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ハイスクールGC×MB

作者:龍牙
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序章

「焼き尽くせ、炎の魔狼! 『フレイム・フェンリル』、ガイスト・オン!」

 彼、『五峰 四季(いつみね しき)』は炎属性『フレイム・フェンリル』のガイトス・ギアをまとう。

「フレイム・フェンリル、装着完了」

 日本神話体系の組織『高天原』の『駒王支部』の一員としてはぐれ悪魔の討伐の任を受け、こうしてはぐれ悪魔『バイザー』と対峙している訳だが、一応は支部とは言えそこのトップなのに前線に出なきゃならない人手の無さに泣きたくなる思いだ。
 まあ、数人しか居ない組織ではトップと言うのも下っ端も同然と言えるだろうが……

(ガイスト・ギアを作ったのはオレなんだけどな……)

 正しく言えば基礎理論。その初期ロットの五機のうちの一つがフレイム・フェンリルだ。

 現在、この世界には人間や他の種族以外にも『ガイスト』と呼ばれる者達が存在している。
 『ガイスト災害』と呼称されるガイストの出現は、天使、悪魔、堕天使の三大勢力や他の神話体系のトップの実力者でも一時的な休眠にしか追い込めないため、ガイストは危険視されていながらも、どの勢力も対応が遅れていた。

 だが、四季が開発したガイスト・ギアのシステムによってそれらの脅威は軽減される事になった。……休眠状態のガイスト、『ガイメタル』の精製による再生の阻止である。
 同時に精製されたガイメタルは対ガイスト用の装備であるガイスト・ギアを装着するためのキーアイテムともなる。……まあ、安定こそしないがガイスト・ギアの装着には未精製の物でも可能だ……命さえ考慮しなければ。

(まあ、速めにお仕事を終らせますか)

 炎の魔狼、神殺しの狼の名を持つガイスト『フレイム・フェンリル』のガイスト・ギアを纏った四季はゆっくりとバイザーを見据える。

「覚悟完了! 行くぜ!」

 己を鼓舞するためにそう叫ぶ。

「おりゃぁぁぁぁあ!!!」

 床が踏み砕けるほどの踏み込みを持ってバイザーへと跳躍、そのまま獣の様な下半身を殴りつける。

「ガァァァァァァァァァア!!!」

 そのまま殴り飛ばされバウンドしながら壁へと激突する。もう少し近場に殴り飛ばす心算だったが、予想以上に強く殴り飛ばしてしまった。

「お、おのれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇえ!!! 人間風情がぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!」

「分かり易い台詞で向かってきたな……好都合だけど」

 四季が危惧していたのは距離を取らせてしまった事による逃走の可能性だ。目の前の敵を倒す方法等幾らでも思いつける。

(ったく、此処最近ガイストが出なくて平和だったから、放課後にあいつを誘って遊びに行こうと思ったのに……)

 要するに、意中の相手を誘って遊びに行こうと言う所である。重ねて言うと四季達の組織の目的の一つには、本来の役割であるガイストの対応以外にも、こうしてはぐれ悪魔退治も有ったりする。最近このあたりではぐれ悪魔の痕跡が出て来たために、こうして役目が四季に廻ってきたわけだが……

「へっ、人間舐めるな!」

 腕を掲げて巨大な火球を生み出す。バイザー程度の相手ならば並の攻撃の連発でも倒せるだろうが、態々無意味に戦闘を長引かせる趣味は四季には無い。多少オーバーキルだろうが、好機さえ有れば確実に仕留められる技で倒すだけだ。

「はぐれ悪魔バイザー! 貴方を滅しに……」

「超爆!!! 烈火、爆裂弾!!!」

「ああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!」

 四季の放った火球に飲み込まれていくバイザーを尻目に周囲に気を配る。バイザーの影に隠れていた他の敵は居ない。うん、敵は居ないが……なんかバイザーを吹っ飛ばした事に唖然としている紅い髪の女に率いられた集団が居ました。
 それに気付かずに必殺技を打ち込んだわけだが、取り合えず巻き込んで無くてよかったと思った。

「殲滅完了。さて、帰るか……」

 行き成り入った瞬間に消し炭に変えられたバイザーの姿に唖然としながらも、彼女達は帰ろうとする四季の姿に気を取り直す。

「ちょっと待ちなさい! 貴方は誰!? 何が目的で私の領地で好き勝手してくれているの?」

「おいおい、此処があんたの領地って言われてもな。誰がそれを認めてるんだ?」

「魔王様に決まってるでしょう!」

 問いながら魔力を練っている紅い髪の女『リアス・グレモリー』と、戦闘の構えを取る彼女の眷属達を一瞥しつつ肩をすくめながら逆にそう問い返す。

「おいおい……何時から日本は日本神話の神々から悪魔に奪われたんだよ」

 そう呟きながら改めてリアスへと視線を向け、

「まあ良いか。自己紹介させてもらおう。オレは五峰四季。この日本の神話体系たる日本神話の神々からこの地に居る、この国の民を守るように命を受けた者、高天原の所属のガイストキラッシャーだ」

 『この国の』と『日本神話』と言う点を強調してリアスへとそう告げる。言外にお前よりも自分の方に正当性が有る、と言う意思を込めての言葉だ。

「あれ、四季って確か同じクラスの……」

 そんなグレモリー眷族の中で唯一戦闘体制をとっていない彼『兵藤 一誠』がそんな事を呟く。

(あのガイスト・ギアの開発者……。確か原因不明の“消失事件”の現場でも何度も目撃されているのも彼だったわね)

 自分の領地だけでなく周囲の土地でも起こっている消失事件……隕石の落下が原因と考えられており、表向きそれを調査している日本神話側としてもそう言っているが、悪魔側の調査ではそれが隕石では無い事は明らかだ。むしろ、それを本気で信じている者は三大勢力の中には誰も居ないほど分かり易い嘘だ。

 確かに彼が日本神話側に所属しているのならばその調査の為に行動している様にも見えるが……現場での彼等の行動は明らかに調査している素振りは無く、その場から立ち去っているだけと見る者も多い。

(あの消失事件の真相に近いであろう……ガイスト災害に対応できる数少ない対抗手段。彼の価値は計り知れない……。彼を悪魔側に引き入れる事ができれば、私達の評価も……戦力も大きく跳ね上がるわ。そうすれば……お兄様も)

 己の眷属に対して不満も持っておらず……兵士(ポーン)の駒八つで転生した一誠も新たに眷族に加わった事で、今後大きく強くなれると思っていたが、それでも彼女の中に僅かに有った焦りの感情に対して、四季の持つ価値は酷く魅力的に映る。

「五峰四季くん! いえ、シキと呼ばせてもらうわ」

「勝手に呼ぶなよ」

「この町を管理している悪魔として命令するわ! 私の眷属になりなさい!」

『はぁ?』

 思わず彼女以外の全員からそんな声が零れる。丁度そんな時だった、

 突然の衝撃音が響くと共に後方に居た一誠が吹飛ばされる。それに気がつき、木場が彼を受け止め、リアス達が後方へと注意を向ける。

 そこに有るのは一つのクレーター。先程リアスが考えていた消失事件だ。

「最近噂になってる隕石か?」

「いや」

 一誠がクレーターを覗き込みながらそう呟くが、四季はガイスト・ギアを解除してクレーターへと近付いていく。

「違うな」

 ゆっくりとクレーターの中で立ち上がる人影……土煙の中で全貌を知る事の出来ないそれば、

(ったく、あいつ等が居ない時に、か。『ダークスパイダー』一体だけなのは幸いだな)

 蜘蛛を思わせるメタリックな姿をした人影はその場で跳躍し、クレーターの中から飛び出し構えをとる。

「っ!? 祐斗、小猫!」

 危険と思ったのか、リアスは素早く自分の眷属二人に指示を出す。だが、ダークスパイダーは剣を出現させたグレモリー眷属の騎士『木場 祐斗』の剣と戦車『搭城 小猫』の拳を避け、

「ガハァッ!」

 木場の顎にアッパーを打ち込み、背中に両手を叩き付けると同時に腹部に膝を打ち込む。そして、そのまま顔面を殴りつけ、反対側の壁へと殴り飛ばす。

「ッ!?」

 木場を一瞬で戦闘不能にすると小柄な少女である小猫の顔面を掴み床へと叩き付ける。だが、戦車の特性ゆえにそれを耐えてしまった小猫が反撃に出ようとして足を掴んだ瞬間、ダークスパイダーは彼女の腹部にスタンピングを繰り返す。

「かはッ!」

 続け様に繰り返される地面を砕く音……足から手が離れた瞬間、腹部だけでなく全身に叩き付けられるダークスパイダーの拳。

「おい」

 四季の声に反応し彼へ……いや、正確に言えば四季の取り出したカードへとダークスパイダーの意識が向かう。

「お前の狙いはコレだろ、来いよ……相手になってやる!」

 ダークスパイダーが己へと向かって来る前に四季はそのカードを掲げ、

「着装!!!」

 その言葉と共に、この世界の危機……それを救う為の鍵と成る白き『ドラゴン』の力を纏う。白い鎧……腕には龍の頭部を思わせるガントレットを着けた姿、その力の名は『ドラゴンボーン』。

 世界に人知れず起こっている滅びの危機はひとつでは無く二つ。その二つの危機を止める為の力を与えられた彼の物語の始まりとなる。




 
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