壊れた時計
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第五章
三人共携帯のニュースや掲示板で時間についてチェックした、すると世界各地でもだった。
時間は戻っていた、そのことを喜ぶ声で満ちていた。
それでだ、マクドネルはほっとした顔で言った。
「よかったですね」
「ああ、全くだ」
「本当にそう思いますよ」
カナワとオーフェルもほっとした顔で彼に応えた。
「時間が正確だとな」
「それだけで違いますね」
「日常が動く」
「無事に仕事が出来ますよ」
「本当に。やれやれです」
三人共心から安堵してだった、そのうえで。
この日の仕事をはじめた、そしてこの日は無事に家に帰ることが出来た。何時来るかわからない電車を待たずに。
世界にも平和が戻り日常生活が再開していた、しかし。
暫くしてからだ、マクドネルとオーフェルは勤務の合間にカナワに問うた。あの日のことを。
「しかし。急に時間が狂ったのは」
「どうしてでしょうか」
「一日だけでしたが」
「原因は今も不明ですよね」
「そのことだな。ひょっとしたらな」
カナワは考える顔で二人に答えた。
「神様がミスをしたのかもな」
「時間の調整のですか」
「それを」
「ああそれでな」
そのせいでというのだ。
「時間がおかしくなっていたのかもな」
「だからですか」
「あの日は」
「そうかもな、神様だってな」
偉大なだ、神であってもというのだ。
「時には間違えるだろう」
「それで時間が狂ったんですか」
「若しかしたら」
「そうかも知れない、真相はわからないが」
これがカナワの仮定だった、そこに科学的な根拠はない。しかしだった。
マクドネルもオーフェルも無神論者ではない、カナワはマオイの自然崇拝で彼等はカトリックという違いがあってもだ。
彼等も神は信じている、それでカナワのその言葉に納得して言うのだった。
「そうしたこともですね」
「有り得ますね」
こう言って納得したのだった、この世界的な騒動しかも歴史に永遠に残る謎の事件の真相はどんな科学者が検証しても答えは出なかった。だが誰もが時間が元に戻ってホッとしていた。少なくともこのことだけは確かだった。
壊れた時計 完
2014・5・23
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