美しき異形達
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第十七話 最後の少女その四
「あたしは稽古とか手合せはしたいと思ってるけれどな」
「それでもね」
「ああ、無意味な戦いはするなってな」
薊は茶を飲みつつ鈴蘭に話す。
「師匠に言われたんだよ」
「貴女の憲法のお師匠様ね」
「ああ、横須賀にいるな」
「いい人みたいね」
「人格者って言ってもいいな、少なくとも暴力を振るったり他人に強制させて自分はしないとかいう人じゃないよ」
「そういう人はいるわね」
裕香は薊が今言った様な輩について眉を顰めさせて言った。
「奈良にもいたわ」
「何処でもいるんだな、そういう奴は」
「奈良だと学校の先生に多いのよ」
「本当に奈良県って変な先生多いんだな」
「暴力振るってもお咎めなしだから」
これが本当のことだから恐ろしい。
「普通懲戒免職だけれどね」
「生徒を床の上で背負い投げしても何も言われないんだよな」
「そうなの」
「普通の世界じゃクビだな」
薊は断言した。
「絶対に」
「そうよね、普通はね」
「奈良県って凄いな」
「学校の先生はね」
「そういった奴でもクビにならないなんてな」
「言葉の暴力も凄い人多いの」
つまり生徒をどれだけ傷つけても何も責任を問われないのである。暴力を好きなだけ振るいたければ奈良県の教師になればいいということだろうか。
「だから奈良県の先生、特に公立の先生には気をつけてね」
「洒落になってないからか」
「そうなの、物凄い暴力振るう人いるから」
「体罰じゃないよな」
「生徒を床で背負い投げとかはね」
ここまでいくとだとだ、裕香も言う。
「違うでしょ」
「絶対にな」
薊もそれは、と言い切った。
「そんなの何処が体罰なんだよ」
「体罰も問題視されてるけれど」
「そういうのは完全な暴力だよ」
「私も高校に入ってわかったのよ」
そうした教師が問題であることは、というのだ。
「奈良にいたらそれが普通って思えるのよ」
「そんな暴力がまかり通ってもかよ」
「そうなの、先生は暴力振るってもいいって」
「人は今そこにいる環境が普通だと思うのよ」
鈴蘭もこう言ってきた。
「貴女がそう思っていたのも当然よ」
「それが私のいた場所だったから」
「ええ、けれどね」
「暴力は駄目よね」
「例え何があってもね。ましてや」
「まして?」
「大抵教師の方が体格があって力も持っているわ」
この場合は腕力だけでjはない、権力もだ。教師は生徒を教える立場でありそれ自体に権力が存在している。
「その弱い相手に暴力を振るうことは」
「問題外よね」
「人間失格よ」
そこまで至っているというのだ。
「教師以前にね」
「自分より弱い相手に暴力振るうってな」
薊も顔を顰めさせて言う。
「そんなのあたしは出来ないな」
「それが普通の人よ」
鈴蘭は薊にもこう言った。
「少なくとも貴女は暴力教師とは違うわね」
「暴力は弱い奴が使うってな」
真剣な顔でだ、薊は鈴蘭にも言い切った。
ページ上へ戻る