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骨董品屋

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第五章

「この前話したモディリアーニな」
「ああ、あのファミリーだね」
 親父も応える、店のカウンターの古ぼけた席から。
「何でも襲撃仕掛けられたらしいね」
「それでドン以下な」
 どうなったかとだ、彼は親父に話した。
「殆ど皆殺しらしいな」
「夜にだね」
「そうだよ、マフィア同士の抗争だよ」
 モナコはこう言うのだった。
「やったのはサッバティーニ=ファミリーだな」
「そうだろうな」
「ああ、全くマフィアってのはな」
「とんでもない連中だな」
「シチリアを悪くしているのは奴等だよ」
 まさにというのだ。
「どうにかならないのかね」
「確かに困ったね」
「爺さんもそう思うだろ」
 怒った顔でだ、モナコは親父に問うた。
「あの連中がいないとな」
「シチリアはもっとよくなるな」
「そうだよ。殺し合いもするし」
 それにだというのだ。
「碌な仕事をしないしな」
「裏のな」
「ああ、そのサッバティーニ=ファミリーにしてもな」
 彼等にしてもだというのだ。
「マフィアだからな」
「とんでもない連中だな」
「本当にそうだよ」
 全く以てだというのだ。
「どうにかしないとな」
「難しいところだね」
「そのことだけはムッソリーニはいいと思うよ」
 ムッソリーニはマフィアもカモラも一掃した、イタリアにおいて唯一それをしたことは今も評価されていることだ。
「俺はファシストじゃないけれどな」
「それ以上にマフィアはか」
「嫌いだよ、本当に」
 こう親父に言ってだった、彼は怒りながら自分の店に帰った。だが。
 彼が帰ってからだ、店にある者達が来た。それは黒い服の男達だった。
 彼等はサッバティーニのところに来てだ、こう言うのだった。
「ドン、モディリアーニ家のシマは抑えました」
「他のファミリーには介入させませんでした」
「そうか、わかった」
 親父は彼等のその言葉に頷いて応えた。
「まずはな。しかしな」
「はい、ここではですね」
「この店では」
「そうだ、しかし何よりだ」
 親父は彼等にあらためて言った。
「あの連中は外道だからな、我々の中でも」
「幾ら何でもですね」
「俺達の世界でもやっていいことと悪いことがありますね」
「そういうことだ。だから山賊あがりは困る」
 こうも言う親父だった。
「根っからの悪党だからな」
「全くですね、山賊あがりの連中は」
「金儲けの為には手段を選びませんですから」
「わし等にはわし等の道がある」 
 親父はモナコに見せたものとは全く違う目をしていた、まさにそうした世界の領袖に相応しい凄みのある光を放つ目で言うのだった。
「あの連中を潰したのはいいことだ」
「連中のシマも手に入れましたし」
「いいこと尽くめですね」
「ああ、では御前達はな」
 彼等はというのだった、目の前の黒いスーツの男達に。
「自分達の持ち場に戻れ、いいな」
「わかりました、ドン」
「それでは」
 男達は親父の言葉に応えて店から消えた、そしてだった。
 オヤジはまた一人になった、彼は何もなかったかの様に店のカウンターに座っていた。その席で静かにコーヒーを飲みつつ時を過ごしていた。その姿は誰がどう見てもただの骨董品屋、寂れた店に相応しい年老いた親父だった。


骨董品屋   完


                            2012・2・22 
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