I want BRAVERY
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16話 赤髪白服
彼女が、メインヒロイン・・・かもしれない。
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16話 赤髪白服
『4月20日 15:30
From:xxxxxx@xxx.ne.jp
sub:
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今日は風花ちゃんと料理の練習が
あるから、
5時に辰巳ポートアイランド駅の
改札前の階段の下に集合ね。
沙織 』
内心で笑みを止められないまま、俺は携帯を閉じる。
実は今花屋に来ている。
花屋に来る理由なんて一つしかない。
そう、花を買うのだ。
そして、花を買う理由だが、もちろん部屋に飾るなんていうちゃちいものではなく、女性に贈るためだ。
最近思ったのだが、俺の女の子に対するランクが上がらないのは、やはりポイントが足りないのだと思う。
てっとり早くポイントを稼ぐ方法、それは贈り物である。
今までちゃんと贈り物をしたことなんてない。
あえて挙げるのなら、一緒に買い物に行って物を買ってあげることくらい。
金で思ったのだが、タルタロスで拾ったもの売れるってこれ、無敵じゃないかと思う。
主に学生の財布にとって。
なんていたって、バイトなんてせずとも金が入るのだ。
そう、本来ない時間を使って。
まぁ、話を戻すと、今日は長谷川さんに贈る花を買いに来たというわけだ。
ゲームの方で、長谷川さんは女主人公のコミュだった。
そして、彼女は男主人公のコミュではない。
何が言いたいのかというと、男からどの贈り物を送るのがいいかわからないのだ。
そう、女主人公から彼女へ、花を贈るという選択肢はできなかった。
彼女が貰って喜んでいるものは、ある程度彼女らしいというか、お嬢様らしいものだったはず。
しかし、男性から花を贈られるというのは、そういった本人の趣味とは完全に別物だろう。
男主人公の場合ならばただの贈り物だが、実際に俺が贈ると『ただ』の贈り物とは思えないのだ。
問題は、彼女が花の贈り物を受け取ってくれない可能性だ。
その不安だけを考えながら、俺は花を物色する。
あまり時間は掛けたくない。
今日はなんとかして先輩を振り切ってきたのだ。
必要以上に時間をかけると、どこかで鉢合わせしてしまう可能性が高い。
それは勘弁して欲しいことだ。
あの先輩のことだ、まずは俺の部屋、次に寮内、そしてポロニアンモールのカラオケ、ゲーセン、と回っていくはずだ。
だから、俺はここで待ち合わせにしようと思ったのだ。
俺は目の前にあるちいさなサボテンを手に取る。
(・・・欲しい)
自分の欲望に流されるのを我慢し、それを再び目の前に戻す。
さて、放課後に遊ぶ時に贈られて邪魔にならない程度のものがいい。
(花じゃない方が・・・)
ブンブンと顔を振ってその思いを吹き飛ばす。
花じゃないといけないのだ。
普通のアクセとかではなく、花。
俺が彼女に好意を抱いてることを示すために必要なのだ。
このままいけば、俺は誰ともそういった関係なることなく終わりそうな気がしてならないのだ。
岳羽さん、今はゆかりと呼んでいる彼女とも友達にはなったが、なんだか進みそうな気がしない。
遥が協力してくれると言っていたから、もうすこし発展しやすくはなるだろうが、何故か彼女達とは壁を感じる。
「これは・・・」
『ガラスの一輪挿し 5000円』
(高ぇ・・・)
俺は花束なんか持ちづらいものよりはいいと思い、それを買う。
「結構悩んでたみたいだな俺」
携帯を見ると、時刻は4時過ぎになっていた。
長谷川さんも門限があるため、今日は本当にただ会って話すだけ。
わざわざ待ち合わせなんてしてるのは、ただの気分の問題だ。
高校生なんてそういうもんだおろう。
まぁ、俺や彼女は精神年齢的には高校生ではないのだが。
俺は、それでも後1時間ほどどうしようか最初の予定通り駅前にある適当な店で時間を潰そうか、なんて考えていると、ふと気づいた。
(あれ・・・は・・・)
なんでこんなところに、と一瞬思ってから、ゲームでもここらへんにいたな、なんて思った。
俺の目線の先にいたのは、全身白色のゴスロリ服を着た、赤髪の女性だった。
(チドリ・・・か)
原作ではいつごろから出ていただろうか。
髭が実は男らしい、ってことだけを証明するためにいる引き立て役にしては美人の女キャラ。
男主人公の攻略対象でないがゆえに今まで気にしたこともなかった。
それにしても、こんな時期からここらへんい出現してたのか。
なんて、まるでレアモンスターを見るような目で俺は彼女を見ていた。
「・・・何?」
「え?」
ガン見しすぎた。
というか目の前まで、俺近づいてた無意識に。
頭に刺さっているアクセが、本当に頭貫通してるんじゃないかと思ってガン見しすぎた。
「・・・何?」
「あ・・・頭」
「?」
「それ、刺さってるの?」
「・・・」
(無視ですか!?)
「あー、ゴメン言いづらいことならいいんだ別に」
何故だか彼女に興味が沸いた。
頭に虫が沸いた、ような行動をしてるなと自分では思う。
あ、別に今のはダジャレのつもりはない。
そんなことより、彼女はある意味、いやどんな意味でもかなり重要な役目を背負っている。
それは髭のペルソナ進化だ。
なんか『進化』なんていうと、まるでポケモ○みたいだ。
その彼女に接触するというのは、髭のフラグを潰しているのかもしれない。
「何書いてるの?」
俺は彼女の隣に座りこむ。
「・・・」
チドリは、俺がキャンパスを見ようとすると、サッと隠した。
「おぉう?もしかして人には見せれない卑猥な絵を?」
「・・・」
「・・・冗談だってば。それにしても君さ、なんでそんな恰好なの?」
「・・・」
「おりょりょ、無視?ちょっと悲しいな」
「悲しい?」
何故そこに食いついたし。
「うん、悲しい。君とおしゃべりしたいんだけど」
「何故?」
「可愛いから」
(ふっ、テンプレ的主人公の無意識的な口説き文句だ!どうだ!ちょっとは動揺したんじゃ
「どこが?」
真顔か。
「顔。主にその簪」
「・・・そう、これ可愛いの」
(ミスったぁぁぁぁ!!)
「似合って・・・はない気がするが、それいいね」
「そう」
「名前、なんていうの?俺、琉峰彩っていうんだけど」
「・・・」
「今年で高校2年さ」
「・・・」
「君の名前は?」
「・・・」
「このままだと、ぶっ刺しちゃん、て呼ぶよ?」
「・・・チドリ」
(嫌だったのか、嫌だったのか今のぉぉ!)
「チドリか、漢字で千鳥?」
「カタカナ」
「へぇ、いい名前じゃん」
「・・・そう」
「それにしてもさ、なんでそんな目立つ恰好なの?」
「目立つ?これ?」
自分のスカートを少し引っ張る。
(おいおい、ストレガだったけか、言ってやれよ)
なんて思いながら、半裸よりはマシか、なんて思った。
「うん。確かに可愛いけど・・・結構目立つよね」
周りの人もチラチラ見てきている。
「そう・・・どうでもいい」
俺は、そんな反応の薄い、エヴァ○ゲリオ○のレ○みたいなチドリとしばらくの間、割と一方的だが会話をした。
ふと携帯を見て、約束の時間が近いことを知る。
「あ、ゴメン。用事あるんだわ俺」
「そう」
その声に若干の寂しさが混じっていると思ったのは、俺の希望的観測だろうか。
「本当はもっと話たいんだけど・・・携帯とか持ってる?」
「携帯?」
「あー・・・チドリっていつもここにいるの?」
「いつもじゃない」
「そうなのか・・・参ったな」
「どうしたの?」
「それじゃ、会えないだろ?」
「・・・私と?」
「そうそう」
「変な人ね」
「そうか?まぁ、俺結構ここら辺来るからさ、また会ったら話そうな」
「会ったら、ね」
ゲームでは考えられないようなチドリの反応に思わず顔が綻ぶ。
「じゃ、またな」
「えぇ」
俺は、チドリと別れ、長谷川さんとの待ち合わせ場所に向かった。
距離的にはわずか6mほどだったので、長谷川さんと合流した時、視界の端に彼女はまだ写っていた。
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