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久遠の神話

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最終話 あらたなはじまりその二

「そうよね」
「うん、持ってるよ」
「お父さんとお母さん試合が終わったらすぐに帰るけれど」
「若し遅くなったらな」
 父も息子に言う。
「その時はな」
「家に帰ってだよね」
「ああ、自分で何か買ってな」
「それか家にあるインスタントラーメンなり食べておいてね」
 そういったものを夕食にしてくれというのだ、要するに。
「じゃあ今日はな」
「そういうことでね」
「わかったよ、じゃあ食べ終わってからね」
 それからとだ、上城も答えてだった。
 彼は昼食を食べた後で歯を磨いて顔を洗ってから家を出た。そうしてそのうえでだった。
 駅前で樹里と合流した、その時に。
 丁渡コズイレフと会った、その彼がだった。
 上城に対してだ、穏やかな微笑みでこう言ってきた。
「元気そうだね」
「はい、この通り」
 上城も微笑みで彼に応えた。
「元気にやっています」
「終わったね、全部」
「そうですね、これで」
「もう僕はね」
 コズイレフは微笑みのまま上城に言った。
「戦うことはないから」
「剣士としては」
「うん、君ともね」
 戦わないというのだった。
「そうなるね、だからもう」
「こうしてお会いしても」
「意識することはないね」
「身構えたりとかはですね」
「ないよ」
 そうしたことがだ、全くというのだ。
「二度とね」
「もう戦いも終わって剣士ではないですから」
「お互いにね。じゃあ僕はね」
 また自分から言うコズイレフだった。
「これから友達と一緒に遊びに行くよ」
「大学のお友達とですね」
「そうだよ、やっぱりいいよね」
 晴れやかな笑顔だった、これ以上はないまでに。
「友達や家族と一緒にいられるって」
「そうですね、じゃあ」
「またね」
「はい、また」
 こう二人で話してだった、そして。
 コズイレフはその場に来た友人達と笑顔で何処かに行った、上城は樹里と共に彼を見送った後電車に乗った。そうして。
 二人で車両の中で並んで座り話をしようとした、しかし。
 ここでだ、今度はだった。
 同じ車両に入って来た二人に会ってだ、彼等は目を見張った。
「あれっ、工藤さんに高橋さん」
「どうしたんですか?」
「ああ、ちょっと今日はな」
「これから一佐のお家に行くんだ」
 二人は笑顔で上城と樹里に答えた。
「もうな」
「それでなんだ」
「そうですか、ですから」
「電車に乗られて」
「ああ、そうだ」
「それで今から行くんだよ」
 そうだとだ、二人も答えるのだった。
「戦いも終わったし」
「それのお祝いにね」
「一佐が奥さんの料理を振舞ってくれる」
「そう言ってくれたんだ」
「それでお料理は」
 上城は二人にその料理のことを尋ねた。 
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