東方鎧核~モノトーンプリンセス~
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第1部「白黒の纏機編」
第1話「纏機起動」
前書き
第1話です。
纏機って言うのは後で説明が入るので、ご心配なさらず(キャロりんスマイル)
今日も、無識に空を見上げていた。
あの時みたいに誰かが飛んでるかもしれないから…
あの時みたいに誰かが空を弾幕で彩っているかもしれないから…
白と黒で描かれた、白黒の少女のマークを付けた霧雨運送店のトレーラーの窓には、緑色に染まった夜空と荒廃した大地が見え、霧雨魔理沙という白黒の魔法使いだった少女が写っている。あの夜以降、魔法を失い、ただの少女 になっていたのである。
昔の顔見知りの奴にも行方が分からないのがいる。レミリアが国を作っただとか、守谷の連中が妖怪の山勢力と国を作ったなど大きな噂は耳にするが分からない奴は全く分からない。
特に過去に幻想郷の象徴でもあった、八雲紫や博霊霊夢はあの夜以降、動向が全く掴めない。それこそ、あの夜の直後はスキマ妖怪のドッキリだとか、博霊霊夢は儀式の準備をしているなど噂が立っていたがその噂も風化し、二人は完全に過去の人物と化していた。まるで過去を忘れろと言わんばかりに時は進んでいる様に魔理沙は感じていた。
魔理沙の座る助手席の隣、つまり運転席から声が聴こえる。
「空に変化があったのかい?」
隣から聴こえる声の主は森近霖之助だ。魔理沙は香霖と呼んでいる。
彼は魔理沙が幼い頃から世話になっていた昔からの顔馴染みで
彼は妖怪と人間のハーフなのだが、能力《ちから》が無い今となっては、博学な人間の若者同然である。
魔理沙はふと我に帰り、もう一度確認してから返答した。
「全然、確認できないな。最近は贈り物も乱獲で数が減りましたってか?」
香霖が苦笑いをしながら返す
「保護対象にはならないだろうけどね」
彼と魔理沙は、魔理沙の自宅が機械の落下により消滅。それ以降、魔理沙は香霖堂に居候をしていたが、
偶然、空から墜ちてきた大型車両を回収。
その時、閃いた魔理沙は、香霖を誘い、大型車両を移動拠点兼本社とし、霧雨運送店を開店。
運送と言っても空からの贈り物を回収し、魔理沙の詐欺めいた話術で集落に高値で売り付けて収入を得るのが主な収入源である。
基本的に回収した物は、即刻売り付けるが、どちらかが興味を持てばコレクションに入る。
しかし最近は、異様に落下数が少なく、他グループ、国などライバルとの競争率も激しく2人は回収して賄う筈の燃料なども買い、自転車操業状態だ。
魔理沙は積み荷を見ながら言った
「しかし丸一日走って、成果はこのやたらとデカイぺーパーナイフみたいなヤツだけかよ。流石の私でもこんな物どうやって売り付ければいいんだ?」
香霖は呆れた顔をしながらも前を向いたまま言った。
「得体の知れないものをあれやこれやと言って高値で売り付ける者がいう台詞?どうせまた革命的なとか吟いながら、売り捌くんだろう?」
魔理沙はご存知でと言わんばかりの得意気な顔をしながら、手を頭に組みながら空の見回りを続けた。
そこは真っ暗で何もない場所。そこに紫が八雲紫がいた。
魔理沙は夢なのに紫に真剣に話し掛けた。
今までの事、どこに居たのかを
紫は妖しく微笑むだけで、答えようとしない。まるで人物画にでも話し掛けてる気分だった。
声を出し切り、話のテンポが落ちてきた魔理沙の言葉を上塗りするかの様に紫が口を開けた。
「あなたはもうじき、世界から選択を迫られる。
きっとその選択はどちらも残酷なのに筋が通っている物ばかり。
でもあなたが納得行かないなら選択を破壊してしまいなさい。」
「あなたが戦い続ける限り」
ここで夢は途切れてしまった。
目を開けた瞬間、空には幾千の光の落下
香霖が魔理沙の名前を呼びながら車を飛ばしている。
「香霖!なんだこれは!」
魔理沙は興奮しながら問いただした。
「知らないよ!!ついさっき降りだしたんだ!こんなのあの初日の降り方以来だよ!!」
香霖も確実に焦っていた。
それもそのはず、この落下してくる機械は、得体の知れない物ばかり稀に地に面したと同時に爆発なんて事もあるし、爆発はしなくても質量弾としては充分な威力だったからだ。
しかし魔理沙は
「香霖、これは稼ぎ時だ!質の良いものだけを回収するぞ!」
香霖はこの言葉に仰天し暫し戸惑ったが、魔理沙の稼ぎ時という言葉に反応。すぐさま車を光が集中してる地点へ走らせた。
「一番でかくて、色が濃いヤツ!違うあっちだ!」
悲鳴混じりの怒号が飛び交うなか、霧雨運送は着実に贈り物を回収していった。
落下する光も少なくなっていく中、今日最後で大物が現れた。
10m弱はあるだろうか、それがゆっくりと地上に近付いていた。
勿論急行した。しかし道中ライバルの車両と遭遇してしまい、カーチェイスが始まった。
轟音をあげる動力部分、ぶつかり合う車体。
魔理沙は再び叫んだ
「もっと速く!」
香霖も叫び返す
「積み荷が重いんだよ!!」
このまま目的地まで平行線かと思った矢先、ライバル車両が急に減速した。
ライバル車両を見ると運転席から後部にかけて風穴が空いていた。
運転手を失った車両はフラフラと蛇行を始め土煙をあげながら横転し、何かに吹き飛ばされた。
それは大型車両に直結された上半身だけの人型の機械。まるでその姿は魔理沙が本で読んだ、怪物ラミア
後ろの機械は迫ってくる
香霖が叫びながら車を再発進させる。
「あれは纏機!?」
纏機とは近頃回収され始めた物で、落下物の中でも、人型に近く、人が乗り込み操縦できた機械であろうと予想できる機械の総称だった。機械を纏うという意味で纏機と名付けられたらしいが、香霖が驚いているのは、どれも部品が足りなく起動は難しいと予想されていた。
そんな代物を不完全でも運用可能にするには相当の技術が必要だ。
魔理沙が香霖に最悪の返答を予想しながら、聞いた
「こんな芸当するのは…」
香霖が確信めいて言う。
「国だね、どちらかの」
国は大きい。故に回収できる機械も多い。故に技術力も他と比べれば高い。
普通ここは撤退するのが得策だが、魔理沙は大物を譲りたくはなかった。
「香霖、スモーク弾発射後、私が外付け機銃で、ヤツの顔を狙う。きっとその辺にセンサーがあるから」
香霖はすぐに叫んだ
「無茶だ!今までのヤツとは訳が違う!!あの獲物は諦めよう!」
魔理沙が
「さっきまで、全力出してた私達を余裕で撃ち抜いた機体に背を向けたらどうなると思う?」
香霖が狼狽える
更に魔理沙が
「それに大物欲しいしな」
とニカッと笑った。
香霖は遂に観念したかのように、スモーク弾の準備を始めた。
魔理沙の後部の外付け機銃につき香霖に無線機で指事を送る。
「急カーブした後、すぐにスモーク弾を撃ってくれ。それから私が機銃でセンサーを破壊、その後大物に接近し回収。スタコラサッサッというわけだ。」
魔理沙は得意気に作戦を話す。
香霖はため息をつきながら
「君の作戦はいつも遺書を本格的に考えさせてくれるよ」
と冗談を言う。
魔理沙の
「大丈夫だ死んだら遺品は借りるから」
の一言に毎回生きる意志を高める香霖だった。
目的地まであと900mのところで魔理沙がカウントを開始した
「3、2、1」
「GO!」
と同時に横転させないように急カーブし、纏機の斜めについた。
続けて魔理沙が
「スモーク弾!」
と叫ぶ。車体の砲頭からスモーク弾が発射され車体全体を覆った。
魔理沙は機銃に熱感知スコープを付け頭部部分のセンサーめがけ攻撃する。
頭部センサーに命中し、頭部のセンサーから光が消えた。
「今だ!」
魔理沙が叫んだ。
それと同時に車両は発進しどんどん纏機を突き放す。
800m
700m
600m
大物までどんどん近付く
400m
200m
100m
どんどん近付く。
80m
60m
ここで纏機の胸部から光見えた。
予備センサーを起動させたのだろう。
再び鮮烈な攻撃が始まる。
50m
40m
30m
弾丸が左後部車輪と左前輪を撃ち抜いた
突然の脱輪により車体は大きく傾き、横転した。
魔理沙は機銃席から投げ出された。
しかしすぐに意識を取り戻し運転席へと向かった。
「香霖!」
そこには頭から血を流し倒れている香霖が、
幸い車両は炎上も煙も出さずに横転した。
香霖が必死にダメージを軽減させるように耐えさしたのだろう。
香霖を引っ張り出し、脱出を試みたが、轟音を立て纏機が迫ってくる。
魔理沙は何か打開策を探すため辺りを見回した。
「何か無いのか!!」
その時2つの選択肢が浮かんだ
1つは、助かることは無いが、香霖と共に諦める。
2つ目は、香霖を見捨てて逃げる。
どちらも残酷だった。認めたくなかった。
でも理屈があった。諦めかけたその時紫の言葉を思い出した。
「破壊してしまいなさい。
あなたが戦い続ける限り」
その瞬間消えていた車内の計器再起動しが目的地到着を示した。
「え?」
魔理沙は横転した時の土煙が晴れたすぐ先を見た。
そこには、
頭がある
腕かある
脚がある
胴がある
完成状態の纏機だった。
「あぁ、選択を変えてやるよ…
私が戦い続ける限り!!」
それは魔理沙が誰に言ったのかも分からない。
なのに誰かがそこに居た気がした…
誰かが聞いていた気がした…
魔理沙は乗り込むとモニターが光輝いた。
「メインシステム起動
あなたの帰還を歓迎します」
後書き
次回第2話「どちらでもない者」
騙して、悪いが主人公機戦闘シーンは次回からなんです。
纏機はテンキと読みます。
それではお読み頂きありがとうございました。
2話でお会いしましょう。
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