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少年少女の戦極時代Ⅱ

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禁断の果実編
  第84話 それでも飛べる


 街のパトロールはビートライダーズの大事な役目だが、人である以上、食事をとらなければ活動できない。

 よって戒斗は、持ち回りの都合で時間が重なった咲と共に、“ドルーパーズ”に足を運んだ。
 正確に言うと、運ばされた。理由は単純、咲が「おなかすいた」と言って戒斗を見上げたからだ。恨めしげに。

「よ、いらっしゃい」
「わーい」

 咲はおぼつかない足取りでカウンターチェアによじ登った。戒斗は、咲の隣に腰を据えた。

「注文は何にするよ」
「あたし、パフェがいい~」
「パフェじゃあ腹膨れねえぞ」
「あまいものが食べたいの。なんか、つかれてるから」
「しょうがねえなあ」

 何かと言いつつも客のオーダーはきっちり聞くのが阪東である。

「戒斗は?」
「コーヒー」
「飯も食え」
「……チキンライス」
「パフェとコーヒーとチキンライスね。少々お待ちくださいっと」

 坂東が奥に引っ込んだ。戒斗も諦め、通信機をテーブルに置いた。


 注文の品が来るまで、戒斗と咲の間に会話はなかった。
 というよりも、会話したくとも、咲が眠そうにしていて会話できそうになかった。

「眠いんなら寝とけ」
「…ん……ねて、ない」

 パフェと、チキンライスとコーヒーを、阪東が持ってきた。物音に反応して咲が目をぱちりと開いた。

「わーい」
「……本当に寝てないか? お前」

 互いにスプーンを持って、自分のメニューを食べ始める。
 だがすぐに咲は舟を漕ぎ始める。

(だから眠いなら寝ろと言ったのに)

 咲がこくりと舟を漕いだ拍子に、スプーンが頬を掠った。生クリームが咲の顔についた。

 赤いオーバーロードとの戦いで倒れて以来、咲はこうして疲れた様子でいることが増えた。湊はヒマワリアームズの副作用だと言った。

 今、咲が変身に使っているヒマワリのロックシードは、戒斗が与えた物だ。初めてのインベスゲームで戦利品としてくれてやった。ランクも低い、あの頃は何の価値もなかった錠前。

 戒斗が気まぐれに与えた力が、咲の体を苛んでいる。枷となり、重石となり――

「それでも飛べるんだな、お前は」

 戒斗はスプーンを置き、ナプキンを取って咲の頬のクリームをぬぐってやった。


 そこで店のドアが開いた。入って来たのは葛葉紘汰だった。

「紘汰。どうした。何か食ってくか?」
「あー……じゃあ戒斗と同じの」

 注文を受けた阪東が再び引っ込んだ。

 紘汰は当然のように咲の隣に座る。ちょうど咲を挟んで戒斗と紘汰が並ぶ形となった。

「黄金の果実って何だろうな」
「どうした。藪から棒に」
「サガラが言ってた。世界を救いたければ、黄金の果実を手に入れて支配者になれって。でも俺、それがどういうことなのか全然分からないんだ」

 横を見る。隣の咲はスプーンを握ったまま沈没していた。紘汰も気づいたらしく、咲の手からスプーンを取って、ナプキンの上に置き直した。

「相変わらず小さいことで悩んでるんだな」
「いや全然小さくないだろ!」
「黄金の果実がどんなものであれ、究極の力であることは確かだ。俺はそれを手にする。そのためなら、誰とだって戦う」

 例えば隣で眠る室井咲だろうが、悩み濃く俯く葛葉紘汰であろうが。 
 

 
後書き
 咲を挟んで戒斗と紘汰でした。
 きっとストレートに言われたら戒斗さんは断れないと思いました。→「おなかすいた」
 ちなみに何故咲と戒斗が二人でいたかというと、パトロールで咲一人が子供なので、必ず誰かと二人以上で巡回するという取り決めなのです。

 痛みこそサガラのおかげで?なくなったものの、眠くてしょうがないという症状が出るようになりました。
 紘汰、戒斗に加えて咲まで何かのフラグ?が立つ。それが木崎流。 
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