関西弁のイタリアン
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第三章
「イタリアじゃ河豚は食えへんさかいな」
「まあ日本で一番食うてるのは間違いないな」
クラスメイトの一人がヌッチに応えて言った。
「河豚はな」
「そやろ、河豚めっちゃ美味いわ」
「毒あるけれどな」
「そやから鉄砲やったな」
「当たると死ぬさかいな」
鉄砲は弾、河豚は毒にだ。どちらも当たると死ぬからこの呼び名になったのだ。
「まあそれは怖いけどな」
「けど河豚は最高や」
ヌッチは冬に食べる河豚の美味さを思い出しながら言い切った。
「そやからわい絶対にづぼら屋に入るで」
「そこがあかんかったら何するんや」
「たこ焼き焼くわ」
その時はというのだ。
「たこ焼きも好きやしな」
「ほんま生粋の大阪人やな」
「そうなっとんな」
「自分でもそう思うわ、ほな今度は新世界で串カツ食おか」
こちらもだ、ヌッチの大好物である。
「二度漬けはせんで」
「それは人の道に離れてるさかいな」
「絶対にやったらあかんわ」
クラスメイト達もこのことは絶対にと言う。串カツ屋ではソースの二度漬けだけはしてはならないのだ。何があろうとも。
「キャベツも食いながらな」
「楽しむんやな」
「そして通天閣に登ってな」
新世界、そして大阪の象徴である。
「ビリケンさん拝んでくるわ」
「そうするんやな」
「今度の休みは」
「彼女が出来ますようにってや」
こんなことも言うヌッチだった。
「お願いしてくるわ」
「彼女かいな」
「お金やないんか」
「お金もええけどまずは彼女や」
ヌッチは明るさの中に真剣さも入れて言い切った。
「見付けて来るで」
「そうか、ほなお願いしてくるんや」
「ビリケンさんにな」
彼等はこう言ってだ、ヌッチと明るい時を過ごしていた。そしてヌッチは実際に今度の休みに新世界で串カツを食べた、そしてその後で通天閣に登った。
通天閣のビリケンさんに手を合わせた、そうしてから。
彼女が出来る様にお願いをした、しかしここで彼はさらにお願いをするのだった。
「阪神の十連覇頼むで、あとわいを大金持ちにしてや。そんで一生美味いもの食える身体にして欲しいし吉本新喜劇も今よりさらにおもろなって大阪に石油が出て日本の首都になって天皇陛下が大阪城を皇居にしてくれて」
「おい、どんだけお願いするんや」
声を出してお願いをする彼にだ、突っ込みが来た。
「大金持ちで止めとかんかい」
「ええやろ、誰にも迷惑かけるお願いしとらんわ」
「それでも欲張り過ぎやろ」
声がまた突っ込んできた。
「彼女と阪神と大金持ちだけで充分やろ」
「お願い出来る時にしとかんと損やろ」
「残りは住吉大社でせんかい」
「こっからちょっと遠いわ」
「電車やったらすぐやろ」
「南海線に乗り換えなあかんやろが」
こう声の方に言い返してそちらを見た、するとそこには。
小柄で黒い髪をショートにした少女がいた、目は大きく黒目が目立つ。唇は小さくピンク色だ。黒い上着と白のミニスカートを着ていて白く綺麗な脚が見える。胸は然程大きくはないがスタイルは全体的にいい。
その少女がだ、こう彼に言ってきたのだ。
「あんた欲張り過ぎやで」
「女の子かいな」
「女の子であかんか?」
「それは別にええけど」
ヌッチも女の子に言われたことは構わなかった。
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