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閃の軌跡 ー辺境の復讐者ー

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第1話~始まりの鐘~

七耀暦1204年 3月31日(水) -トールズ士官学院-

「―最後に君たちに1つの言葉を贈らせてもらおう」

エレボニア帝国中央、帝都<<ヘイムダル>>近郊の小都市、<<トリスタ>>にある<<トールズ士官学院>>。そこにある講堂では、本学院第215回目となる入学式が行われていた。約200人の新入生の中で、貴族を象徴する白い制服の生徒。平民を表す緑色の制服を着た生徒。そして、そのどちらでもない深紅の制服を着ている生徒も少数いる。紫がかった黒髪の少年、ケイン・ロウハートもその一人であり、そのことに疑問を感じつつも先の声の主であるヴァンダイク学院長の話に耳を傾けていた。本学院の創立について語っている。

「若者よ――世の礎たれ。」

創立者である<<ドライケルス大帝>>の遺した言葉だ。帝国の栄える祖となった人物で、
これが学院の理念となっているらしい。その言葉について自分なりに考え、2年間切磋琢磨していくための手がかりにして欲しいとのこと。

(・・・難しいな。深い意味がありそうだ)

「うーん、いきなりハードルを上げられちゃった感じだね?」

先の言葉の意味についてケインが考えていると、右隣に座っている赤毛の少年に話しかけられる。

「そうだな。難しい言葉だと思う。<<獅子心皇帝>>は言うことが違うな」

「あはは、そうだよね」

ケインは彼と軽く自己紹介をし、入学式前に知り合った少年でケインの左隣に座るリィン・シュヴァルツァーも加えた3人で少しの間談笑をしていた。ちなみにエリオット・クレイグなる赤毛の少年も、黒髪の少年リィンも紅い制服を着ていて変に仲間意識が湧いてきていたケインである。その後も少し限りの談笑をしていたが、教官と思しき赤紫色の髪をした若い女性教官によって紅い制服の生徒達が呼ばれ、各々が戸惑いながらも彼女についていくことにした。よくよく考えてみれば、ここまで何の説明も受けていない。ケインを含めた11人の紅い制服を着た新入生は困惑しているはずだろう。

(・・・不穏な空気が漂ってるな)

学院の裏手に連れてこられた彼らが見たものは、廃墟と言っても差支えの無いほど古びた灰色の建物だった。周りには多少の木々が生い茂っているが、妙な静けさがある。その建物だけがあまりにも場違いで、浮いている。まるで最初からそこにあったような違和感があり、一同は面食らっている。・・・ただ1人を除いて。

「あの教官、鼻歌歌いながら入っていったけど、オカルト系に強いのか?」

「いや、単に場慣れしているんだと思う」

尻込みしている生徒達を気にも留めずに扉を施錠してさっさと建物の中に入っていった教官に対して素朴な疑問をこぼすケインに、リィンは真面目に答える。教官には皆少なからずあっけにとられていたが、結局迷っていても仕方がないという考えに至り、次々に扉の中へと入っていく。

(人の気配を感じるな・・・何もしてきそうな様子はないけど)

「えっと、ケイン?どうかしたの?」

「いや、何でも・・・さて、俺たちも行こうぜ」

「そ、そうだね」

ここにいる人間とは別の気配を感じて立ち止まっていたケインだが、敵意が無いことを悟り、エリオットに呼ばれたので、仲良し3人組み(?)で中へと足を踏み入れる。エリオットいわくいかにも出そうなその建物はの内部は薄暗く、何とも言えない物々しさがあった。一足先にいた女性教官は段差の上に立っている。

(何が始まるっていうんだ・・・)

特別オリエンテーリングを始めると言われてついてきたわけだがこんなところですることなど皆目見当もつかない。何をするにも不向きそうではあるが、ひとまずはⅦ組担任であるらしいサラ・バレスタイン教官の話を聞くことにした。話によると、この11人が本年度から新たに発足された特科クラス、通称は<<Ⅶ組>>で、貴族生徒と平民生徒の混同クラスということらしい。ここ、エレボニア帝国では貴族制度が顕著にあり、貴族派と革新派で帝国内部を二分するほどだ。無論、その近郊にある当学院もその影響を受けていて、貴族生徒は白い制服、平民生徒は緑色の制服と区別されており、所属するクラスも異なる。今年は確か、Ⅰ・Ⅱ組が貴族生徒、Ⅲ~Ⅴ組が平民生徒の計5クラスだったはずだ。ケインと同じ考えに至った眼鏡の少女が先ほどそんな質問をした。貴族生徒と同じクラスになることに断固拒否表明をした緑髪の少年、マキアス・レーグニッツも四大名門の一角たるご子息の金髪少年、ユーシス・アルバレアに挑発され、けんか腰になっていたところを一同の眼前に立つサラ教官に止められていた。

(貴族、か・・・いや、こういう偏見は良くないよな)

貴族を快く思っていない部分があるケインは、まだ貴族に対して少しでも嫌悪がある自分に忸怩たる思いを感じている。

「もしかして・・・門のところで預けたものと関係が?」

これまでのサラ教官の話では特別オリエンテーリングなるものに関しては何も説明されていない。リィンがそのことについて何か気づいたらしく、そんなことを口にした。確かに入学式前に、学院の正門前で2人の先輩に得物を預けている。

(俺も篭手と聖剣、それに導力銃を預けたままだったな・・・待てよ?となると)

このオリエンテーリングの目的に気づいて身構えるケイン。・・・その後サラ教官は自身の左側にあるスイッチを押し、11人のいた床だった場所が突然下り坂になって、空虚な穴へと変わっていった。 
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