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ドリトル先生と伊予のカワウソ

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第七幕その七

「妖怪変化に寛容な国です」
「妖怪変化とは」
「妖怪はイギリスで言う妖精になりますね」
 先生は老紳士にわかりやすくこう表現しました。
「そうなります」
「妖精ですか、妖怪は」
「日本の風土がかなり影響していますので妖精とはかなり違うところもありますが」
「妖怪は妖精です」
「では変化とは」
「貴方達です」
 老紳士に直接言った言葉でした。
「そう考えて下さい」
「といいますと」
「はい、人間やあらゆるものに姿を変えられるものがです」
「変化ですか」
「そうです、日本では貴方達だけでなく」
 カワウソさんや狸さん達だけでなく、というのです。
「植物やものまでがです」
「人間等に姿を変えるのですか」
「そうです、長く使っている物も魂を持ったりします」
「そこはイギリスとは違いますね」
「そうですね、そこは」
「では最近書道に興味があるのですが」
 老紳士はふと先生にこうしたことを言いました。
「書道に使う硯や筆というものも」
「はい、長く使っていますと」
 先生はその書道の硯や筆はどうかと答えました。
「魂を持ちます」
「ああいったものまで、ですか」
「何でも百年使っている硯は」
 それは、といいますと。
「魂を持ち使っている人に素晴らしい字を書かせてくれるそうです」
「それは凄いですね」
「他にもあらゆるものが長く使っていますと」
「魂を持つのですね」
「そして手足が出て動いたりします」
「成程、それもまた変化ですね」
「はい、そうです」
 その通りだとです、先生は老紳士に答えました。
「日本の変化とは多彩です」
「お話を聞いているとそう思いますね」
「そうですね、そして日本という国はです」
「その妖怪変化にですね」
「極めて寛容です」
 そうした文化的風土だというのです。
「この国はそうです」
「左様ですか、では私達が日本にいても」
「受け入れてもらえます」
 風土的、文化的にというのです。
「今の日本の人達もそうした人が多いと思いますよ」
「万が一私達がカワウソだとわかっても」
「そうです、悪戯も化かされたと思うだけで」
「済みますか」
「そうです、ですから」
「我々にとって住みやすい国ですか」
「極めて、そうだと思います」
 先生は老紳士ににこりとしている笑顔でお話するのでした。
「ですから」
「楽しく暮らせますね、この国で」
「そう思います」
「わかりました、ではこのまま住みたいです」
 老紳士は先生にはっきりと答えました。
「私の目に狂いはなかった様ですし」
「それではですね」
「はい、ただ」
「ただ、とは」
「やはり狸さん達のことが気になります」
 このことはどうしてもとです、老紳士は先生にまたこのことをお話するのでした。そのお顔はどうにも難しいお顔になっています。
「どうしても」
「そうですか、やはり」
「あの人達がどんな人達かわからないですし」
「いい人達よ」
「だといいのですか」
「仲良く出来ると思います」
 先生はこのこともです、老紳士に答えました。 
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