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後世の評価

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第一章

                   後世の評価
 その国の軍人達、特に陸軍の者達は非常に高い倫理観を持っていた。
 少なくとも戦場において醜い行いは一切しなかった、略奪暴行なぞある筈のないことだった。軍規軍律に反すれば厳しい処罰が待っていた。
 そしてだ、その軍規軍律の厳しさを誇りにしていた。彼等の倫理観は世界の誰が見ても驚くべきものだった。
 しかも倫理観だけではなかった、略奪暴行をしないだけでなく。
 彼等は公平であり正義感が非常に強かった。義侠心にも満ちていた。
「差別はするな」
「悪を見逃すな」
「義を以てせざるは勇なきなり」
「命は義の為にある」
 いつもこう言いしかも実行が伴っていた、彼等の正義感の強さと平等主義もまた世界から見て驚くものだった。
 しかもだ、彼等は心だけではなかった。
 身体能力がよくしかも品行方正な者だけを軍に入れて鍛え抜いていた、その為彼等の精強さもまた素晴らしいものだった。
 尚且つ学問にも励み教養もあった、心だけでなく身体もよければ頭もいい。まさに完璧と言っていい者達だった。
 その彼等をだ、国民達は心から信頼していた。
「軍人さんは素晴らしいな」
「立派だし悪いことを絶対にしないからな」
「いつも真面目で公平だしな」
「本当にいい人達だよ」
「軍人さんを見習わないとな」
「ああした人達みたいにならないと」
 尊敬さえしていた、それでだった。
 彼等はその信頼と尊敬に応え常に文武双方を鍛え強い倫理観と正義感を養っていた。しかしここで国家に思わぬ事態が起こった。
 とある国を併合することになった、併合に至るまで色々とあった。
「併合する予定はなかったがなあ」
「成り行きでこうなったな」
「財政的な負担が気になるな」
「統治にも金がかかる」
「しかも国防のこともある」
 こうした諸問題を考えるとだった。
「併合は重荷だぞ」
「確かに一等国は皆植民地を持っているが」
「あそこの統治は上手にいっているがな」
「軌道には乗ったな」
「ああ、それでもな」
「あそこはな」
 あらたに併合するそこはだった。
「凄いぞ、あそこは」
「針を作れないんだぞ」
「塩も生産出来ない」
「木を曲げる技術もなければ服を染める技術もない」
 そうした技術が一切ないというのだ。
「識字率は五パーセント以下だ」
「灌漑も何もなっています」
「田畑はまともに耕されていない」
「産業は何もない」
「度量衡も統一されていないし貨幣経済さえ発達していない」
「人口統計もいい加減だ」
 国歌としてあるまじき状況だったというのだ。
「無茶苦茶な状況だ」
「しかも近代法も土地法もない」
「貴族だけが威張り散らし好き放題している」
「酷い有様な」
「あそこを併合したのだ」
 それ故にというのだ。
「かなりの投資が必要だ」
「技術もな」
「優れた人材を優先的に向けよう」
「さもないとあそこは立ち行かない」
「そもそも国歌として既に破綻していた」
 財政的にだけではない、政治システムも経済も内政もだ。何もかもが完全に破綻していてどうにもならない状況だったのだ。
「近代化なぞ何もない有様だ」
「衛生状況も相当に悪い」
「そのことも問題だ」
 衛生もだ、問題視された。 
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