戦国異伝
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第百七十一話 三河口の戦いその二
「陽動は陽動じゃ」
「下手に攻めずにですな」
「織田の目を引き寄せてくれればよい」
それで十分だというのだ。
「だからよい」
「左様ですか」
「そういうことじゃ。では我等はじゃ」
「織田家の本軍とですな」
「戦じゃ」
今からというのだ。
「そして我等の戦を見せるぞ」
「それでは」
こうしてだった、彼等もだった。
飯を食いそしてだった、日の出と共にだった。
彼等は一斉に前に出た、そしてだった。
織田の軍勢を攻めんとしていた、その彼等を見てだった。
信長もだ、全軍に告げた。
「ではよいな」
「はい、では」
「今よりですな」
「うむ、攻めるぞ」
こう言ってだ、そのうえで。
織田軍はまずは鉄砲を構えた、だがまだ撃たない。
信長は自ら彼等のところに来てだ、こう言った。
「焦ることはない」
「狙いを定めてですな」
「そのうえで」
「撃つのじゃ」
敵が間合いに入ればというのだ。
「わかったな」
「しかし殿」
蒲生がここで信長に言ってきた。
「武田は騎馬隊を前に出してきております」
「そうじゃな」
「その動きは速いです」
言うのはこのことだった。
「そして一撃撃ったなら」
「弾を込める間にな」
鉄砲のそれをだ。
「その間にじゃな」
「また来ます」
「わかっておる」
このことも既にというのだ。
「だから槍も用意しておるのじゃ」
「織田家の長槍をですな」
「そして弓もな」
この三段重ねできているというのだ。
「だからじゃ」
「この戦はですな」
「負けぬ」
絶対にというのだ。
「だから安心せよ」
「無論、それは」
蒲生は確かな顔で笑顔になり信長に答えた。
「殿がお考えになっていることですから」
「では御主達の働き見せてもらうぞ」
「是非共」
こうしてだった、天下に轟く武田の騎馬隊が突き進んでくる中で織田軍は身構えていた、そして彼等が間合いに来た時に。
鉄砲の轟音が鳴った、何千丁もの鉄砲が一斉に鳴った。
それで武田の騎馬武者の中で倒れる者がいた、しかしそれを見てもだった。
武田の先陣を切る山県がだ、鬼の顔で彼等に言った。
「怯むな!すぐに撃たれることはない!」
「そうじゃ、倒れた者は後ろに連れて行き手当をせよ!」
山県の兄である飯富も言う。
「だからじゃ。lここはじゃ」
「進め!このままじゃ!」
また叫ぶ山県だった。
「よいな、行くぞ!」
「我等に続け!」
山県と飯富が言いだった、そして。
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