へたれだよ!」
「大丈夫、ダレン?」
「全然、全く大丈夫じゃない。それにいいのかよ、マリは?」
「大丈夫……かな。あ、ダレンは今日、ベッドで寝てね~」
「え、なんで?」
ここは、マリの部屋だしベッドで寝るのは普通マリじゃね? 俺は布団をしいて。
「なんでって、ダレン今日倒れてたんだから、具合悪くしたらいけないよ~」
「いや、ただの空腹で倒れただけなんだけど……」
「それでもです! ダレン少し、フラフラしてるでしょ? 大丈夫、今夜は見ててあげるから、安心して寝てね~。これでも、看護師さんになりたかった時もあったんだから~」
まぁ、体力もあんまり戻ってなかったから、フラフラしてたんだけど。こいつ、よく見てるな。この気遣いは、これはこれで、嬉しかったりする。
「ジ~~~~~」
「あの、マリ。擬音で表現しながら見つめるのやめてくれないかな? すごい、恥ずかしい……」
マリはベッドで寝ている俺の顔を、ニコニコしながら見つめていた。これじゃあ、寝れんよ。
「だ~め~。こうしてた方がいいの。お母さんが言ってた。よく、お父さんにしてたんだって~」
「そうですか……」
相変わらず、マリはニコニコしながら俺を見つめていた。でも、寝ていると不思議なもので段々と眠くなってきた。そうして、俺はマリの視線を受けながら眠りについた。
「(あらあら、マリったら。良いわね~、若かった頃を思い出すわ~。あの頃はよくアルさんに添い寝をね~)」
「(若い頃……、青春って素晴らしいなぁ!)」
後書き
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