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強さのみを

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第五章

「あんたとな」
「そうか、じゃあバーボンを飲みながらか」
「話をしようか」
「いいさ。じゃあ席を替えるか」
 アープはホープだけでなくフィルダーも見て言った。
「そうしようか」
「あっしもでやんすか」
「ああ、三人になるからな」
 今座っている二人の席では、というのだ。
「違うからな」
「よし、じゃあ席はな」
「カウンターに行こうか」
 アープはカウンターの方を見てからホープに言った。
「そこで話すか」
「そうだな、じゃあな」
「ああ、そういうことでな」110
 アープは紳士的でかつ穏やかな調子だった、そしてだった。
 二人はアープを挟んで話した、その中で。
 アープの言葉を聞いてだ、フィルダーはこう言った。
「あの」
「何だい?」
「何かでやんす」
 少し戸惑いながら言うのだった。
「旦那は」
「俺がか」
「どうも今にも銃を抜くみたいな」
「そんな感じはないか」
「へい、そう思いやす」
「何か違うな」
 ホープもこう言う。
「以前のこの人と」
「ああ、あんた前に俺と会ってるんだな」
 アープも笑ってだ、ホープの今の言葉に応える。
「そうだったんだな」
「一度な、その時のあんたはギラギラしてたな」
 目だけではない、身体から放つ気配全てがだ。
「随分とな、けれどな」
「今はか」
「落ち着いてるな、けれどだよな」
「射撃の腕は衰えていないからな」
 アープは笑顔でホープに言った。
「それを確かめたいか?」
「いや、いい」
 そこまでしなくていいとだ、ホープはアープに返した。
「別にな」
「そうか」
「ああ、わかるからな」
 だからだというのだ。
「その身のこなしと身体の気配でな」
「そういうことでわかるとはあんたも相当だな」
「あんた程じゃないがな」
 今もだ、彼はアープ程ではないとわかった。それでこうそのアープに言ったのである。
「わかるさ、そうしたことも」
「それだけの腕があるか」
「あんたは俺が前に会った時より強くなっている」
 その銃の腕が、というのだ。
「さらにな、けれどな」
「けれどか」
「落ち着いた雰囲気だな」
 そのギラギラとしたものが消えているというのだ。
「随分と変わったな」
「ああ、実はな」
「実は?」
「惚れた相手が出来た」
 にやりと笑いながらもだ、それでもだった。
 アープは笑ってだ、こうも言ったのである。
「だからな」
「その相手でか」
「俺も変わったんだろうな」
「落ち着いたものが出来たか」
「これまでの俺はただ闘っているだけだった」
 保安官としてだ、それだけだったというのだ。 
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