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『自分:第1章』

作者:零那
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『陸上』

今度は陸上競技大会、駅伝、四国大会に向けて走り込む。

ソフトテニスより遥かにマシ。
走るん好きやし。


いろんなメニューがある。
まず、走る前に、体操、筋トレ、マッサージ。
其れをシッカリ覚える。

坂ダッシュ。
短距離。
長距離。
施設内コースは平坦な道じゃ無いからバランス感覚まで問われる。
施設外コース。
何Kmコースかによって道が違う。
他にも色々あった。


零那は、保護される前、島の中学居った時に、掛け持ちで陸上部にも入ってた。

基礎はカナリ仕込まれてた。

其れが生かせるのか。
楽しみで仕方無かった。


それに、男女一緒。
中学生はいつも一緒やけど零那は違う。
着替えた順からグラウンドに集まる。
皆が揃うまでは、少し自由に話せる時間がある。
5分位のもんやけど。


普段話す機会が少ないから、色んな子と話せるのが刺激になる。
新発見があったり、思わず励まされたり、話してみると、実は皆、何気に素直で純粋だったりする。

普通に良い子としか思えんかった。


汚い大人達のせいで歪んでしまったんやろぉな...

世間に後ろ指さされてる此の子達は、実は世間からの被害者なんやろぉな...


そんな気がした。




とりあえず、それぞれのコースのタイムを計る。


零那は長距離持久走でも最初から飛ばす。
体力温存やら何やらは無理。
まわりくどくて嫌。
最初からトバして抜かれんようにキープすれば良いだけ。


そんなやり方やから当然職員から注意を受ける。
でも負けず嫌いな性格は職員も充分承知だった。

自分のやり方を変えずに結果を出せば良いだけ。
素直に聞き入れるか、自分のやり方でいくか、その時のルートや体調で判断する。


職員曰く、零那の走りは無茶で不安定らしい。
フォームどうこうでは無くて、ムラがあるらしい。
自分では解らん。

それに、体力温存しながら、抑えながら走るとか、そんなん無理。
何より、保護されて暴れて以来、抑圧されることが無理になった。
其れ迄は散々抑圧されてたから、反動?
単なる反抗期とかってもんじゃ無い。


やから、短距離だろうが長距離だろうが足が動く限りは全力で走る。
意地でも自分の弱さには負けん。


でも、自分より早い子は何人もおった。
男は勿論、女も。
此処で何年も走ってるなら遅い子は居らん。


此処で1番早い子の走りは、超すばしっこい感じがした。
無駄な動きや縦揺れが一切無い。
衝撃だった。
技術は盗もう。



毎晩イメトレ。
毎朝の裸足マラソンも、タイムばっか縮めることしか考えてなかったけど、変えた。
早い子の走り方を見て学ぶ。
で、盗む。
真似できんことも勿論ある。
其処は自己流で。

無駄な動きは無くせれる。
不安定さってのが解らん。
...リキみ過ぎ?

試せることは試す。
時間が許すなら朝は5周以上走ってた。
自己開発の為に。

何をしたら良くなるんか、陸上担当の職員にも聞いた。

日によって、早い遅いの差があるのは何故か逆に聞かれた。

毎日気持ち的には真剣やし同じつもりなんやけど。
自覚なし。
確かにタイムが落ちたり上がったり、おかしいこともある。
落ちたときは、やっぱり悔しい。

その職員曰く、零那には抜けそうにないライバルが必要らしい。
良く見てくれてた。
タイムが落ちた日は、決まって大体早い子が前に居らんとき。
タイムが上がった日は、決まって大体早い子が前にいるとき。

なるほど。
納得。
しっくりきた。

前に居たら抜きたくなる。
後ろに居たら抜かれたくない。

まさに負けず嫌いなんがそのまんま表れてる。

不安定の答えが解った。

早い子が前に居ても居なくても、同じ気持ちで走らなあかんってことやんな...
難しい。



大会が近付いて本格的に走り込み。
ソフトテニスの時も、何Kmも走ってたから辛いとかは無かった。

基礎体力や筋トレ関係は自信あった。
それでもたまに足つったり横腹いたくなったり。
で、1回過呼吸なって大したこと無いのに騒がれた。

過呼吸を知らん子は『シンナー吸いよる』とか言うし。
ビニル袋、零那も嫌い。
臭いし尚更辛くなる。

紙袋無いなら両手で覆う方がマシ。
ただ、酷いときは震えたりチカラ入らんかったりやから、自分の手で覆うのは無理やけど。

走ってて過呼吸なるのは初めてだった。
何も考えん様にしてたから、そぉゆう過去とか精神面じゃ無くて、単純に体が限界やったんかな?


個人練習も、時間見つけては必死でしてた。
いつの間にか女で早い子は遅くなってた。
てか、やる気が無い。
手ぇ抜いてる。
こぉゆうの苛つく。
卑怯とさえ思う。

早かった子が遅くなるわけ無いやん。
体調が悪くないなら必死でせぇやって思う。
そんな簡単に自分に負けてどぉすんぞって思う。


そりゃ苦しい。
足止めたい。
そんな時もある。
なんぼ走るん好き言うても疲れを知らんワケじゃ無い。
でも、諦めるのは誰でも速攻やけど、やからこそ粘らなあかんやろ?
限界迄。



諦めたら終わり。
粘れば何かが変わるキッカケになる時もある。
自分自身も少しずつ強くなれる気もする。
自分に負けん自分になりたい。
零那は、とりあえず強くなりたい。

『強く、逞しく、自分らしく生き抜く』

其れが人生目標やから。


大会。
駅伝は優勝。
個人でも区間賞。


満足。
とはいかんかった。
やりきった。
ともならんかった。

アンカーに渡すとき、もっと差を開けたかった。
心残り。
次の課題やな。
マダマダ、甘かったな。
もっとやれた筈。
もっとやりたかった。

でも、やっぱり走るのは好き。
次は...無い。
あったら困る。
時期的に。
18歳には出所せな。
自立しとかな。
焦る。
やりがいとか感じとる場合ちゃうし。

変に慣れてしまった。
一向に自立に向かって動かんから。
同じ事言い合うのも疲れたし。
期限は18歳。
いずれ動くやろ。

そんな感じで作業や陸上にやりがい感じてしまってた。
御飯と風呂の時間は相変わらず零那にとっては拷問時間やったけど...


陸上が終わればまたソフトテニス。
もう正直やりたくない。
ずっと走ってたい。
早いグループの男を抜かすのは無理。
まぐれで1回僅差で勝ったけど...要らん優しさ。



零那が走り足らんのは職員も解ってた。

一般の、市のマラソン大会とか出場さしてくれた。

いきなり飛ばすなよって言われても最初から飛ばしてしまうのが零那。
優勝すれば文句言われんし。
意地でも抜かされん様に必死になる。

何十年と走り込んできたプロ達のグループ。
体格的にも不利。
勝ってるのは若さくらい。
あとは...意地のみ。

合図とともにダッシュ。
差を出来る限り広げる。
少なからずペースが落ちるのは当然。
それでも後ろは見ん。
足音や気配で察知できる距離に来ささん。

それが基本の目標やから。


職員は、今回は絶対優勝は無しだと思ったらしい。
無茶苦茶すぎるって怒られたし。
でも、結果は優勝。
タイムも新記録。


ごっつい嬉しかった。

職員もビックリしてる。


さぁ、次はどぉしよぉか。

 
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