骨董品屋
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第二章
「山賊だったのを時の政府が警察に仕立てたんだよ」
「またとんでもねえことするな」
「昔はあったんだよ。毒には毒をだよ」
犯罪者を取り締まる為に犯罪者を使ったというのだ。当時シチリアを治めていたナポリ王国がそうしたのである。
「そうして出来たのがあの家だよ」
「マフィアの中でも悪質か」
「とびきりにな」
親父はこうモナコに話す。
「あいつ等はな」
「それはまた厄介だな」
「ただな、連中はな」
「モディリアーノの連中はか」
「勢力は弱いさ。数も少ないんだよ」
「ああ、そうなのか」
「それに団結力もないからな」
ファミリーのそれがというのだ。
「凶悪で悪質でもな」
「怖くないってか」
「サッバティーニは力はある」
ここで親父はこうも言った。
「少なくとも連中よりはな」
「マフィア同志の抗争をしてもか」
「大丈夫だな」
「そうかい。けれどな」
「けれど?」
「正直俺みたいな人間には迷惑だよ」
両手の肩を竦めさせてだ、マフィアのことを説明してくれた親父に言ったのである。
「マフィアなんてな」
「犯罪者だからな」
「そうだよ、あいつ等は犯罪者だよ」
それに他ならないというのだ。
「犯罪者の集団だろ」
「警察に捕まらないだけでな」
「ここの警察なんか何の役にも立たないさ」
モナコはまた両手の肩を竦めさせてこう言った。
「全部マフィアが仕切ってるからな」
「シチリアもナポリもな」
「だからイタリアは駄目なんだよ」
南部はというのだ。
「どうにもならない位に腐ってるよ」
「かなり根深いからな」
「何でもかんでもマフィアだよ」
モナコは忌忌しげに語る。
「ここのサッバティーニ=ファミリーは確かに俺達にはちょっかいを出さずに清掃業だの何だので儲けてるがね」
「マフィアはマフィアか」
「そうだよ、汚い仕事もしてるんだよ」
「マフィアだからな」
それは当然だと返した親父だった。
「あるな」
「だろ?そのモデリィアーノ位でなくてもな」
それだけ悪質でなくともだというのだ。
「正直何とかなって欲しいよ」
「やれやれってところだな」
「しかもサッバティーニ=ファミリーって上の方はどういった連中かわかってないよな」
「ドンとその家族はか」
「大所帯のせいかな」
「名前は一応わかってるがね」
それはというのだ。
「ドン=サッバティーニか。名前はマルコだったか」
「マルコなんてよくある名前だろ」
「わしの名前もマルコだしな」
親父はその年老いた右目を瞑ってこんなことも述べた。
「よくある名前だな」
「そうだよな。親父さんの名前もマルコだよな」
「イタリアじゃよくある名前だな」
「そんなのでわかるかよ」
ドンが何処の誰か、というのだ。
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