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ハイスクールD×D ~聖人少女と腐った蛇と一途な赤龍帝~

作者:enagon
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第2章 滅殺姫の憂鬱と焼き鳥の末路
  第30話 修行開始




 10日後。

 それがレーティングゲームの開催日時であり、言い換えればタイムリミット。昼間あのミラって娘が俺に攻撃しようとした時、反応は出来たけど対処は多分出来なかった。それだけ俺は弱い。アーシアを除けば俺は眷属の中で一番弱い。最初から本気で戦えばレイナーレにも勝てない。俺、完全に足手まといだよな。

 10日後のレーティングゲーム、部長のためにもなんとしてでも勝ちたい。あんなのが婚約者じゃ部長があまりにもかわいそうだ。そもそも親同士が決めた婚約者なんて古すぎる。結婚は好きな者同士でするべきだ。なのにあの焼き鳥ときたら部長を自分のコレクションの1つとしか思ってないんじゃないか?

 でもたった10日、俺に何が出来る? 毎日の早朝特訓だけじゃ絶対あいつら相手にはまともに戦えない。なら、ゲーム中はじっと隠れとくか? ……絶対嫌だ。俺だって部長を守るために皆と一緒に戦いたい。部長は明日からゲームに向けて準備するって言ってたけど……じゃあ俺は何が出来る?

 ……ああもう! 結局早朝特訓しか思い浮かばない! しょうがない、明日にでも皆に相談しよう。俺一人じゃ結局何も出来ないってことか。情けねえな、俺。

 なら今日はさっさと風呂入って寝るか。明日はいつもより早く起きて特訓前に体を暖めておこう。

 そう思い俺は風呂に入る準備をして下に降りた。脱衣所で服を脱ぎ浴室の扉を開ける。するとそこには

「あっ……」

「えっ……」

「なっ……」

 そ、そこには全裸のアーシアとその背中を流す全裸のレイナーレがぁぁぁぁぁ!! し、しまった! 色々考えてて風呂に誰か入ってないか確認してなかった!

 そ、それにしても2人ともいい体つきしてんな。アーシアはおっぱいがそこまで大きいわけじゃないけど全体的にほっそりしてて抱きしめたら心地よさそうだし、レイナーレはおっぱいが丁度良い感じに大きくてスタイル抜群だ。……って何俺は2人の全裸をじっくり観察してるんだ!? っていうか何で観察できてるんだ!? 普通こういう時って女の子のほうが悲鳴あげたりして観察する余裕なんて無いはずなんじゃ……ってちょっと待て。2人は一体どこ見てるんだ?

 俺は固まってる2人の視線を追って目を徐々に下に持って行くとそこには立派に起立した俺の……

「っておわぁ!?」

 俺は慌ててそれを隠す! 見られた!? 俺の大事なものが元気になってるの見られちまったか!? 俺は慌てて2人の顔を確認すると……2人共顔を赤らめて目をそらしてくれました。この反応、完全に見られたよな。うぅ、大きくなった姿なんて火織にも見られたこと無いのに……。と、とにかくこの場は早く退散しよう!

「ご、ごめん! 2人が入ってるって気付かなかったんだ! すぐ出るから!」

 そう言って俺はすぐさま振り返って風呂場を出ていこうとしたんだけど

「ま、待ってください!」

 ……はい? なんかアーシアに待ってくれと言われて腕掴まれたんですが。お、俺は一体どうしたらいいんだ? っていうかこのタイミングでどうして俺を引き止めるんだ?

「ご、ごめんなさい。男性のを見たのは初めてだったのでつい……。そ、その、ああいう風になるものなんですね」

 ごめん! もう俺死にたい! 純情なアーシアになんてもの見せちまったんだ俺は!

「い、いや俺こそ確認しないで入っちまったし……それにすまん。俺の方も色々見ちまった」

「い、いえ大丈夫です! 日本のお風呂のルールは皆さんにしっかり教えてもらいましたから!」

 ……はい? 日本のお風呂のルール? 今この場で適用できそうなルールが日本にあったか? 俺は記憶にないんだけど。……何か嫌な予感が。

「に、日本ではお風呂において親睦を深めるために……裸のお付き合いというものがあると聞きました。大切な関係になりたい人とするものだと」

 ……だ、誰だ! そんな素敵な、もとい間違った知識をアーシアに植えつけた野郎は! ありがとうござ、いや何てことしてくれてんだ!

「ア、アーシア! その知識は微妙に間違ってる! そのルールが適用されるのは同性間の時だけだ!」

「そ、そうなんですか!? ……で、でも私、それでもイッセーさんと深めたいです。私、イッセーさんとなら……!」

 なん、だと……!? それじゃあまるで俺のこと……、ってイヤイヤイヤ! アーシアは純粋なんだ! それに多分天然! そういう意味を込めてそんな事言ってるわけじゃない! アーシアは純粋に俺と仲良くなりたいだけなんだ! そうに決まってる!

「イッセーさん」

ギュッ

 ってアーシアが後ろから抱きついてきた!? な、生のおっぱいの感触が背中にはっきりと! さっきはあまりないなんて思ってごめんね! アーシアは立派なの持ってるよ! で、でもこのままじゃマズい! このままじゃ2日連続で俺の理性が! しかも今回は昨日の部長と違ってそういうのを期待されてるわけじゃないっていうのに!

「ア、アーシア! そういうことはほんとに大切な人と……! っていうかこの場にはレイナーレもいるんだし! っていうかレイナーレ! さっきから黙ってないでお前からもなんか言ってくれ!」

 レイナーレは好きな人がいるんだし俺なんかと裸の付き合いなんか出来るわけないよな!? だからこの際俺を殴ってでもいいから俺を追い出してくれ! 俺もそろそろ限界なんだ!

「あ、あんたがどうしても一緒に入りたいっていうんなら……一緒に入ってあげなくもないわ」

「……はい?」

「だ、だから! あんたには命を助けて貰ったし! おかげで今こうしてアーシアとも仲良くなれたし! だから……その……!」

「イヤイヤちょっと待て! いくらお礼をしたいからってそれはないだろ!? っていうかお前も好きな人がいるんならこういうことは……!」

「ま、まだそんな事言ってんの!? いつまで勘違いしてんのよ!? 私が、今私が一緒にいたいと思ってるのは……!」

 はい!? な、何言ってんだこいつ!? え、どういうこと!? 何が一体どうなってんだ!? こいつもう諦めたのか!? な、何で……!?

「と、とにかく俺は……!」

 とにかくここは一旦アーシアを振りほどいてでも脱出しないと取り返しのつかないことに! そう思って俺は足に力を入れて体を捻ろうとしたんだけど……俺はこの時失念していた。レイナーレがアーシアの背中を流していたということを。つまり2人は泡だらけで、アーシアに抱きつかれた俺も泡だらけで、極めつけに足元のタイルも全面泡だらけだということに。そんな状態で足に力入れたもんだから

つるっ

「うわっ!?」

「「キャッ!?」」

 ……当然すっ転んじまった。そのまま風呂場の外に転がり出ればいいものを、どういうわけかその場で半回転してしまい気づけば

ムニュ

「あん!」

「ぃゃぁん」

 2人の上に倒れこんじまい2人の胸に顔面ダイブ、さらに両手で2人のおっぱいを鷲掴み! 右のほっぺにはレイナーレの右おっぱい、左のほっぺにはアーシアの左おっぱい、右の手のひらにはレイナーレの左おっぱい、左の手のひらにはアーシアの右おっぱい!

「イッセーさん」

「イッセー」

 そう言うと2人はギュッと俺を抱きしめてきた!? そんなことしたら両頬のおっぱいが更に俺に密着して……! あっちもおっぱい、こっちもおっぱい。おっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱい!!!!

 お、俺は、俺はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!

「アーシアちゃん、夕麻ちゃん、バスタオルと着替え、ここにおいて……」

バサッ
 
 今の声……母さん?

 俺は急に冷静になった頭で状況を分析しつつゆっくり振り返ると……バスタオルと着替えを脱衣所に落とした母さんが目を丸くして俺たちの方を……

「お、お父さ~~~ん!! 孫が、孫が~~~! しかも2人よ~~~!」

 と言いながら母さんはリビングに走って行っちまった。それを見た俺はあまりのことに耐えられなくなり一目散に自室に逃げ帰った。







「いいか2人共」

 次の日の朝、一晩かけて何とか落ち着いた俺はアーシアとレイナーレを部屋に呼びつけて、お互い向い合って正座していた。

 「お風呂の裸の付き合いとは本来同性でやることだ。そもそも男に裸を見られたらもっと防衛的な行動をだな」

「でもイッセーさん」

 アーシア、何でそんなに不満そうな顔してんだよ。

「私、イッセーさんになら見られても。それにもっとお近付きになりたいんです」

「いや、その気持ちは嬉しいんだけどな? ほれ、俺も男だから、ああいう事されちまうと俺も我慢できなくなるというか……レイナーレ、お前もなんか言ってやってくれ。アーシアが悪い男に襲われる訳にはいかないだろう?」

 そう言ってレイナーレにも協力を仰ぐんだけど

「……私は構わないって言ったのに。あそこまでして何でダメなのよ」

 ってなんでお前までそんな不満そうなんだよ!

「ああもうとにかく! 昨日は俺が悪かったけども! それでもみだりに男に裸を見せたり! それから昨日みたいなことしちゃいけません!」

「ぷぅ!」

「むぅ!」

 ああもうだから何でこんな当然なことでそんな不満そうなんだよ! 一体どうしたら2人に納得させられるんだ?

「……あんたたち朝っぱらから何してんのよ?」

 って火織? いつも通りベランダを通って火織が窓から部屋に入ってきた。……ってレイナーレ、何だその黒い笑みは。

「火織、ちょっと聞いてくれる? 実は昨日……」

「おわあ!? ちょ、おまっ、何言おうとしてんだあ!?」

 俺は慌ててレイナーレの口をふさいだ! 何があっても昨日のことは、特に火織には聞かれる訳にはいかねえ!

「昨日? 私達が帰った後何かあったの?」

「な、何もない何もない! もうこれ以上ないほど何もなかったから安心しろ!」

「そ、そう?」

「そ、それよりも火織! こんな朝っぱらからどうしたんだ!? 早朝特訓にはまだ早い時間だぞ!?」

「あ、そうそう。忘れるところだったわ。部長から伝言、っていうか3人とも泊りの準備をしなさい。用意するのは主に服ね」

「「「泊まりの準備?」」」

「レーティングゲームまで学校休んで泊まり込みで修行の合宿よ」







 今俺達は部員全員揃って山を登ってる。なんでもここは部長の家の所有してる山だそうで、この山頂には別荘があるらしい。修行はそこを拠点に行うんだって。どうやってレーティングゲームに備えるか昨日まで悩んでた俺には渡りに船だ。これなら10日後まで戦えるようになるかもしれない。

 で、まあここまではいいんだが……この荷物は一体何なんだ。今俺と木場は部員全員の荷物を持たされて山を登ってる。俺の体よりはるかに大きいリュックを担がされてるんだよ。山の麓まで魔法陣でジャンプしてきて、これから別荘まで山を登ると思ったら

「男の子なら女の子の荷物を持って当然よね」

 なんて言って全員に荷物を押し付けられた。俺もそう思わなくはないけど……この荷物は多すぎだろ! いったい何が入ってんだ!? っていうかそろそろ体力が限界なんだが。隣の木場を見ると木場もいつもの笑顔が崩れ始めてる。汗もすごいな。実戦経験はこいつの方が絶対あるだろうけど体力に関しては今の段階でも俺の方がありそうだな。

「2人共、早くなさい!」

 ずっと前の方に行ってる部長が俺たちに発破をかける。

「部長さん、さすがに2人共辛そうです。手伝ったほうがいいのでは……」

「大丈夫よアーシア、このくらい私のかわいい下僕なら簡単にこなせるはずだわ」

 部長は俺達を過大評価しすぎです!

「イッセー、頑張る」

「祐斗も後輩に負けてるようじゃダメよ。まだ半分も登ってないんだから」

 俺達の後ろにいた龍巳と火織まで俺たちに発破をかける。でもさり気なく後ろからリュックを押してくれるから部長より万倍マシだよな。ほんと、俺の幼馴染は天使です。悪魔と龍だけど。

「そういや火織、ハァ、黒歌姉と、ハァ、白音ちゃんは、ハァ、どうしたんだ?」

「ああ、あの2人なら登山道から外れて山に入っていったわよ」

 ……何やってんだあの2人は? 猫又だから野生の本能が疼いたのか?

「何か失礼なこと考えなかったかにゃ、イッセー?」

「おわあ!? って黒歌姉!? 脅かすなよ! っていうかどこ行ってたんだ?」

「気配がしたから今晩のおかずにと思って」

 そう言って黒歌姉は手に持った戦利品を掲げてきた。それは

「イ、イノシシ?」

「そ、今夜はボタン料理で決定にゃ。あと山菜もいっぱい取ってきたにゃ」

 そう言ってイノシシを持つ手とは反対の手に持ったかごを見せてきた。その中には蕗の薹やタラの芽などの一般的な山菜から、見たこともない山菜まで山盛りだった。

「私はうさちゃんです」

 そう言っていつの間にか黒歌姉の横に並んでいた白音ちゃんが両手に持った合計4羽の兎を見せてきた。っていうか今から食べる兎をうさちゃんって……

「……何やってるのよあなた達」

 そんな2人を見た部長はそう言って顔をひきつらせていた。







「じゃあ各自部屋で着替えた後ここにもう一度集合、その後は修行開始よ!」

「「「「「「「はい!」」」」」」」

「「……」」

 俺と木場は疲れて返事ができなかった。っていうかあの後結局力尽きちまって荷物は火織と龍巳が代わりに運んでくれた。龍巳はまだ分かるとして何で火織は俺達と同じ元人間なのにあんな荷物持って平気な顔で山登れるんだ? もう何回目か分からないけどあえて言おう。絶対におかしい。どんな鍛え方したらあんなふうになれるんだ? 一体いつになったら俺は火織に追いつけるんだろうか……。

 とにかくまずは10日後に向けて修行だな。俺達も早く着替えないと。

「……なあ木場、生きてるか?」

「なんとか……ね」

「火織たち見てると悪魔ならあのくらいできて当然だと思えてくるんだけど……そういう訳じゃないよな?」

「あれを持って平気で山を登れるなんて悪魔でもなかなかいないと思うよ」

「……だよな」

 あいつらといるとだんだん自分のほうがおかしいんじゃないかと思えてくるぜ。

「はぁ……とりあえず着替えようぜ。部長たちが着替えて戻ってくる前に」

「そうだね……覗かないでね?」

「……悪い、冗談に付き合ってる余裕はない」

「……そうだね、今のは僕が悪かった」

 そう言って俺達は各自の部屋で着替え始めた。着替えるだけでもう体力の限界だよ。案の定それは木場も同じだったようでなんとか着替え終わった後2人揃ってリビングに戻るともう既に部長たちは全員着替え終わって揃っており、着替えの遅かった俺と木場はお叱りを受けた。


 
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