いつの間にかハイスクールD×Dの木場君?
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眷属、集めます
第24話
前書き
久しぶりに文字数が6000を超えた。
今回のお話は内容をちょっと詰め込んでます。
だけど、話が殆ど進んでないのってどういう事なんでしょう(´・ω・`)
「これで皆さん揃いましたね」
食堂に眷属の皆が揃ったのを確認して声を上げる。
「今回集ってもらったのは僕達『断罪の剣』のお披露目と若手悪魔に喧嘩を売りにいく打ち合わせです」
「おいおい、喧嘩を売りにいくのかよ」
アザゼルさんが呆れながら答えますが理由があるんですよ。
「ちなみに天使と教会の方でも堕天使の方でも同じ事をします。理由なんですが、前者の方は僕達の存在の公表と宣伝の為です。領地に無断で侵入する事もありますから存在を知られていないと面倒ごとが起きますからね」
「ああ、そうれは分かる。それで、後者の理由は?」
「後者の理由なんですが、天狗になっている若手の鼻を折る為です。血気盛んで感情で動く若手は何処の勢力にも存在しますから余計な被害を出さない様にする為の篩にかける為に喧嘩を売ります。それはもう実戦の様に汚い手を使いまくりますよ。まあ、レーティングゲームになるでしょうから反則行為も視野に入れた戦略で戦っていきますのでそのつもりで」
僕の言葉にルゥ以外の全員が引いていますが仕事と割り切ってもらいます。
「まあそれでも無理矢理戦おうとするのもいると思いますので先手を打って残党狩りを目的とした下位部隊を設立する許可をとってます。まあ既に僕の中でリストアップは済んでいるんですけど、本番に強い人もいるかもしれないのでそれをレーティングゲームで確認します」
出来ればサイラオーグ・バアルだけは確保したいんですよね。それからソーナ・シトリーと真羅椿姫、それからレグルスとアリヴィアンも確保出来れば安心して活動を独自に任せられるんですけどね。
「と言う訳で打ち合わせなんですけど、基本は僕が挑発しますから話を合わせたりたまにアドリブで煽って下さい。攻撃してきたら殺さない程度に反撃は許可します。沸点が低そうなのはリストアップして簡単なプロフィールもまとめてありますから参考にして下さい」
リストを皆に配ってしばらくした後、何人かが吹いて笑いを堪えていた。
「ゆ、祐斗さん、ふふっ、結構、根に持ってたんですね」
白音さんが笑いを堪えながらリストのとあるページを見せてきました。そこに書かれているのは、リアス・グレモリー。僕の元主だ。挑発するネタが多過ぎて逆に困る存在だ。まあ傍に居たからこそ分かることなんだけどね。
「客観的に箇条書きしているだけです。ええ、私情なんて一切入っていませんよ」
「私情が入ってないのにこれだけの事が上がる方が問題だぞ」
「色ボケに子供みたいな性格って、王としてどうなの?」
「紫藤さん達は人の事言えないでしょう。僕がガブリエル様に手紙を出していなかったら絶対に二人だけでコカビエルに挑んでいたでしょう?」
「さあ、なんのことやら」
「全然分からんな」
「棒読みありがとうございます。『断罪の剣』に居る限りそんな事はさせませんから。それはさておき何か質問はありますか?」
「オレから一つあるな。レーティングゲームに関する事だが、オレも出るのか?明らかに過剰戦力だが」
「もちろんです。僕も王として必ず出る必要がありますから。まあ基本的には陣地で僕と留守番になるはずです。場合によっては司令官みたいな役はやってもらいます。少なくとも僕よりは適正があるでしょう」
「まあな。これでも大戦を生き抜いてないぞ」
「僕は単独行動が基本でしたからね。傍で勉強させてもらいますよ」
「オレからはそれ位だな。ああそうだ、報告が遅れたが赤龍帝に元竜王のタンニーンを紹介した。今頃は龍同士で鍛えられてるはずだ」
「なるほど。なら、若干イッセー君の戦力予想を上方修正しておきますか」
軽く様子も見ておきましょうか。どういう鍛え方をしているのか気になりますしね。
「他に報告が無いようなら解散ですが」
特に誰も言うことが無いようですので解散します。さあて、今日の夕食は何を作りましょうかね。野菜の幾つかが痛みそうですから使い切らないといけないのですが、そのまま出すと紫藤さん達が押し付け合いをするのが目に見えていますから、この際冷蔵庫の整理の為に天麩羅にでもしますか。豚肉もこの前ブロックで購入したからかなり分厚いカツも作れる。確か明後日の特売で油も安かったはずですから反対する理由は無いですね。
「祐斗さん、手紙が届いてますよ」
下ごしらえを終えた頃、白音さんがキッチンにやってきてA3サイズの封筒とは別に持っている普通の便せんを僕に渡して来た。差出人を確認するとF・Sとなっている。
「おや?珍しい人からの手紙ですね」
中身を読んでみる。
「祐斗さん?」
「……すみませんが用事が出来ました。夕食なんですが、グリゼルダさんと一緒に天麩羅を用意して下さい。下ごしらえは済んでいるので後は、揚げるだけですので」
「何かあったんですか。その、もの凄く悲しそうな顔してますけど」
「……エクソシスト時代の知り合いの訃報です。顔、見てきます」
白音さんから逃げる様にキッチンから飛び出し、指定された場所に転移する。
指定された場所は寂れた港の一角にある倉庫だった。倉庫の中に入ると、積み上げられたドラム缶に背中を預けているフリードを見つける。
「……やぁ、鍛冶屋さんか。やっと来て、グゥッ!?アアアアアアッ!!」
急に苦しみだしたフリードに駆け寄ろうとする。
「フリード!!」
「来るな!!来ないでくれ!!もう時間がない!!」
だが、それを
「……分かった。だが、痛覚遮断の魔剣を受け取るんだ。正確な報告が欲しいから」
何かに苦しむフリードに痛覚遮断の魔剣を投げ渡す。魔剣を受け取ったフリードの呼吸が少しずつだが整っていく。
「すまねぇ、世話かけて」
「気にする必要は無いよ。さてフリード、君が手に入れた『禍の団』の情報を報告してくれ」
「『禍の団』は、戦力を欲してる。その為にかなりの規模の実験を行ってる。オレッちが掴めたのは、神器の強制禁手化と、人や天使や堕天使や悪魔を使ったキメラ製造、そして教会がやっている聖剣を扱う為の因子の移植。戦力として聖剣創造は少なくとも二人、内一人は禁手化している。それから魔獣創造が居る。オレッちが掴めたのは此所までで、不意打ちで身体をこんな風にされちまった」
フリードが神父服を魔剣で切り裂く。その下から現れたのは人でも悪魔でも天使でも堕天使でもない、何かの身体としか言えなかった。
「変なもんを植え付けられてから、そいつにこんな風に少しずつ浸食されて、自我を食い尽くされればキメラの完成さ。オレッちもそろそろ限界さ。だから、オレが人間であるうちに殺してくれ。化け物になんかになるなんてまっぴらご免さ!!」
「……それが望みなら、僕は友として君を殺そう、フリード・セルゼン」
苦しまない様に、一撃で楽にする為にカリバーンを作り出す。
「最後に聞いておくよ。何処に埋葬して欲しい?」
「……もう滅んじまったオレッちの故郷に、村の皆の墓があるのさ。ちょくちょく手入れはしてるから、今も綺麗に残ってる。家族の墓の、妹の墓の隣に。両親とはあまり仲が良くなかったから」
「分かった。必ず、そこに埋葬しよう。神への祈りは捧げないよね」
「オレッちからすれば神も化け物さ」
「ああ、そうだね」
カリバーンに魔力を通し、心臓に狙いをつける。
「さようなら、フリード・セルゼン。エクソシストの中で、最も人間を愛した者よ」
「さよならさ、木場祐斗。エクソシストの中でも最も変わり者で、己だけの神を信じる強い男」
別れの言葉と共にカリバーンをフリードの心臓に突き立てる。突き立てた瞬間に一度だけ身体が跳ね、そのままゆっくりと瞳から光が消えていく。
「おやすみ、フリード」
目を閉じさせて抱き上げる。昔、資料で見た事があるからフリードの故郷が何処にあるかは知っている。転移で故郷にまで跳ぶ。フリードの故郷は、一面に墓が広がる寂しい場所だった。あとで知ったのだがフリードの故郷は悪魔と天使の小競り合いに巻き込まれて滅んだようだ。
「フリードの人外嫌いはこの風景の所為なのでしょうね」
フリードの手作りと思われる墓を一つ一つ確認し、ようやく見つけたフリードの家族の墓は、他の人の物と同じ墓だった。フリードの妹の物と思われる墓の隣には丁度一人分のスペースが空いていた。そこに穴を掘り、収納の魔法陣から棺桶を取り出してフリードを寝かせる。あの世でも化け物と渡り合える様に聖剣と対魔弾の入った銃を持たせる。棺桶の蓋をして穴に棺桶を降ろして土を被せる。最後は十字を切る事もせずに他の墓と同じ様に近くに落ちていた石を墓石に見立てて名前を刻み込む。
フリードの埋葬を終えた僕はそのまま墓場を覆う様に結界を幾重にも張る。この地が二度と荒らされない様に、念入りに。全てが終わった頃には既に深夜の時刻であった。まあ、時差の関係上でまだ太陽が見えるけど。最後にフリードの墓に挨拶をしてから帰ろうと思う。
「フリード、君の仇は必ずそっちに送るから。仇は自分で取る方が良いでしょ?」
付き合いなんて殆どなかったけど、フリードならこういう風な挨拶が一番だと思う。
帰宅してとりあえずシャワーだけでも浴びようと思い門を潜ると、屋根の上で白音さんが膝を抱えているのが見えた。たぶん、手紙を渡してくれていた時に持っていた封筒、中身はたぶん情報屋からの黒歌に関しての報告で、それを読んだのが原因だろう。僕は翼を広げて白音さんの隣に降り立ちます。
「夏場とは言え、風邪を引きますよ」
僕の言葉に白音さんが驚き、距離を取ろうとして足を滑らせて、身体が宙に浮く。
「あっ」
「危ない!!」
いくら悪魔で戦車だとは言え、この高さから落ちれば怪我はする。打ち所が悪ければ最悪死さえ覚悟しなければならない。咄嗟に手を伸ばして白音さんを抱きとめて屋根から降り立つ。
「大丈夫ですか?」
「……はい」
抱きとめていた白音さんを放すと、白音さんはいつもより若干距離を離した位置に立つ。これは確実に僕が黒歌を殺すと思われてますね。まあ殺しますけど。
「何かありましたか?」
「…………祐斗さんにも言えない事です。これは私が自分で出さないといけない答えですから」
「……そうですか」
そう言われてしまえば僕が口出し出来る事ではありませんね。ですが、これだけは言っておきましょう。
「白音さんが何を悩んでいるのかは知りません。ですが、後悔する様な答えだけは出さない様に。僕が力を貸せるなら、いくらでも頼ってくれて構いません。昔から言っていますが、僕は聖職者です。それだけは忘れないで下さい」
これで伝わってくれれば良いんですけどね。この言葉の裏に隠された言葉が伝わっていれば、いえ、伝わっていて欲しいです。その答えは直前になった時に分かる。翌日からも白音さんとの距離が若干離れている。正確には白音さんが皆と距離をとっている。皆が心配しているが僕は白音さんの意思を尊重する様にとだけ告げる。
今日は若手悪魔達の会合の日。僕達は先にサーゼクス様達の席の後ろに待機している。登場の機会だが、それはすぐに訪れた。
「我々もいずれ『禍の団』との戦に投入されるのですね?」
「いいや、その可能性は低いよ」
その言葉と共にサーゼクス様の後ろから姿を現す。
「誰だ、貴様は?」
「はじめまして、サイラオーグ・バアル。僕は木場祐斗、悪魔と天使と堕天使、この三勢力の平和維持を目的として設立された独立部隊『断罪の剣』の王さ。『禍の団』は基本的に僕らが対処する事になっている。君たちが出る幕はほぼ無い」
「ああん?いきなり出て来てなんだ偉そうに」
「偉そうなんじゃない。偉いわけでもない。君との間に上下関係は一切無いだけだ。僕に命令出来るのは四大魔王の過半数の意思か、天使長か、神の子を見張る者総督のみだ。それ以外の命令を聞く必要も無いし、僕らに干渉する事は出来ない。君がグラシャラボラスの次期当主だとしても意味は一切無い。それこそ誰かの眷属でもない下級悪魔と同じ位にしかね」
「てめえ、なめんじゃねえ!!」
「舐めないよ。汚いじゃないか」
僕の挑発に耐えられなくなったゼファードル・グラシャラボラスが魔力弾を撃ってきた。おいおい、僕の傍にはサーゼクス様も居るのに、そんなに大きな魔力弾を撃ったら危ないよ。僕は空間接続の魔剣を産み出して放たれた魔力弾をゼファードル・グラシャラボラスの真後ろの空間に繋げる。魔力弾が消えた瞬間に背後からその魔力弾の直撃を受けたゼファードル・グラシャラボラスの両手両足にエクスカリパーを投げつけて床に縫い止める。
「サーゼクス様、ゼファードル・グラシャラボラスは失格でお願いします。この程度の挑発で周りが見えなくなるようなら邪魔にしかなりません」
「それは構わないが状況についていけていないようだ。説明をしてくれるかな」
「分かりました。それじゃあ説明するからちゃんと聞いてね。先程も言ったけど『禍の団』との戦には僕と僕の眷属で構成される『断罪の剣』が投入される。だけど見ての通り人数は少ないんだ。すでに『禍の団』を結構狩ってるんだけど、減った分だけ無理矢理戦力を増やす研究をやっているみたいでね。ならこっちも腰を据えて対処する為に予備部隊を作る事にしたんだ」
もちろん許可は取っている。まあ予算は殆ど回さないので使えそうな新人を集めてチームとして動ける様にしただけの部隊だ。
「将来的には残党狩りを任せる事になる。部隊を作って調子を見て、早ければ半年程で戦場に投入する事になるよ。ちなみに悪魔は悪魔で、天使は天使で、堕天使は堕天使で部隊を組む。その方がお互いやりやすいでしょう。活動区域なんかも種族ごとに分けてあります。その部隊の候補として今回は皆さんに集ってもらったのですが、早々に一人というか一組がリタイアです。此所までで何か質問はありますか?」
「質問良いだろうか?」
「どうぞ、サイラオーグ・バアル。ああ、敬語なんかは必要無いですよ」
「分かった。では、その下位部隊に入ると身分などはどうなる?」
「基本的には下位部隊所属と言う肩書きが増えるだけですね。この肩書きを政治に利用しようとしても殆ど意味を持ちません。勝手に勘違いする人はいるでしょうが、法的に力を持つ事はありません」
「なら、下位部隊に所属する意味は?」
「残党とは言え『禍の団』との戦闘が出来て、それが戦果として上層部に評価されます。ちなみに下位部隊に所属していない状態で、偶発的、自発的に『禍の団』と戦闘を行っても逆評価を受ける事がありますので覚えておいて下さい。特にリアス・グレモリーとソーナ・シトリー及びその眷属の方々は」
「私達が名指しなのは何故なのかしら?」
「色々と巻き込まれる要因があります。一つ目は赤龍帝が居ると言う事。昔から赤龍帝の周りは争いが絶えませんから。二つ目は駒王は今注目されている土地です。良い意味でも悪い意味でも」
「悪い意味?」
「良い意味は、三勢力での和平がなった土地です。後の歴史書にも記されるでしょう。悪い意味ですが、そんな土地で魔王様の妹が居ながらも一度は未然に防ぎましたが、既に大きな動きが二度も起こっています。その為に御しやすいと思っている輩が多いと言う事ですね。簡単に言えば管理不足です」
「なっ!?」
「最後、三つ目は僕達の人間界での拠点が駒王にあります。というか、僕の屋敷ですね。隠す気も無いので襲撃される可能性があります。まあ簡単に壊されたり占拠出来る様な代物じゃないですけどね。そこら辺はアザゼル元総督のお墨付きです」
「あの結界を抜いて屋敷に使われてる建材を傷つけれそうなのはサーゼクス位だな。最も傷ついても自己修復しやがるからやるなら結界の中枢ごとまとめて吹き飛ばす必要がある。それには大戦期の赤龍帝の一撃がいる。しかも結界の中枢とかをぶち抜いて占拠しようとしたら、別系統でコントロールされている防衛機構としてあの魔導書がバラまかれて一瞬にして廃人だ。オレなら絶対に敵にしたくないね」
「まあそういうことです。話を戻しまして、駒王は狙われやすいのでそこに住む以上巻き込まれるのを前提に動いて欲しいんですよね。変なことに巻き込まれたらすぐに退いて連絡、これが出来ないなら駒王から離れてもらった方が楽です。何時の時代も何かを守るのは難しいですからね。負担は出来るだけ軽い方が良いんですよ」
「つまり私達は足手まといと言いたいのね」
「ハッキリ言えばそうです。それは僕の眷属にも言える事です。足手まといにならない最低限のラインが鬼戒神を所有する事です。鬼戒神を所有すると言う事は外なる神々共に対抗する為の邪法を身につけると言う事です。その邪法を身につけるには素質が必要です。努力などでは絶対に覆す事は出来ません。ちなみに僕は素質的には最低ラインです。おかげで髪がこんな風に白くなってます。昔は綺麗な金色だったんですけどねぇ」
「待て、素質が最低ラインと言うことはそれほど強くないと言う事か?」
「いえいえ、邪法の力にどれだけ耐えれるかと言うだけです。威力に変化は無いです。威力が変化するのは扱う魔導書の質によります。僕の持つ魔導書はかなり質の高い物です。質が高いおかげで逆に何とかなっていると言っても過言ではないです」
「ちなみに耐えられないとどうなる?」
「廃人確定ですね。ですから、手を出そうなどと考えない様に。此所に居る皆さんに素質が無い事は分かっていますから。素質を持っていても精神的にねじ曲がる事が多い物です。触れないのが正解です。ねぇ、アザゼル元総督」
「うるせえな。とりあえず素質が無いのにちょっと足を突っ込んだ結果を説明するぞ。短気になって幻聴とかが聞こえてきてついでに光力も1割ちょい落ちた。現在治療中、完治に半年と言った所だ。ちなみに治療が可能なくらいの軽傷だったからこんな物だ」
「ちなみに僕は治療が不可能な軽傷です。元から力の無い人間でしたので髪の毛が変色しただけで能力や精神に以上は見られません。まあ、自覚症状が無いだけかもしれませんが。この話はこれ位にしておきましょう。詳しく話すには時間が足りませんから。話を続けます。この下位部隊ですが、若手の中からメンバーを選出します。これは悪魔の勢力が王とその眷属を一つの部隊として見立てて活動する事が多く、部隊のメンバーが異なると本来の力を発揮出来ない事があるからです。その為にまだ戦術などが確立されていない若手だけでの混成部隊を作ることになっています。そしてこの下位部隊へのメンバーの選出は既に終わっているのですが、あくまで書類上の情報だけで決めた物です。納得出来ない者も多いでしょう。なので此所に居る者達でのレーティングゲームの大会を開催します」
僕の宣言に若手の皆さんが驚く。
「今回のレーティングゲームの大会ですが、少し変わっています。まあ僕との試合の時だけです。僕との試合に関しては公式の勝敗には関係しません。大会的にはそれだけですが、僕との試合は下位部隊への入隊試験でもあります。他のプレイヤーとの対戦でどれほど活躍してもそれを評価する事はありません。一度限りのアピール会場、それが僕との対戦です」
「少し気になってのですが、よろしいですか?」
説明の最中にソーナ・シトリーが挙手をして許可をとってきた。
「どうぞ」
「先程、入隊試験と言いましたが強制なのですか?」
「いいえ、入隊の許可は出しますが、最終的には個人の判断で入隊します。もう一度言いますが個人の判断です。眷属へ入隊の許可を出さないと言う事は出来ません。まあ説得されて折れる程度なら入隊しない方が良いです」
「……分かりました」
「他に質問はありますか?無いようならくじ引きを行います。僕とのゲームを行う順番です。運も実力の内です。逸早く戦場に立つ為に早い番号を願うのか、それとも合格ラインを超える為の修行時間を得る為に遅い番号を願うのか。自分の願う番号を引き抜く強運は英雄の必須技能です」
普通のトランプを取り出して、それをよくシャッフルを行い、王達にカットしてもらう。それが終わればテーブルの上に置く。
「僕が引いたトランプに近い順番で試合を行います」
そして何の気重ねもなく一番上のトランプを引く。
「おや、ジョーカーでしたか。これは番外ですね。ですので引き直しですね」
ジョーカーを山の隣に置いて、今度は一番下を引き抜く。
「ダイヤの4ですね。さて、次は誰が引きますか」
「オレが引こう」
僕が尋ねるとすぐにサイラオーグ・バアルが答えた。僕はダイヤの4を持ったまま少し離れる。
「こんな物は変に考えない方が良い。引く、それだけだ」
サイラオーグ・バアルは山の一番上を引く。
「スペードの2だ」
続いてリアス・グレモリーが山の上からハートのJを、シーグヴァイラ・アガレスが山の中程からダイヤのKを引く。そして、最後にソーナ・シトリーがトランプへと近づく。
「木場祐斗君、いえ、君付けは失礼でしたか」
「構いませんよ。その程度の事は。何かありましたか」
「これを引かないと言う事は許される事ではないでしょう」
「そうですね。試合の順番を決めるくじですから、大会に出ないと言うのなら引かなくても良いでしょう。まあ、大会に参加する為のチケットがこのトランプです」
「私の夢を叶える為には大会に出ないと言うのは選べません。だけど、私の意志を示しておこうと思います」
そう言ってソーナ・シトリーは山の隣に置いておいたジョーカーを手に取る。
「私は、眷属の皆を戦場にはまだ立たせたくはありません。平和の維持に戦力が足りていない訳でもないのに私の眷属を危険にさせたくありません。番外であるジョーカー、これが私個人の答えです」
「ふ、ふふふ、ふははははは、いいね、凄く良い答えだ。大会に参加する為のチケットを得た上で僕のダイヤの4との距離が無い唯一のカードであるジョーカーを手に取る。だけど、さすがにそれを認めてあげるわけにはいかない。総当たり戦の大会だから試合をしないと言うのは認められない」
「ええ、だから意思を示しておきたかっただけです。ちゃんと引かせてもらいます。少しでも私の眷属が戦場に立つ確率を減らして」
そう言って今度はトランプの山を手に取って、そのまま表面を見ながらハートの4を選び出した。
「ハートの4、私達が一番最初ですね」
「それも良い答えだ。誰も表面を見てはいけないなんて言ってないからね」
つくづく、この人の元でなら僕は未だにただの悪魔でいられただろうと思う。柔軟な物の考えをする上で自分の矜持の見せ方を間違えない。同じ王として尊敬出来る数少ない悪魔だ。
「だけど、認められるのはここまでだよ。試合でわざと負けるなんてことやリザインなんて真似は許さないよ」
「分かっています。わざと負けるなんてありえません。むしろ勝ってみせます。私達ならそれが出来ると信じています」
力強く答えるソーナ・シトリーに眷属達の士気が上がる。これは引き抜けないでしょうね。残念ではありますが諦めておきましょう。
「正式な日付は後ほど知らされるでしょう。試合を楽しみにしていますよ」
用事は済んだので僕達はサーゼクス様達の後ろから退出させてもらう。他の皆さんはまだ何かあるらしいのですが、僕達はノータッチです。巻き込まれると天界とかでも似た様な事をしなければならなくなるので。
さて、次は白音さんのことを解決しないといけませんね。時間も少ないので急いで情報を精査しなければ。
後書き
次回、久々にまともな戦闘をやります。
場所はどこかの貴族が行ってるパーティー会場のお隣です。
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