銀河英雄伝説小話
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ナイトハルト・ミュラーの災難Ⅱ
「こ、これは…!?」
箱の中身を見たミッターマイヤーとビッテンフェルトは絶句した。
「ん、どうした?」
と、ルッツやワーレン、ミュラーと次々に箱がまわされる。もちろん、箱の中身を見た者は揃って顔色が悪くなっている。
「あの…そんなに酷いものが入っていたんですか?」
とヘネラリーフェは箱の中を覗こうとする。
「フロイラインは見ないほうが良い。」
と、ルッツがさりげな~くカバーしようとする。が、それは金銀妖瞳の超サディストによって阻止された。
「ほう、クレメンツ教官は大変興味深い物を届けて下さったな。」
「こういう時だけ面白がるなロイエンタール」
と、ミッターマイヤー。
「卿らが隠したいのはこれか?」
「ちょ、待てっ!!!!!!!!」
ロイエンタールは情け容赦なく、次々に箱から物を出す。ヘネラリーフェは取り出された物を見て、目を瞬かせた。
数冊の雑誌、そしてメモリにカメラ。それだけである。
「これに何か問題があるのですか?」
(((((大有りだっっ!!!!!!!!)))))
ヘネラリーフェの無邪気な質問に、心の中で突っ込むワーレン達(無論、金銀妖瞳を除く)。
「フロイライン、問題があるから彼らはこのような態度を取るのですよ。」
と、優しく丁寧に教えるロイエンタール。
「確かに、そうですね。」
((((おい、ロイエンタールが猫被ってるぞ!?)))))
そして、混乱状態にさらに追い討ちをかける言葉をヘネラリーフェは発した。
「でも……これはただの本ですよね?(表紙はいたって普通)問題があるようには見えないんですが…」
(((((マジかよ!!!!!)))))
ヘネラリーフェのその言葉にワーレン達は顔を見合わせる。
(おい、この状況でも分からないのか?)
(どう考えても、すぐに分かる気がするぞ)
(分からん女は初めて見た…)
(今まで何教えてきたんだ、ミュラー)
(教えるって何ですか教えるって)
(まあ、ミュラーの妹だからあり得るか)
(どういう意味ですか!それは?!)
(そのまんまの意味だ)
流石、天下の名将達。以心伝心の技術も高い(?)
そんな中でも、ヘネラリーフェとロイエンタールの妙な会話は続く。
「そんな変な物何ですか?」
「まあ、ある種の男にとっては必需品でしょうな。」
「ある種の?」
「ええ。」
読者の皆様はもうお分かりだろう。これはいわゆる○○本なのである。
こんなにヒントを貰ってもまだ分からないヘネラリーフェは、首を可愛くかしげた。
「正解を教えては頂けないんですか?」
「ただではお教えする事は出来ませんな。どうでしょう、身をもってー」
「おっとすみません手が滑りました」
とミュラーの席の方からロイエンタールに向かってナイフやフォークが飛んできた。それをロイエンタールは優雅に払い除ける。
「最近態度が大きくなってきているな、ミュラー。」
「それは、提督の勘違いかと思われますが。」
と、顔は笑っているが目は全く笑っていないミュラー。
この中でミュラーがシスコンと思った人は果たして何人いただろうか?
険悪なムードを除去する為になんとも気のきくファーレンハイトはすぐに話題を提供する。
「取り敢えず、カメラとメモリの中身を確認してみませんか?」
ただし悪い方にだが。
ルッツは全員の名誉にかけて、○○本をソッと箱の中に戻し、ヘネラリーフェの手が届かない所においた。
「では、早速。」
とファーレンハイトは言うと、メモリーカードを自身の端末に差し込み、ファイルを開いた。
入っていたデータもとい録音データは、『ダゴン会戦レポート』や『9/14艦隊運用について 1』、『夏休み明けまでの課題』など、至極まともな物ばかりだった。
「なんだ。たいしたものは入ってないじゃないか。」
とビッテンフェルト。
「確かに。」
と幾分拍子抜けした顔のミュラー。
「これは、一体どなたの物なのでしょうか?」
「見覚えのある奴は居るか?」
とルッツが問うが、皆首を横に振った。
「だが、俺達の誰かに関係があるのは間違いない。でなければ、あのクレメンツ教官が我々の所にわざわざ届ける筈がない。もうちょっと調べる価値はあると思う。」
とミッターマイヤー。
「ん?これは…」
「どうした、ファーレンハイト?」
「得体の知れないファイルがある。」
「開けてみろ。」
それを見た提督達はまたもや言葉を失ってしまった。中身は…そう……若気の至りとも言うべきものだろう。前に述べた物とはくらべものにならない破壊力をそれは誇っていた。
「これは……………皆さんの写真、ですよね…?」
ヘネラリーフェのその言葉に、名だたる提督達は死んだ魚のような目になっていた。
もう、隠す気力さえ、ない。
その写真は所謂、入学したての士官候補生の歓迎という名の手荒い『祝福』の紛れもない証拠であったのである。この祝福を受けることによってこそ、軍人にとって必要不可欠な「従順」の心が生まれることは皆重々承知だったが、これはあまりにもショックが大きすぎた。
後書き
おまけ
ミュラーとヘネラリーフェ、目で会話
(ねえ、この方達って本当にあの高名な提督方?とてもそんな風には見えないわ。)
(………………そんな事はない。とても優れた、尊敬に値する方々だ。)
(なに?その沈黙……ねえ、一応聞くけど、いつもこんな風なの?)
(違うに決ま……テルダロ………アハハハ……嫌だなあそんなことを聞く娘だったなんて)
(………お・に・い・さ・ま?)
(ああ、分かったよ、認めればいいんだろ!!)
(………そんなキレなくたって……)
(俺だって認めたくないんだああああああ)
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