万華鏡
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第八十三話 卒業式に向けてその十一
「海からは美味しいお魚も漁れるしね」
「あと神戸にも近いですし」
「広島にも」
「電車でちょっと行ったらよ」
「どっちにもですよね」
「行けますよね」
「そうなの、まあ私も実家から通えない訳じゃないけれど」
それでもだというのだ、先輩は五人にこのあたりの事情も話した。
「寮にしたのよ」
「寮に住んで、ですか」
「そこから通学することにされたんですね」
五人もこのことがわかったのだった。
「それで大学に入られてもですね」
「寮に入られるんですね」
「寮もいいわよ」
実家と同じく、というのだ。
「皆で楽しく過ごせるわよ」
「けれど。若しもですよ」
里香がここで言うのだった。
「人付き合いが悪いと」
「ああ、それだったら寮生活はね」
「苦しいですよね」
「ええ、けれど合う人は絶対に一人はいるから」
寮の中にだ。
「だから安心していいわよ」
「そのことはですね」
「そう、安心していいから」
「そうですか」
「ただ、女の子だけだと」
このこともだった、先輩は五人にしっかりと言った。
「かなり汚い生活になるからね」
「それ宇野先輩も仰ってましたよ」
「女の子だけだと汚くなるって」
「男の子の目がないと」
「普通にそうなるって」
「それ本当のことだから」
実際にだ、汚なくなるというのだ。
「冗談抜きにね」
「ううん、じゃあうちの女子寮も」
「そこも」
「油断するとすぐによ」
まさにだ、すぐにだというのだ。
「寮は汚くなるから注意してね」
「女の子同士だと」
「そうなっちゃうのは本当なんですね」
「そうよ、それにね」
「それに?」
「それにっていいますと」
「匂いもね」
香りでもない、このことを先輩は行間言葉に出ないその中で強調した。言葉には出さないがそれでもというのだ。
「それもね」
「凄いんですか」
「匂いが」
「独特よ、はっきり言って臭いから」
そうだというのだ。
「物凄くね」
「女の匂い、ですか」
「そんなに匂うんですか」
「男の子引く位ね」
そこまで臭いというのだ。
「花の香りじゃないから」
「じゃあどんな匂いですか?」
景子はそこがわからなくて先輩に尋ねた。
「女の子だけの匂いって」
「具体的には」
「部室の匂いだけれど」
先輩がここで出した答えはこれだったが。
「はっきり言うと私達いつもシャワー浴びて部室もシャワールームも綺麗にしてるでしょ」
「はい、先生も自らお掃除して」
「それで」
「シャワーも浴びないでお掃除もしないままの」
「そうしたですか」
「そんな匂いですか」
「ちょっと油断したらそうした匂いになるのよ」
女子寮は、というのだ。
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