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機動戦士ガンダム・インフィニットG

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第十二話「その力を絶て・前編」

 
前書き
前編と後編に分けて投稿します。

 

 
MS学園にて


連邦政府が建学した、MS操縦者等育成高等学校「MS学園」。そこは、あのIS学園より数百キロ離れた地点にあるMSパイロットはじめ、オペレーター、整備士、の学習を行う専門高等学校である。
また、施設の半分は在日連邦軍の基地が管理しており、MSの模擬授業は軍の滑走路の一部を貸し切って行うため、それ専用の施設を作ることなど必要ない。
また、学園の半分は軍が管理しているため風紀などの規律も軍の影響があるのか、大変厳しくなっており、連帯責任という風習も芽生えている。
何はともあれ、今日もMS学園は協調性の強い学徒たちであふれていた。

「IS学園へ派遣する学徒を二人も?」
学長室に呼び出された教官、ユウ・カジマは自分が受け持つ生徒の二名をIS学園へ向かわせることを聞かされた。とはいえ、その二人の生徒は一週間前に入港手続きを終えて、偶然にも彼が受け持つ教室に編入された男女なだけだ。
「うむ、君と同じ特殊なMSを扱う男子生徒と、彼のサポートを担うオペレーターの女子学徒の二名だ……」
学長のヨハン・イブラヒム・レビルは、そう静かに淡々と彼に言い渡した。
「パイロットのユウマ・ライトニングと、そのオペレーターのシャルロット・デュノアですか……」
「うむ、二人とも良い子たちだ。このまま君のクラスに居続けてやりたかったのだがね? 何せ、パイロットのユウマ・ライトニング君には君と同じシステムを搭載したMSのパイロットなのだよ? そんな彼のストッパー役はシャルロット君しかいない。そこで、あの『例のシステム』を用いて、学園のISとの戦闘データを取ってきてもらいたい」
「はい……」
おそらく、軍の要請だろう。ユウは思った。
「……では、早速で申し訳ないが二人をミディアまで連れてきてくれんかね?」
ニッコリと笑むレビルにユウは一礼をして学長室を出ていった。
ユウは整備を続ける学徒二人の元へ訪ねに向かった。丁度アリーナで模擬戦闘の実習か愛機の整備を行っているころだ。
そんな彼は、アリーナの生徒専用の整備ルームへ出向いた。しかし、そんな彼は目的の生徒よりも、まず初めにその無表情はまなざしに映ってきたものは……
「……!?」
蒼い機体。その期待に記された名称のエンブレムにユウは表情を険しくさせる。
――EXAMシステム搭載機ッ……!?
やはり、予想はしていたが……しかし、もう一体のEXAM機があるとはさすがに驚きであった。
――ニムバス以外にもEXAMの使い手が居たとはな……?
それも、彼らよりも年下の少年が持ち主とはさらに驚きである。しかし、その少年にも更なる衝撃の事実があった。彼らが入校当時、偶然にもユウの元へ配属される際にレビルが発した言葉が意外であった。
『ユーマ・ライトニングは、ジオンから脱走した強化人間だ』
現在、ジオンとの間に良からぬ衝突もなく、平凡に温厚な関係を築いているものの、ジオンのMS技術はこちらのMSの性能技術を大いに圧倒する存在で、大いに警戒されるべく仮想敵でもあるのだ。今や、連邦政府にとってISと、「ジオンのMS」は彼らを滅ぼしかねない脅威として考えてもいい。ISはすでに敵同然になりつつあるも、やはりジオンのMSも油断してはならぬ相手であった。
――それも、イフリートタイプ。二ムバスと同じ奴か?
カラーリングは一部違うも、同じ機体である。
「あれ? ユウ先生!」
すると、調整中に担任が訪れたことにMS学園の制服を着たシャルロットが気づき、駆け寄ってきた。彼女は、端末のパッドを使って、イフリートの機内をチェックしていた。
「シャルロットか……ユーマは?」
「今、機体の中で調整中です」
「……」
ユウは、隣のイフリートを見た。あれにユーマが融合しているのか。
「時間はかかるかい?」
「あと、十分ほどで終わりますけど?」
「そうか……今回は、二人に話がある」
「何ですか?」
「実は……」

翌日、IS学園にて

何やら今回は転入生が来るそうだ、それもドイツから。この時期に転入生とは珍しいと教員らは違和感をもった。それと同時に、また新たな情報も紛れ込んできた。それは、なんと再びMS学園から新たにパイロットとオペレーターの生徒が二人こちらへ派遣されるようである。噂に聞くと、「EXAM」と呼ばれる特殊なシステムが搭載された機体の性能を確かめるために仮想敵であるISとの戦闘データをとるとのことだ。
元はジオンの独自技術であり、その技術は連邦政府にも提供されているが、このシステムを使いこなせる人間は少なく、唯一扱える存在はMS学園の教員ユウ・カジマとジオン軍の二ムバス・シュターゼンである。しかし、もう一人の適合者が現れ、彼がMS学園に亡命してしまったのだ。
何せ、その適合者である青年は「強化人間」だという。強化人間はジオンと連邦の両者が研究を進めているもので、下手すれば「非人道的」と訴えられかねない存在だ。
ジオン側として、強化人間の、それもEXAMを使いこなせる貴重な人材が連邦政府にわたってしまったことに対しては引き渡しを要求したいのだが、亡命したことをメディアに聞かれてしまったら、ジオンの残忍性が拡大して反感の目を向けられてしまうために下手に手が出せない。しかし、連邦政府もジオンから高いMS技術を提供してくれることもあり、そこは外交、国同士の付き合いとしてうまい具合に付き合っていく必要があるため、連邦政府はジオンに関するこの事実を非公開にしてやったというし、また例の青年に関しては学園を卒業後に彼の機体と戦闘データをジオンに提供するという形でどうにか片が付いたという……と、ここまでがジュドーと凱が仕入れた極秘情報だ。報酬は焼きそばパンを2つ。
と、僕は机に伏せて朝のSHRが始まるまでの間仮眠をとっていた。
「あ……アムロ、これ見てくれよ!」
朝っぱらから騒々しく、隼人が血相をかいて僕の元へ駆け寄ってきた。
「何だよ~……僕の大事な仮眠時間を邪魔しないでくれよ?」
「呑気なこと言ってる暇ないぞ!? これ、お前宛てのやつなんだけど……」
と、隼人は僕にとある一切れの紙を見せた。紙には、何か書いてある。これ、ひょっとして……「果たし状」ってやつか?
「……もしかして、果たし状?」
僕は目を細めた。いったい誰宛ての?
「そうなんだよ! それも、内容を呼んでくれ?」
「えぇ……?」
面倒な顔で僕はその文中を見た。すると……徐々に僕の目からは眠気が失せ、癖だらけな髪の毛が逆立師ちそうなほどの驚きと衝撃が僕を襲った。
「ま、マジなのッ!?」
それは、あのドイツの先鋭IS部隊「黒兎部隊」の隊長という人物からの予告というか、それにちかい果たし状であった。
「それも、悪いことに……今日来るドイツの転校生、その果たし状送ってきた張本人だってさ? しかもドイツの代表候補生」
「……」
僕は黙ると、足元を転がるハロを両手で拾い上げた。そして……
「……ハロ、怪しい奴が現れたら迷わず撃ち殺せ」
「ハロハロ!」
ハロの口から黒い銃口のような穴が……アムロは、相手を殺してでも自分の身を守ろうという強行手段に乗り出した。
「アムロに言った俺がアホだった……」
それよりも……
「マリーダさん。別に教室までついてこなくても……」
後ろを向けば、一夏と共にマリーダも登校してきた。やはり、一夏を守るために彼女も同行したのだな。
「何を言う? 今回転校してくる者の正体を知らんのか?」
「え? 誰ですか?」
「まぁいい……時期にわかる」
マリーダはため息をついた。
しばらくして、教員の千冬と副担の真耶が教室に入り、千冬の厳格な一言によって朝のSHRが始まった。
「今日は転校生を三人紹介しますけど、その内のニ人は一日遅れてくるそうなので先に一人目の子を紹介しますね?」
と、真耶は廊下で待つ転校生に「入ってきてください?」と、言うとその生徒は教卓の隣へ歩み寄り、姿を見せた。
銀髪で眼帯をした小柄な少女。そんな彼女に一夏は見覚えがあった。
「……!?」
――あの時の娘か!?
裏路地へ追い込まれ、襲ってきた謎の少女である。まさか、転校生として再び現れるとは彼とて思ってもみなかったのだ。そして、共に教室へ同行したマリーダの理由もハッキリと理解した。
「ラウラ・ボーデヴィッヒだ!」
「い、以上……ですか?」
「以上だ」
気まずくなる真耶だが、そんな彼女の後ろから千冬がため息をつく。
「もっと、普通の紹介ができんのか? お前は……」
「すみません! 教官!」
「教官はよせ」
――教官……?
あのラウラという少女、確か今……姉のことを「教官」て言ったな? 一夏は、そう目を細めた。そして、隣に立つマリーダの表情はますます険しくなる。
「フン……まだ此処にいたのか?」
「……」
一夏は黙ってラウラを睨んだ。そして、ラウラは一夏に向けて片手を掲げようとしたが……
「懲りてないようだな?」
その掲げた手をマリーダの片手が掴んだ。
「貴様……!」
ラウラは、平然と保つマリーダを睨みつける。しかし、所詮は子供の駄々事だと悟ったマリーダは、呆れた目で彼女を見る。
「それはこちらの台詞だ。返り討ちにされたのにも懲りずに、こんな物まで送りおって」
と、マリーダはポケットからアムロが持っていたのと同じ「果たし状」を持っていた。
「あ、それ俺も……」
そういうと、ジュドーも机の中からその果たし状を手にした。同じくカミーユも。
しかし、それぞれ内容が異なっており、カミーユのだけは何やら脅迫状めいたものになっていた。なにやらガンダムタイプのMSのパイロットらにこうした手紙が届いていたのだ。
「お前か! こんなもの送って悪戯したのは?」
カミーユはそう叫んで席から立った。
「と、いうことは……お前たちがガンダムタイプのMSパイロットで間違いないのだな?」
と、ラウラはそう問う。もちろん、果たし状が届いた人物は皆ガンダムタイプを所有する生徒たちであった。
「それがどうした!」
と、ジュドー。
すると、ラウラはビシッと彼らに指を向けてこう宣言したのだ。
「これより、私はお前たちガンダムのパイロット共に決闘を申し込む! 単体で来ようが、複数で来ようが構わんぞ?」
「はぁ? 何言ってんだよ!」
「兎に角も、これだけは言ったぞ? これに恐れて逃げるのも構わん。参加は個人の自由にするがいい!」
そう、言いたいことを言ってラウラは与えられた席へと座った。四六時中は、MS側の学徒らから警戒な視線を向けられるが、彼女は平然としていた。

「ったく! いったい何なんだよ? あのラウラってのは!?」
休憩時間にて、MS勢は集ってあの転校生のことで話していた。
「奴は、ドイツの先鋭IS部隊「黒兎」の隊長を務めているラウラ・ボーデヴィッヒっていうチビで、しかもドイツの代表候補生だ。下手すると倍返しにあうぜ?」
と、該。彼の情報によれば、セシリアや凰といった代表候補生よりも圧倒的に戦闘能力が上だという。当然だ。何せ、相手は軍の、それも先鋭部隊の隊長ときた。それなら候補生ではなくもはや国家代表になっても過言ではないだろう。まぁ、相手は軍人ゆえにいろいろと難しいのかもしれない。
「けど、どうするんだ? そんなヤバいのが俺たちに喧嘩売ってきてんだぜ?」
「フェアじゃないのか嫌いだが……袋にするしかないだろ?」
と、カミーユはしぶしぶとそう言ったが、そんな彼の気まずい一言に一夏が割り込む。
「やめときなって? 相手は本当にガチでヤバいよ?」
そういって、彼はこの前裏路地で彼女に襲われた内容を周囲に話した。自分が民間人だったという理由もあるが、それ以上にものすごい殺意と敵意を感じた。おそらく、相手は武器を使って殺そうともしているに違いない。
「マリーダさんが助けてくれたからよかったけど、あの時俺一人だけだったらマジでヤバかったかも……俺たちが複数でかかってくることも予想して何か企んでたりもするし、下手に襲わない方がいい」
一夏のその発言に周囲もしぶしぶとうなずくばかり。特に、マリーダは正しい判断だと納得した。
「そうだな……奴は先鋭部隊の隊長と聞く。何らかの権力をもってしてでもお前たちを潰しにかかるだろう」
「……でも、どうして俺たちなんだ?」
ジュドーはそう言って一夏の方を見る。
「だってさ? そいつは一夏だけに恨みがあるっていうじゃないか? それなのに、どうして俺たちまで?」
「恐らく……お前たちの機体と関連があるとかか?」
マリーダは彼らが所有するそれぞれのMSのデータを口にした。
「……まず、一夏の『ユニコーン』だが、あれは設計思想からして謎だらけだ。次に、カミーユの『ゼータガンダム』は、可変系機能を取り入れたGシリーズ初の高機動タイプの機体で、これにもブラックボックスがある。ジュドーの『ダブルゼータ』に関してはカミーユのゼータガンダムの強襲タイプとして機動力を殺し、代わりに防御と攻撃力に特化された大出力の機体だ。やはりこの機体にもブラックボックスがある。そして、最後に全てのGタイプの祖となったアムロのファーストタイプ、『ガンダム』は、ブラックボックスが他のGタイプよりも異常に多く、未知なる性能も計り知れない機体だ。その技術力をMS側の勢力が所持している。当然、IS勢はその技術をどうしても欲しがるわけだ。それゆえにどうにか詳細な戦闘データを解析したいと思っているのだと思う。そのためには``ガンダムに勝利する``のが絶対条件だろう。ガンダムの能力を打ち破り、そのデータをすべて収集すれば……」
「じゃ、じゃあ……俺たちってIS勢から狙われてるってことなの!?」
ジュドーが目を丸くして言う。
「過言ではないな?」
「……」
一夏は、表情を険しくさせた。しかし、何よりもラウラが彼に対して個人的なことを抱いているのが否定できなかった。
――気になるな……?

放課後、ガンダム勢はラウラに目を付けられることなく一日を終えた。彼らもまた一日中ラウラを監視・警戒していたが、黙々と授業に取り組む彼女からは何の不信感も得られなかった。
「……大丈夫なの?」
寮にて。パジャマに着替えた明沙はベッドに腰を下ろして、向こう側のベッドへ横たわるアムロを心配した。
「さぁね? マット先生たちを信じるしかないよ」
「でも……」
「先生たちだって、元は腕利きの軍人たちなんだぞ? ラウラが来たっていうことはきっと先生たちも僕らの身を案じて厳重な体制を敷いてくれているよ」
「だと……いいけど」
「まさか、大衆の前で人殺しなんてできるわけなんてないよ? できるだけ先生たちと一緒に行動するから。お前はそこまで心配すんなって?」
「で、でも……」
「明沙?」
アムロは、いくらなんでも過剰な心配だと言った。しかし、明沙にとって、今日転校してきたラウラから果てしない強大な力を感じたのだ。その力が、アムロの身に何かあったらと思うと、彼女は心配でいられなくなった。
「ごめん……でも、十分に気を付けてね?」
「ラウラだろ? 大丈夫だよ?」
「だと……いいけど」
そんな明沙とは対照的にアムロはやや呑気だった。
一方、一夏は今日転校してきたラウラについてマリーダと話し合っていた。
「マリーダさん、あのラウラっていうやつの事詳しく知っています?」
「知ってるも何も、ドイツの先鋭「黒兎」部隊といえば有名だ。我々MS側の強敵ともなりうる存在でもある。まぁ、キュベレイ部隊が誇るファンネル攻撃の前では敵じゃないがな?」
「その……部隊の隊長のラウラっていうのはいったい何者なんです?」
「私も、詳しいことはよく知らないのだが、噂では試験管ベビー……すなわち強化人間と同じ人種の者だろう」
「強化人間……!?」
「ドイツ……いや、EU側も自分たちのことは棚に上げてジオンの強化人間の技術を批判しているが、ああ見えて奴らも我々以上に研究を重ねているからな?」
「そうなんだ……けど、どうして俺のこと憎んでるんでしょうね?」
それが一番の謎だ。一体どうして彼女が一夏をこうも敵視しているのか?
「さぁな? まぁ、危険なようであれば私もそれなりに本国から応援をよこす。お前は安心して今日は休め?」
「はい……」
しかし、一夏は寝れなかった。どうも、ラウラのことが気がかりで仕方がない。
――寝れないな?
寝付けない彼は、ふと部屋を出て軽く歩き回ることにした。帰りに自販機で飲み物でも飲んでから眠ろうかと思っていたのだが……
「……?」
ふと、彼はとある気配を感じた。その気配は誰なのかは考えるまでもない。外から感じる。
――あいつか……?
近寄るなと言われているが、一夏は好奇心から寮を出た。幸いにも寮長の千冬は玄関の窓口にはいなかった。おそらく、共に外へ出たのだ。
「……やはりな?」
寮を出て、とある外の広場へと近づくとラウラの声が聞こえてくる。誰かに訴えているのか? その相手は言うまでもなく千冬だった。
此処からだと、ラウラが一体何を言っているのかはわからないが、唯一聞こえてくる台詞といえば、「戻ってきてください!」、「ここは、教官が居るようなところではありません」など、彼女が千冬をどこかへ連れ戻したいと言っているようだ。だが、それも千冬の威圧感のある一言で蹴り戻されて、ラウラは大人しく引き下がってしまった。
「いったい……二人はどういう関係なんだ?」
ラウラに関しては謎が深まるばかりだが、確かなことは彼女が千冬の何らかの教え子だとうことだ。おそらく、ISに関係したことだろう。まさか……姉貴は軍の教官でもしていたというのか? 
「いや、それはないわ……」
千冬が、軍の教官をしていたなんて恐ろしく想像もしたくなかった。

翌日、MSとISの模擬授業があり、それぞれ機体を展開して実習を行っていた。この授業の内容は、貴重な体験としてMSとISが互いに対戦し合う実習授業なのだ。
MS同士なら対戦用のソフトシステムがあるのだが、ISとの対戦ではその規格が合わないため、双方にペイント弾を装備させたりビーム状の刃もホログラムとなっている。
かくして、互いの対戦を始めたが……勝負はMSのガンダム勢がほぼ圧勝で会った。
該や隼人のガンキャノンらは多少手こずっているものの、遠方からの射撃と威力は素人のISでは防ぎようがない。
無論、ガンダム側はアムロと一夏以外の生徒二人は国家の代表生だ。一夏やアムロも引けを取らぬほどの強さを持つが、とくにカミーユやジュドーの駆るゼータとダブルゼータの機動力と馬力にはさすがの代表候補生であるセシリアと凰は惨敗であった……
「オルコット! 鈴音! 何だその様は!!」
代表娘補正ともあろう者が、こもあっけなく倒れてしまったことに千冬は呆れてしまった。
それも、ガンダム一機に対して二機で応戦しようにも武器を使わずに同士討ちさせたり、さらには小技の格闘でスターライトや薙刀をはじかれたりして、完全に遊ばれている。
「くぅ……カミーユさん! もう一本お願い足します!!」
「ああ、何度でも来い!」
「もう! 何で龍咆が効かないのよ!?」
「文句言うなよ? こっちはダブルビームライフル抜きのハンデでやってんだからさ?」
一方の一夏のユニコーンも、箒が纏う打鉄のブレードを軽々とかわして小技で防ぐ。
「一夏! 私と真剣に戦えぇ!」
「やれやれ……」
しかし、一方のアムロはたいていの女子生徒らに勝ってしまい、ひとり孤立してしまっていた。さらに目の前には自分と同じようにラウラも孤立している。と、いうよりも自ら集団の間へ歩もうとしない。
――げぇ……コイツかよ?
ただでさえ、果たし状とかで喧嘩売られているから近寄りたくない。しかし、無視したら千冬に何か言われそうだしどうすればいいか迷ってしまう。
「おい……?」
「……!?」
すると、彼女はゆっくりとアムロを睨みつけるように振り向いた。
「な、なに?」
「……嶺アムロだな?」
「そ、そうだけど……?」
「ふむ……」
まじまじと。ラウラはアムロを見る。しかし、この状況が如何にも気まずく、アムロはラウラの気迫に負けそうになった。
――何か……怖い
「おーい! アームロっ♪」
と、背後からアムロの肩に片腕を絡ませるフォルドの姿が。
「ふぉ、フォルド先生!」
「ボッチみてぇだな? どれ、俺とやっか?」
「お、お願いします……」
どうやら、フォルドが危険を察知してきてくれたようだ。ラウラは、邪魔者が入ったと嫌な顔をしながら二人の背を睨んだ。
――た、助かった……!
「……アムロ、あんましあのラウラってチビに近づくんじゃねぇぞ?」
と、フォルドはやや真顔でアムロに言う。
「は、はい……」
「俺たちから離れずに行動しろ? 場合によっちゃあ……」
「そうですね、気を付けます」
兎に角も、あのラウラって娘には十分に注意しなくちゃ。

しかし、そのあとに事件は起こった。それを知るまでは僕たちは昼休憩を満喫していたのというのに、一人の女子が僕らが居る一組のもとへ駈け込んで来たのだ。
「ガンダムの人たちいますか!?」
「どうしたんだ?」
トランプしていた一夏はその声に振り向いて席から立ち上がった。
「大変なの! ラウラって転校生の娘がアリーナでセシリアさんと凰さんを……」
「ッ!?」
一夏や、一緒にトランプをしていた僕らも何やら良からぬ予感を抱き、教室を後にした。
「あ、アムロ!?」
そのとき、明沙がとっさに僕の手を掴んで止めた。
「どうしたんだよ!?」
「なんか……嫌な予感がするの。先に先生を呼びに行った方がいいよ?」
「そうよ? カミーユたちも一旦落ち着いて?」
明沙に続いてファも言い出した。僕以外の男子らは二人の忠告に何かの予測を感じ、アリーナへ向かおうとする足を一旦止める。だが、窓から映るアリーナの景色から突如巨大な煙が立ち上ったのである。それも、大きな爆発音と共にだ……
「な、なんだ!?」
「ありゃ……喧嘩ってレベルじゃねぇかもな?」
該は目を細めて窓越しにアリーナを見た。
「とりあえず、先生たちを呼ぼうよ!」
と、隼人。
僕らはすぐさま職員室へ向かったが、すでに教員たちはこの騒ぎにざわめいており、MS側のマット達は千冬たちと一緒にアリーナへ向かったようだった。その後を追うかのように僕らもアリーナへ向かった。
「こ、これは……!」
アリーナでは、目の前に横たわるセシリアと凰の二人が、そしてその奥には専用の黒いISを纏ったラウラの姿が見えた。しかし、何やら様子が変だ。
「ガンダムはどこだァ……!」
ラウラは叫ぶ。目を睨ませ、その瞳孔は野獣のように鋭く凶暴だった。そして、彼女の頬からは六角状の鱗が浮き出ているではないか? 
「お、おい……! 何だよあれ?」
指をさすジュドーに、隣に立つマットはつぶやいた。
「まさか……あれは『DG細胞』なのか!?」
「DG細胞……馬鹿な! あれは雷蔵博士が廃棄処分したはずでは!?」
冷静なマオ先生も、これだけには目を丸くした。
「ガンダムゥ……出てこい! ガンダムゥ!!」
ラウラの殺気はすさまじく、もはやその感情は己でさえも抑えることはできなかったのである……

 
 

 
後書き
「次回」

「その力を絶て・後編」


~どうでもいいようなおまけ~

「そういやさ~? 『トリントン基地』って何回ぐらい襲撃されたんだ?」
「0083でしか印象ないけど、最近だとユニコーンで襲撃されたよ? もっと詳しく調べるとゲームや小説の「コロニーが落ちた地で」の終盤戦でも襲われてるね?」
「3回も襲撃されてんだな? 俺が連邦兵だったら絶対トリントンには行きたくないね?」
「俺もそー思う。つーかさ? トリントンにいたコウ・ウラキってあの後どうなったんだろうね?」
「あの後の予想だと軍辞めてニナと一緒にどこかへ行ったんじゃない?」
「そもそも、ニナってあんときコウの目の前でガトーと一緒に逃げたよね? 結局振ったんじゃん? なのにこの女今さらどの面さげて戻って来たんじゃコラ! っていいたいよね?」
「思う思う、最後の場を和ませるために無理やり感ってのが感じるよね? 逆に劇場版の方が違和感なかったわ」
「でも出てくるMSはカッコいいよね?」
「OVA、後付け設定ですからMSV増やさないとね?」

 
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