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後世の評価

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第五章

「自国の文化を勝手に世界遺産に登録された!」
「文化の起源を言われた!」
「雇とわれたけれど殴られたりセクハラされたりだ!」
「観光客のマナーが悪い!」
「オリンピックを目茶苦茶にされた!」
「サッカーで審判を買収されて負けた!」
 こうした話ばかりだった、企業も観光客もスポーツ選手もだった。
 皆トラブルばかり起こして発展させた国に苦情が殺到した、他には彼等は人種差別的発言も多くこちらでも批判が来た。
 その結果だ、今現在の彼等はこう言ったのだった。
「全部な」
「ご先祖様のせいだな」
「本当にな」
「何であんなとこ併合したんだ」
「併合してあまつさえ発展させたんだ」
「お陰で俺達は迷惑している」
「奴等のしでかしたことで責任を問われている」
 この現実を前にして言うのだった。
「何かとな」
「あいつ等トラブル起こし過ぎだろ」
「百七十五ヶ国に進出してるからな」
「つまりその百七十五ヶ国で迷惑かけてるからな」
 無論彼等の国にも逆輸入の様に進出してきている、そうしてかなりの騒動を引き起こしているから彼等も被害者になる。
 その実害も考慮してだ、彼等は言うのだった。
「ご先祖様も余計なことしてくれたよ」
「本当にな」
「世界も俺達も迷惑してるよ」
「奴等を発展させて寿命を伸ばして数も増やしてな」
「しかも全世界に進出させたからな」
「馬鹿なことをしてくれたよ」
「全くな」
 彼等の先祖のしたことは愚行となった、しかも。、
「人類史上最悪の愚行だよ」
「どうしたものだ」
「本当に迷惑だよ」
「ご先祖様は本当に馬鹿なことをした」
「立派な人達だったがな」
 しかしだ、その立派な人達がだった。
「相手を見なくてな」
「どんな連中か考えなくて」
「膨大な予算も技術も人材も投入してな」
「全くの無駄でな」
「しかも有害だったな」
「最悪の結果だ」
「どうにもならない位のな」
 そうした結果を残したというのだ。
「心身共に鍛え抜かれて頭もよかった」
「教養は高くて人格者でもあった」
「公平で正義感も強くて義侠心に満ちていてな」
「根気も情熱もあった」
「素晴らしい人達だったよ」
 こうした多くの美徳は否定出来なかった、だが。
 そうした人達がだ、人を見る目がないばかりにというのだ。
「碌でもないことしてくれたな」
「本当にな」
「善人が犯した罪か」
「最悪の話だよ」
 これが後世の評価だった、彼等は項垂れ深く沈んだ思考に基づいて言うしかなかった。これがこの併合の後世の評価だった。正義と理想に燃えあらゆる能力を注ぎ込んだ結果はまさに最悪と言うしかないものだった。


後世の評価   完


                         2014・5・21 
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