ハイスクールD×D ~聖人少女と腐った蛇と一途な赤龍帝~
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第2章 滅殺姫の憂鬱と焼き鳥の末路
第28話 串焼き
「~♪」
今私は上機嫌に鼻歌を歌いながら部室に向かってます。上機嫌な理由は簡単、差し入れを買いに行ったお店でいつもいっぱい買ってくれるからとおまけしてくれたんだよね。もともと今日はお客さんも来るから多めに買っていたんだけど、おまけもあって結構な量になっちゃった。差し入れは今日来てるであろう方々に合わせて洒落の効いたものにしてみたんだ。どうせギスギスした空気になってるんだろうし少しはこれで空気が和むといいな。ちなみに差し入れが何かはまだ内緒。
どうでもいいけどライザーとその眷属たちが押しかけてくるのって今日だよね? 昨日部長とグレイフィアさんらしき人がイッセーの部屋に現れてたし、その次の日がライザーが来る日でいいんだよね? なにぶん原作読んだのがもうそうとう昔だからおおよそのことは覚えててもこんな細かいことは覚えてないんだよね。……今日来てなかったらどうしよう? さすがにこの量は多いかも……ってその心配はないか。龍巳と白音がいればすぐなくなっちゃうわね。でも夕飯前だし龍巳はともかく白音には食べ過ぎないように注意しとこうかな?
さて、そんなことをつらつら考えてる内に部室に着いたわね。あ~、やっぱり部室の中からは不機嫌オーラがするわ。部屋の中の人数からしてライザーの眷属も全員来てるわね。早くしないとせっかくの差し入れも冷めちゃうしさっさと部室に入って皆を宥めますか。
私はそう思いドアの取手に手をかけるんだけど……え? 開かない? っていうか取っ手が動かない? 何これ!? 鍵がかかってるわけでもないしもしかして結界!? え? 何? 私だけ閉め出し喰らってるの!? ちょっとそれ酷くない皆!? それとももしかしてグレイフィアさんの仕業!? 部外者の介入を防ぐためなんだろうけど私関係者ですよ!? それともまだ私が来てないことグレイフィアさんに言ってないの!? ……ぐすっ、そっか、私っていらない子なんだ。せっかく場を和ませようと思って差し入れまで買ってきてあげたのに……。もう私、このまま帰っちゃおうかな? それで1人でこれのやけ食いでもしてようかしら?
そんなことを思って落ち込んでいたら……部室で殺気が膨れ上がった!? え!? この殺気って……黒姉と龍巳、それに白音の!? 他にも何人かの殺気がするけどそれが何人なのか分からないくらいこの3人の殺気が大きい! え!? いったい中で何が!? っていうか3人とも誰かを殺そうとしてる!? ああもう何やってんのよあの娘たち!? しょうがない、こうなったら!
ズバンッ!!
……あ、ヤベ。しくじった。
ズガァァァァァァァァァン!!
……扉だけ斬り裂くつもりが思わず力入っちゃって廊下に面した壁一面切り裂いちゃった。壁一面崩壊しちゃってすっごい埃が舞っちゃったよ。部室の中が見えないや。……壁に誰か背を付けて立ってたりしてなかったよね?
そして埃が晴れて部室の中の様子が見えてくると……なんというか予想通りグレモリー眷属とライザー眷属は部屋の左右に分かれて対峙してるわね。で、殺気をさっきまで放っていた黒姉に龍巳、白音は両手に良くないものを纏わせた状態で今にも飛び出そうとしているわ。で、それに対して後ろの方にいるメイドさん、たぶんグレイフィアさんも動こうとしてるわね。わぁ、グレイフィアさん初めて見たけどすっごい美人。
で、そんな一触即発な状態の中皆の顔はこっちを向いていて、目が点になってるわ。これだけの面子が揃って同じような呆けた顔してるとなかなかシュールね。……どうでもいいけどそろそろ誰か話しかけてきてくれないかしら? さすがにいつまでもこうして注目されてると恥ずかしいんだけど。もしかして私から話しかけなきゃダメなのかな? 何時まで経っても誰も話しかけてくれないし……分かったわよ私から言えばいいんでしょ言えば。
「私一人閉め出すなんて酷いじゃないですか!」
『ってこの状況で言うことがそれ!?』
「えぇ!?」
なんか全員に異口同音で突っ込まれた!? それ以外なんて言えばよかったの!? っていうかグレイフィアさんにまで突っ込まれた!? あなたもっとクールなキャラじゃありませんでしたっけ!?
「火織、あなたどうしてこんな事をしたのかしら?」
なんか部長がこめかみを抑えながら聞いてきた。
「いえ、私もこんな事しようと思ってしたわけじゃないんですよ? 部室に来たらドアが開かなくてどうしようかと思ってたら中から殺気を感じたんで急いで入らなきゃと思って」
「それでどうして壁一面破壊することにつながるのかしら……?」
「ドアが開かないんでドアを斬って入ろうとしたんですけど……つい力入れすぎちゃって思わず」
「……壁一面斬ってしまったと?」
「……はい」
はぁ、となんかオカ研全員にため息つかれちゃった。なんか皆疲れたような顔でこっち見てくるし、ちょっと酷くない? っていうかアーシアにまでそんな反応されるとお姉さんショックよ。一方ライザーたちはなんか信じられないものを見るような目でこっち見てるわね。なんて失礼な。
「あの部長、それでこの方々は?」
そこで部長が口を開こうとするとその前にグレイフィアさんが出てきた。
「初めまして。私、グレモリー家に仕えるメイドのグレイフィアと申します」
「あ、これはどうもご丁寧に。初めまして、リアス・グレモリー様の騎士、神裂火織です」
向こうが会釈してきたのでこちらも会釈して返す。なんか意外なものを見たような顔されたんだけど、もしかして最低限の礼儀も知らないように思われてたのかな? そうだとしたらなんて失礼な。
「……そしてこちらがお嬢様の婚約者、ライザー・フェニックス様です」
「へ~、部長婚約してたんですね」
「婚約させられてたのよ」
「あれ、そうなんですか?」
部長不機嫌ね。無理ないと思うけど。とりあえずまだ呆けてるライザーにも挨拶しておきますか。私はライザーの前まで行き会釈する。一応初対面なので顔も笑顔で固定。
「初めまして、リアス・グレモリー様の騎士、神裂火織です。以後お見知りおきを。あ、これ今日の差し入れで買ってきたんですけど良かったらどうぞ。ここの美味しいんですよ?」
そう言って私は両手で抱えていた紙袋からプラスチックパックを1つ取り出しライザーに差し出す。
「!」
その中身は……焼き鳥。そう、私が行きつけの焼き鳥屋さんの焼き鳥。ここの本当に美味しいのよ? それに相手はフェニックスだから洒落が効いてるでしょう? ってあれ? なんかライザー、受け取らずに肩を震わせてるけど……笑いのツボに入ったのかな? だとしたらこの差し入れは大成功だね。これでこの場の空気も和m
「巫山戯るな!」
バシッ!
「あ!」
ライザーは私の差し出したパックを手で弾き飛ばし焼き鳥は床に散乱した。
「貴様ら、どこまでも俺をコケにしたいようだな」
あ、あれ? 私ハズした? せっかく場を和ませようとしたのに。っていやいや、今はそんなことより……今こいつ何をした?
「いいだろう、ならばこの場で」
私の後ろでオカ研の皆が戦闘態勢に入っているみたいだけど……今問題は目の前のこいつよ。
「まとめて全員」
食べ物を粗末にするような人は
「燃やし尽くゲボァ!?」
『な!?』
……お仕置きが必要ね。
私は手に持っていた焼き鳥の入っている紙袋を後ろの黒姉に向かって放ると、壁を斬り裂いた後腰に挿していた七天七刀を瞬時に抜き放ちライザーを刺し貫いた。フェニックスは不死身だしお仕置きするならこのくらいしても構わないよね? ちなみにどこ刺したと思う? 腹? 胸? 喉? 口? 答えは全部よ。股下から切先を差し込んで口まで貫通させてやったわ。そのまま股下から持ち上げるようにして全体重が刀のみにかかるようにする。ライザーは……股下と口の刀が刺さってるところからチョロチョロと炎を漏らしつつ痙攣してるわね。でも意識はありそうだしこのままお説教しましょうか。
「ライザー様、ライザー様? あなたがなんでそんなに怒っているのか私には分かりませんが……食べ物を粗末にするとはどういうことでしょうか? 上級悪魔といえど食べ物を粗末にしてはいけないということくらい親に習っていますよね?」
今私とてもいい笑顔が出来てると思う。
「な、な……」
「ライザー様!?」
「き、貴様! ライザー様を離せ!」
ライザーの眷属たちが何人か向かってきた。う~ん、今お説教の最中だから相手にする暇ないんだけどな。離すわけにもいかないし。こういう人って捕まえてないと説教なんて絶対聞かないもんね。なので私はそちらに顔を向け
「何か?」
と満面の笑顔を向けてみた。
「ひっ!?」
「うぁ……」
「あ、あの……」
「……なんでも、ありません」
皆素直に引き下がってくれたわね。うんうん、お姉さん聞き分けのいい娘は大好きよ。
ガタガタガタガタ
あ、あれ? なんか後ろからも震えてるような音がするんだけど? 私はちらっと背後の皆の方に目を向けてみるとそこには……ガタガタ頭を抱えて震えている龍巳とイッセーがいた。え? どうしたの?
「イッセー!? 龍巳!? あなた達一体どうしたの!?」
「あ~、部長。心配ないにゃ。多分2人共トラウマスイッチが入っただけにゃから」
「トラウマスイッチ……ですか?」
「あらあら、それは大丈夫なのかしら? といいますか何故急に?」
「……多分今の火織姉様が母様にそっくりだからです」
「この2人って昔結構好き嫌いが多かったにゃ。子供の頃はそれでも許されてたらしいにゃけど、私達が引き取られて好き嫌いがにゃかったから、お母さんがこれは良くないと思って2人を叱りつけて好き嫌いを無くさせたにゃ」
「黒歌さんと白音ちゃんは好き嫌いがなかったのかい?」
「私たちは引き取られるまで行き倒れるくらい食に困ってましたから、好き嫌いする余裕がなかったんです」
「あんたたちも苦労してたのね」
あ~、あの時のこと思い出しちゃったのか。確かにあの時のお母さんは怖かったもんね。2人して終始大泣きしてたし。でもイッセーがそれ以降好き嫌いがなくなっておばさんは大喜びしてたっけ。って今は昔を思い出してる場合じゃなかったわね。これからライザーには食べ物がどんなに大切かをあの時の龍巳やイッセーと同様しっかり覚えさせないと。
「お待ちください」
あれ? 今度はグレイフィアさん?
「神裂様、剣をお治め下さい。これ以上の無礼は承知し兼ねます」
そう言うとグレイフィアさんは特大の殺気を放ってきた。確かにこれは私じゃ勝てないわね。準備する時間がなかったら一瞬で殺されちゃいそう。
「どうしても、ですか?」
「ライザー様はフェニックス家の方でありグレモリー家次期当主の婿殿であらせられます。無礼は許されません。直ちに剣をお治め下さい。さもなくば」
そう言ってグレイフィアさんは一歩前に出ようとするけど……次に私が言った言葉で足を止めてしまった。
「本当にいいんですか?」
「……どういうことでしょうか?」
「フェニックス家といえば大戦以降台頭してきた家。その結果それをよく思わない家から成り上がりと揶揄されたりもしていますよね。そんな中その家の出の者が魔王を輩出した家と縁戚関係になればこれまで以上に風当たりは強くなるでしょう。そんな中グレモリー家に婿に来た者がこんなに非常識ではフェニックス家の風当たりが更に強くなるでしょうし、こいつをここで躾けておかなくては将来グレモリー家もこんな相手を次期当主の婿に選んだのかと馬鹿にされますよ? もう一度聞きます。本当にいいんですか?」
その言葉を聞いたグレイフィアさんは一見無表情だけど……そうとう心の中で葛藤してるわね。そしてしばらく考えた後グレイフィアさんは殺気を収めた。
「……この場はお任せします」
『グレイフィア様ぁ!?』
こいつの眷属の娘達が絶望したような表情で叫ぶけど、グレイフィアさんは知らんぷり。そりゃ将来自分の仕える家が被害に合うかもしれないと思えば引き下がるよね。こいつは自分の義弟になる人でもあるんだし。
……さて、じゃあグレイフィアさんのお許しも出たところで目の前で情けなくもまだ痙攣している男に食べ物がいかに大切なもので、粗末にすることがどれだけ罪であるかしっかり教え込みましょうか。
時間にして約1時間、私はみっちりライザーに食べ物がいかに大切であり、また人々の努力の上に成り立つものであるかをしっかり教え込んだ。さらに食べるということは命を奪うということであり、それを無駄にするということがどれだけ命を冒涜しているかということも教え込んだ。最後にはライザーも目に涙を浮かべ、震えるほどいかに自分が愚かなことをしたのか分かってくれたみたいね。お姉さんは嬉しいわ。
で、終わった後ライザーを床に降ろして刀を抜こうとしたんだけどなかなか抜けなかったのでしょうがないからライザーを真っ二つに斬って刀を取り出した。縦に真っ二つになったライザーは切り口から炎を吹き出し再びくっついたんだけど……くっつくまでやけに時間がかかってたような気がする。疲れてるのかな?
「ねえ火織、それ神器で創りだしたものなら普通に消せばよかったのではないの?」
「……あ」
部長が若干顔を青くしながら言ってくることに私はびっくりした。確かにわざわざ抜き取る必要なかったかも。……まあ誰にも被害はなかったんだしあまり考えないようにしよう。とりあえず私は復活しても床にへたり込んでいるライザーの元まで行き話しかける。
「さてライザー様、ご自身で汚された床はちゃんとご自身で綺麗にしてくださいね?」
そう言って私は床に散らばった焼き鳥を指さしながらとびっきりの笑顔を向ける。
「な、何故俺がそんなこt『チャキッ』分かった、やればいいんだろ」
うん、素直ないい子はお姉さん好きですよ?
「ラ、ライザー様、私も手伝います」
「わ、私も」
何人かの眷属の娘達がそんなライザーをこっちを伺いつつも手伝おうとしていた。……そんなにこっちを警戒しなくても手伝うくらいなら私も何も言わないわよ。さて、ライザーが片付けをしている内にもう一つの要件を済ませちゃいましょうか。私は皆の方に振り返り
「黒姉、龍巳、白音」
3人のバカたちの名前を呼んだ。呼ばれた3人はビクッと肩を震わせた。そして私はそんな3人に
「正座」
と一言言うと、その一言で3人は一瞬で私の前で床に正座して並んだ。うん、最近怒られるときの反応速度が上がってきたね。お姉ちゃん嬉しいよ。
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