ポケットモンスター ホープロード
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第一話 クールな保護団員、ツヴァイ
「なんなんだテメェ!」
「僕はポケモン保護団。そのポケモンは絶滅の危機になってるから捕えちゃいけないんですよ?」
本当は今すぐにでも叩き潰したいが、保護団員でもあるため努めて平然を装っていた。
目の前にはとても許しがたい光景がある。
ラプラスが鎖で縛り付けられている。ボロボロになっていて瀕死状態だ。
ラプラスの状態を見るに一週間は経っているのではないだろうか。
やせ細っていて食べ物もロクに食べさせてもらえてないような様子だ。
トレーナーは二十四時間以内に瀕死の状態のポケモンを回復しなければならないという義務がある。だが、少なくとも一週間は経過しているため下手すれば命の危機にさらされていることになる。
「うるせぇ!ガキには関係ないだろ!」
やはりそう来たか…と諦めたような表情になった。
ポケモンを密猟するくらいなのだから何を言っても無駄なのはわかっていた。
「なら、力づくでも止めるまでです。」
そういってボールを投げるとグレイシアが現れた。
「テメェ…大人をなめるんじゃねぇ!」
現れたのはブニャット。まさに悪人らしい。
「グレイシア、吹雪。」
「グゥゥゥゥレェェェェ!」
高い特攻から放たれる一撃は辺りを一瞬にして凍らせた。
「ッ、ぐ…だが、厚い脂肪を持つブニャットには効かないぞ!」
「だろうね、だけど僕が真に狙っているのはダメージじゃない。」
「負け惜しみを…ブニャット、切り裂くだ!」
しかし、ブニャットの反応はない。
「おい、ブニャット…切り裂く……!?」
吹雪の勢いはまだ終わっておらずやっと勢いが収まるとブニャットが氷漬けになっていた。
「ブニャット!?…凍り状態…まさかこれを…ッ」
「その通り。グレイシア、シグナルビーム!」
「グレイッ」
グレイシアから強力な一撃をゼロ距離から発射した。
「くっ…ブニャット!?」
「さらに吹雪!」
またさらにゼロ距離から吹雪が放たれた。
「ぐっ…ブニャット…ッ。」
二度の吹雪を受けてブニャットは倒れた。
「可哀想に、ブニャット…。こんな奴のパートナーだなんて…。」
「ぐっ…だがラプラスはもらっていくぞ。」
「させない、グレイシア!」
グレイシアが冷気を浴びせて男の足を氷漬けにした。
「うっ、ぐ…うう。」
「鎖を切るんだ、ドンカラス!辻斬り!」
ヒューンと現れるとラプラスに近づき辻斬りで鎖を切った。
「ドンカラァ!」
ラプラスは怯えた目でドンカラスを見ていた。
散々なことをされてポケモンや人を信頼できないのだろう。
『ラプラス譲さん、私が来たからには安心です。…さあ、これを。』
ドンカラスは元気の塊をラプラスに差し出した。
しかし、ラプラスは怯えているのか食べようとしない。
『ちょっとぉ、ドンカラスゥ!ナンパしてる場合じゃないでしょ!』
密猟の男を見張りながらもドンカラスの様子を見ていたグレイシア。
『いやいや、そんなことないよ、グレイシアちゃん。僕はただラプラス譲さんに元気になってもらおうと思っていて…。』
『いい加減にしなさいよ!』
「グレイ、グレイ!」
「ドンカラァ、ドンカラァ!」
人間にはわからないが会話はしていた。
「テレポートでこいつを警察に突き出すよ、サーナイト。」
「サナ、サナ。」
サーナイトが目線でラプラスの方を促した。
「…ラプラスが回復してない…。こーら、ドンカラス!元気の塊渡してないの?」
ドンカラスはギクッとなって主人の方を見た。
「!?ド…ドンカラスゥゥゥ…ドンカラァ…。」
『!?え…えええええぇぇぇ…えっとその…。』
言葉はわからずともだいたい様子で理解した。
「まーた、ナンパしてたんだね。」
「サナ、サーナ。」
私がやりますと言っていることを理解した。
「うん、サーナイト、お願い。」
サーナイトはゆっくりラプラスに近づいた。
『ドンカラスさん、元気を塊を。』
『あっ、ああ…サーナイトさん。』
ドンカラスから元気の塊を渡してもらい微笑みながら近づいた。
『大丈夫ですよ、これを食べれば元気になりますから。』
『いや…私に…近づかないで…』
『…私達はアナタを傷つけるつもりはないわ。むしろ助けたいの。これを食べれば大丈夫よ。』
真剣な目で見つめるサーナイトに心動かされたのか、元気を塊を食べた。
するとさっきまでグッタリしていたラプラスの体がしゃきっとしてきた。
『良かった…。』
「よぉし、とりあえずこれで大丈夫だね。グレイシア、ドンカラス、戻って。」
二匹をボールに戻した。
「さあて、プロテクターボールの出番だ。入ってくれ。」
プロテクターボールをラプラスに投げる。
横でサーナイトが微笑んでいた。
この人は敵ではないとラプラスに表情で訴えていた。
ラプラスは素直にボールに収まった。
「よし、最後の仕事だよ、サーナイト。この男もろともテレポートして警察に突き出すよ。」
「サーナ。」
「くっ、くそ…。」
サーナイトもろともテレポートし、密猟男は警察に突き出された。
しかし、彼は密猟団の一人にしかすぎなかった。
任務を終え、報告書を書いている時、人が近づく気配を感じて振り返った。
「今日の任務、大丈夫だった?」
中性的な容姿を持つ少年が話しかけた。
「うん、大丈夫だったよ、兄さん。」
大好きな兄に会えて抱き着いた。
「ドライ、そーやって甘やかして…。」
「兄さん。」
「兄貴…。」
突然現れたと思えばこの言葉である。
「しょーがくせーか?」
からかうようポンポンと頭を触った。
「やめろ!」
「なんだ?ドライには犬みてぇに触られるのに俺に触られるのは嫌って奴か?」
「ああ、お前みたいな奴に触られたくなんかない!」
「フン、しょーがくせー。」
「なんだと!?」
「そこまでだ、フィーア。」
冷徹な雰囲気を出しながら、青年が顔を出した。
「兄さん!」
「兄様ッ!」
「兄貴…。」
嬉しそうにする下の弟と妹に対して上の兄の方は不機嫌そうに言った。
「妹をからかうのがそんなに楽しいか。お前も所詮小学生レベルのいじめっ子だな。」
「だとテメェ!そういうテメェは任務したのかよ!」
「私には私の役割がある。お前はちゃんと任務をこなすことだな。」
「長男の権力って奴か?言っておくけどな、ポケモンバトルの実力だったら負ける気がしねぇ。」
「フン、すぐに実力行使とは…野蛮だな。」
「くっ…テメェ!」
「やめてください、兄さん。ここで喧嘩してどうするんですか?」
「ほんっとうだよ。」
「ッ…。」
三対一…分が悪いとわかったのか、その場から去って行ってしまった。
「…全く、フィーアは…。…で、任務はどうだった…?
ツヴァイ。」
「ええ、大丈夫でしたよ。あんなの軽いもんです。」
「ああ、無理はしないように。」
「ええ。」
「頼んだよ…。我々の…目的達成のために…。」
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