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『自分:第1章』

作者:零那
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『県外留置/逆戻り』

高松行き決定。
ピンポンで玄関開けると残念そうな表情の寮長。
鍵と携帯と財布を持って出た。

向かう先は3ヶ月前迄居た施設。
空いてる寮で話し合い。

この日はバレンタイン。
良くも悪くも一生忘れられん。
皆に、早めに渡してて良かった。


寮長は凄く曇った表情。
期待に応えられなくてすみませんでした。

話によると、不倫云々は関係無かった。
問題は零那自身では無い。
高校生男児にとって悪影響だって事らしい。

『高校生の溜まり場』
『高校生の飲酒喫煙』
『深夜徘徊、外泊』

校則の厳しい高校もある。
それぞれ高校は違う。
社会人も1人居た。

『彼達を退学に追い込みたくないなら零那が出て行くのがベスト』

そんな判断。


寮長はソフトテニス関係でユウの出身中学職員と友達らしい。
ユウの事も中学時代の話を聞いていたらしい。
ユウの信用はあった。
認めてくれていた。

だから、尚更複雑なんだろう...


零那に対して『簡単に引き離したくない』『通信高校、二度目の高校生を辞めさすのは辛い』と思ってくれている。

ユウに対して『退学は避けてやりたい』と思ってくれている。

本心は知らん。
思い上がりかも。


でも、なんとなくそんな優しさが伝わってきた。
立場的にビシッ!と決めなあかん。

『高松の女性センターの寮に入って貰う。』

『大事な友達を守る為、退学にならん為、零那が出る。』


零那は納得した。
皆を守れるんなら。


家に帰って荷物まとめて掃除して解約手続き。
約3ヶ月。
でも、あまりにも短い。
それやのに、思い出が多過ぎる。
濃い期間だった。


インスタントのUFO焼きそばを作ってと頼まれた。
作り方を知らんって言うのが恥ずかしかった。
作り方が載ってるのも知らんかった。
ソースも最初に入れてしまった。
味がせん焼きそばを出した。

で、皆に『UFOの作り方知らんとか天然記念物』って笑われたり。


皆が当然のように解ってる一般常識ってのが本当に解らんくて苦労した。
でも、それを教えて貰うのが楽しかった。
誰かに『小学生みたい』って言われたけど、実際、世間一般常識に関してはホンマそうやと思う。
いや、就学前の幼児並かも。


そんな、優しくて温かい楽しい日々を...
こんな自分に、存分に与えてくれた友達...
皆を守れるなら、黙って居らんなることくらい容易い。


悲しい、淋しい、辛い。
人間の温かさを知れば独りになるのは怖い。


『人間は孤独では生きれない』

『人間は人間に依存する』

そう想った。
怖い。

咄嗟に『依存は相手を壊す』と感じた。



寮長にお願いをした。
学校終わり、必ず此処を通ってマサの家に行くユウ。
此処の駐車場から、最後に其のユウの姿を見さして欲しいと。

今思うと恥ずかしいほど純情な発言。
自分がキショイ...



高松着。
見慣れた景色。
『一時保護所』の看板が無くなってた。
皆で落書きした思い出の看板...何処へ?

代わりに在ったのは『子供ハウス』の看板...

子供ハウスって...
なんなんそれ...

ニャンニャンハウス、ワンワンハウス...
子供ハウス...

ペットショップみたいな名前。
不信感を抱いた。


児相と女相は同じ敷地内。
女相=女性相談センター。

女性寮は子供ハウスの横。
女性寮の前には小さな公園。
保護所に居た時、悪さしてた場所でもある。

女性寮でのご飯は、自分達で作る。
メニューは決まってる。
材料を貰いに行く。
グラウンドを挟み、裏に在る県立教護院の横の炊事場に。


このグラウンドも保護所居る時ごっつ走り込んだ。
懐かしかった。

不思議と、皆と離れて淋しい感情は薄くなってた。
思い出のおかげかな...

それより職探し。
また自立する!

 
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