魔法使いの知らないソラ
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第五章 友と明日のソラ編
第二話 光と闇の交錯 前編
――――――力の差は歴然だった。
無傷で涼しい顔をした、闇と氷を使う魔法使い/冷羅魏氷華。
火傷、切り傷、擦り傷、骨折、打撲、出血を全身にしている魔法使い達/相良翔、井上静香、護河奈々。
その周辺は、まるで爆撃でも受けたかのように荒れ果てていた。
大地は抉れ、穴だらけになっていた。
彼ら、相良翔達はこの場所にきた瞬間から、戦いは始まった。
翔、静香、奈々による同時攻撃。
そしてそれを迎え撃つ冷羅魏。
四名の一撃はぶつかり合い、一つの衝撃を生み出した。
その結果、翔達が負けて吹き飛ばされた。
三人の奥義すらも届かず、遂に全滅に至った。
「こんなものか‥‥‥」
「くっ‥‥‥」
冷羅魏は翔の頭を踏みおろし、グリグリと地面に擦り込ませる。
全身の痛みから、立ち上がることができない。
「このッ!!」
「ん?」
翔を狙うことに集中していた冷羅魏は、背後から迫る奈々に気づかなかった。
反応が遅れたことで防御はできず、奈々の回し蹴りを直撃した。
狙い通り、後頭部に直撃した。
「効かねぇなぁ!!」
「ッ!? きゃぁっ!!」
だが、奈々の一撃は冷羅魏に一つの傷もつけず、そしてそのまま裏拳で奈々の脇腹を当てて殴り飛ばした。
奈々は地面を削りながら飛ばされ、再び倒れる。
「閃光よ、全てを貫く槍となれ!!」
それとは反対方向から、淡い桜色の魔力を纏いながら冷羅魏を襲う一人の少女。
右手に持たれるレイピアは、魔力によって槍のように変わり、光の尾を引いて冷羅魏に迫る。
井上静香により、強力な一撃だった。
全てを貫く、閃光の槍――――――『|龍討つ閃光の桜槍(エンプレス・シュトラール)』
「邪魔だッ!!」
「そんなっ――――――!?」
だが、その一撃は届くことはなく、冷羅魏は右手で漆黒の鎌を横に振って、静香を斬り飛ばす。
幸い、魔力が全身を守ってくれたため、切り裂かれることはなかったが、それでも遠くに飛ばされて意識を失ってしまう。
「こんなもんなのか? お前ら、この程度で俺に挑もうとはな!」
「くっ‥‥‥そぉ!」
翔は立ち上がるため、白銀の魔力を全身に行き渡らせると、爆発させて衝撃波を発生させる。
衝撃波で冷羅魏の足は翔の頭から離れると、翔は瞬時にその場から離れ、立ち上がる。
「はぁ、はぁ、はぁ‥‥‥まだだッ!!」
そう言うと、右手に白銀の刀『天叢雲』を持った翔は脳内に流れる膨大な魔法文字を複雑に組み合わせて、魔法を具現化させる。
刀身に白銀の魔力が集結し、光り輝く刀へと変化させる。
「喰らえッ!!」
気合一閃、翔は腰を低くしてそのまま一気に駆け出すと、瞬時に冷羅魏の懐に飛び込む。
そして、上段の構えから勢いよく刀を振り下ろす。
白い残影を残し、その一閃は真っ直ぐに振り下ろされる。
光り輝く裁きの一閃――――――『|天星光りし明星の一閃(レディアント・シュトラール)』
「だから、――――――効かねぇんだよ!!」
そう言うと冷羅魏は左に一回転して鎌を振り下ろす。
その鎌に、闇の力と氷の力を込めて切り裂く。
氷結に闇を纏わせた一閃――――――『|氷結刈り取る漆黒の刃(コンゲラートデス・シュトラーフェ)』。
翔の放った斬光は漆黒の氷に飲み込まれ、粉々に砕け散った。
「何で分かんねぇんだ? こんなこと、無意味に決まってる。 とっとと逃げればいいものを」
「うるさい! 俺達は無意味だなんて思ったことはない。 ここにいるのは、ただルチアを助けるためだ!」
「それも無意味だ。 あの女の生命力も、魔力も、もうほとんど残ってない。 お前らがいくら足掻いても、あの女は死ぬんだよ!」
「だから、それをさせないためにここにいるんだろうがッ!!」
翔は自身の持つ、様々な性質の魔力を放出させる。
白銀の魔力を主体に、炎・水・土・雷・木と言った、五つの性質と五つの能力を持つ魔力を、その一刀の刀に集結させる。
その膨大な魔力は、常闇の世界で強く輝き、オーロラが翔の全身を纏うように見せる。
翔が発動させる魔法は、限界まで魔力を使った最強の一撃。
脳内に溢れ、流れる膨大な魔法文字を複雑に組み合わせ、さらに五回に渡り魔法文字を組み合わせ、出来上がった合計六つの魔法文字を一つにする。
脳はオーバーヒート寸前まで熱くなるが、翔はやめようとしない。
限界の、さらに限界を突破した一撃を、翔は冷羅魏にぶつける。
「はぁぁぁぁああああああッ!!!」
右腕を天に上げ、左腕を前につき出す。
そして魔力が溜まったところで、翔はその一撃を放つ。
「天王星の力、我が全ての力を持って、総てを破壊せよ!」
翔は一歩前に足を出すと、そのまま一気に刀を振り下ろす。
すると、刀身を纏った魔力が、光速を超える速度で放たれる。
一直線に放たれた一閃は、大地を抉り、大気を震わせ、激しい爆発音をたてる。
その一生を終えるときに起こす大規模な爆発現象――――――超新星の如き魔法。
全てを持って総てを破壊する、天の魔法――――――『星光総て斬り裂く聖刀』
「待ってたぜ! その一撃を!!」
「んだとッ!?」
迫る中、優越に浸る笑を崩さない冷羅魏は、鎌を両手で握り、上段で構える。
そして迫る翔の一撃を、全力の魔力で迎え撃つ。
「おらっ!!」
漆黒の一閃と、翔の全力がぶつかり合う。
「ぐぅぅっ!!」
「いいぜ!! もっとだ!!」
光と闇がぶつかり合い、激しい爆発の閃光が、世界を包んだ。
ルチア=ダルクを救うための戦いは、始まったばかりだった――――――。
ページ上へ戻る