ドリトル先生と伊予のカワウソ
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第三幕その六
「それ程は」
「間違いなく生きていますね」
「凄いですね」
「妖力を持った狐や狸は最早仙人に近いです」
「では仙人の様に」
「はい、長生きします」
それこそ途方もない時間を生きるというのです。
「ですからその狸もです」
「生きているのですね」
「それだけの狸ですから」
「会うことはですか」
「殿様は流石に代々お会いしていたそうです」
江戸時代のお話も出ました。
「松山藩の」
「流石に殿様になるとですね」
「そうです、仁左衛門さんもお会いしていたとこのことです」
「そうなのですか」
「あと噂ですが知事さんも」
今の時代では、というのです。
「代々お会いしているとか」
「松山の市長さんは」
「やはり。おそらくですが」
「お会いしていますか」
「そうだと思います」
「しかしですか」
「そうした藩や県、市を預かる人でないと」
とても、という口調でお話する加藤さんでした。
「お会いすることはです」
「ありませんか」
「滅多に。何しろ愛媛の狸達の総大将ですから」
それだけの狸だからだというのです。
「お会いすることは難しいです」
「そうなのですね」
「私も一度お会いしたいと思っています」
加藤さんは笑ってこうも言いました。
「しかしです」
「それはですね」
「まず無理です」
「左様ですか」
「まあお会い出来たら」
その時はというのです。
「凄いことですよ」
「そうなりますか」
「本当に僅かの人しか知りません」
「それ故にですね」
「私も一度お会いしたいと思っていますが」
それでもというのです。
「それがどうにも」
「出来ませんか」
「はい、残念なことに」
「言うならば伊予の狸さん達の領主様ですね」
先生はイギリスの例えから言いました。
「そうなりますね」
「そうです、先生のお国の感じでは」
「そうですか、領主様ですか」
「そうしたところです」
「それも侯爵位でしょうか」
「ちょっとそこまでは私には」
わからないというのでした。
「ピンときません」
「そうですか」
「ただ、何でも陛下から官位も授かっているとか」
「天皇陛下からですね」
「そうです、江戸時代に」
その頃の天皇陛下に官位を頂いているというのです、その伊予の狸の総大将は。
「四国それぞれの狸の総大将が官位を授かっています」
「確か稲荷明神が正一位ですね」
「そうです」
「では狸の総大将の方々も」
「何でも団三郎狸が正一位とのことです」
加藤さんはまずこの狸のことを話しました。
「公にはされていませんが」
「四国の狸で最も有名な狸がですね」
「はい、正一位でして」
「この伊予の総大将は」
「従一位です」
この官位に任じられているというのです。
「そこまでの方です」
「従一位ですか」
その官位を聞いてです、先生は加藤さんにしみじみとして述べました。
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