緋弾のアリア 夢見る夜の物語
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一話 妖精の転校
前書き
お手柔らかにお願いします
「それで授業さぼって、女連れ回して、挙句妹に依頼までした久永。弁解するか?」
冷たい目で睨みながら綴は言う。ここは教務科の個室だ。
「特にする気はありませんが報告書に書いたとおり緊急事態のため仕方ないと思います。」
「それはぁ聞いた。それよりもまず、教師に一方入れるのが筋だろぉ」
更に冷たい視線が強まる。このままでは拷問モードになってしまう。
「本当すみません。少し生意気言いました。2度としませんのでどうか怒りを抑えてくださいませ。」
「わかればいい。」
そう言うと綴は後ろに立っているこなみに目を移す。
「で、その子が報告書にあった子か?」
「はい、何か怪しげな奴らに追われていたので保護しました。逃げている最中遠山くん達の事件にも巻き込まれました。」
顔を上げ言い終わるとこなみが服の裾あたりをつかむ。少し緊張しているようだ。無理もない今のやりとりから綴が相当恐ろしい存在であることを感じたのであろう。
「まあ、そんなに硬くならなくていい。とりあえず、そのフードをとってくれない?」
「あの、夢夜さん」
確認の視線を送ってくる。
「大丈夫だよ。一応信頼できる先生だから」
「一応は余計だ。評価下げるぞ」
「ごめんなさい」
こなみは一度頷くとフードをとる。
「ほぅこれは驚いた。まさか実在してたんだな。」
綴が驚きの表情を浮かべる。
「あぅ、あんまりジロジロ見ないでください。」
「エルフか、レアといえばレアではあるがこの子でなにをするつもりだったのだろうな。おい、久永」
「なんですか先生?」
「おまえの趣味かは知らんがその格好はないだろ」
改めてこなみを見ると綴の言葉の意味を理解する。同時に顔を赤くなる。今まで無我夢中で指摘されるまで気づかなかったがこなみの服は要所を隠しているがかなり目立つ拘束服であった。
「仕方ない。その辺のことを全部含めてお前に任せるわ」
やる気なさそうに綴は言う。本当に聞くこと聞いて終わりのようだ。
「全部って、何を全部ですか?」
「全部は全部だよ。護衛や生活の手伝い。話を聞いたのと今のその子の表情から嘘で無いことは確かだ。それに、今のところお前以外あまり信用していないみたいだしな」
「ま、任せるって。俺、一応年頃の少年ですよ!?」
「あー、お前にそんな度胸ないだろ?」
「そんなことないですよ。」
なぜか言い返してしまった。
「そうか、武貞が護衛対象を襲うか成る程。」
「ごめんなさい。しっかり、守ります。」
さっきから謝ってばかりな気がする。こなみはなぜか嬉しそうだ。
「ま、本当は、事情を知ってるやつは少ない方がいいと考えているし、余計な手出しは無用だろ。」
初めていいこといったような気がする。
「先生、報告書しばらく預かって置いてください。お願いします。」俺は頭を下げる。
「まー、構わんが。」
「ありがとうございます。あと、編入手続き書類もらえますか?」
「どうしてだ?」
「彼女が追われていたなら。当分一緒に行動した方がいいでしょう。それに武貞がわんさかいるここはある意味安全ですし。」
綴は少し考え。
「わかった」と言って書類を渡した。
購買により、こなみの制服を買い、服装、髪型を整えさせる。耳は京菱グループで開発された武貞ヘッドフォンでなんとか誤魔化した。効果は、主に周りの話をより聞こえるようにする集音器としての用途が高いらしい。周波数を合わせることで通常の耳と同じ役割を果たし、黒板をひっかく音などのノイズをシャトアウトしてくれる。こなみもつけるのが初めてのようで少し驚いていた。
しばらくしてから、教務科で暇そうにしていた高天原先生に話を通してもらいこなみを転校生という形でうちのクラスに編入させた。
遅れて登校した教室は少し騒がしかった。無理もない俺が別の事件に巻き込まれている頃、前代未聞のチャリジャックが起きていたのだから。もっといえば、Sランクの武貞が直々に動いたことが一番であろう。
高天原先生を先頭にして入る。先ほどからこなみは緊張してしまい、俺の手を離さない。高天原からは「あらあら仲がいいわねー」と流されたが。綴は、なぜか知らんがあの後消えた。何処かでさぼっているか。拷問でもしているのだろう。考えただけで寒気がする。
「はい、席についてー。綴先生は急な用事で来れないので代理で連絡に来ましたー」
クラスの視線が高天原に集まる。
「今日はなんと転校生が来ます。」
挨拶とともにこなみの手を引き教室へはいる。
辺りからは俺を罵る罵倒や雑言が飛び交う。それもそうであろう。今のこなみの姿はみんなの注目の的だ。
輝くシルバーブロンドがこなみを輝かせ。雪のように白い肌が儚さを、違う色の瞳がミステリアスを思わせる。更に、こなみ自信が緊張のために俺の背に隠れている。したがって、より一層保護欲を引き立てる。
そんなの御構い無しに高天原は言う。
「では、自己紹介お願いね」
「は、は、はひぃ!?…ぅぅ…はい」
俺も励ます。
「大丈夫か?」
「夢夜さんやっぱり無理です」
「がんばれ」
そういうと掴んでいる裾を強く握る。すると、今度は教室中から怒りのこもった視線が送られる。
「み、みなさん。はじめましゅて........初めまして。今日からみなさんと同じクラスになりました。ひ、久永 こなみです。よ、よろしくお願いします。」
なぜか教室中から称賛の拍手が湧く。
「じゃあ、久永さんの席は....もう決まってるわね。えーっと確か、霧崎くんの席。久永さんと変わってくれないかな?」
高天原先生が指名した霧崎の席は俺の隣の席だ。どうしてここまで気を回してくれるのだろうか。少し疑問だ。
「ええ構いません。むしろここまで清々しい。兄妹愛に感動したので喜んで変わらせてもらいます。」
そう言うと霧崎は直ぐ様荷物をまとめ後ろの席へと移った。
「悪いな、塔寺」
「気にするな久永。君と僕の中ではないか」霧崎は笑う。
こなみを連れ席に着く。
すると前の席の委員長が立ち上がり、振り向き。
「ねぇ、久永くんもキンちゃんの事件に巻き込まれたの?」
そう、俺の前はルームメイトの幼馴染だ。
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