少年少女の戦極時代Ⅱ
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禁断の果実編
第82話 vsデュデュオンシュ! 翼を借りて
再び眠りに落ちた咲の傍らに座っていた紘汰に、初めての通信が入った。
《湊よ。高司さん、聞こえる?》
「湊さん」
《――この通信機、高司さんのじゃなかったかしら》
「ああ。舞は休憩。今は俺が代わり」
《そう。じゃああなたに伝えればいいのかしら。オーバーロードらしき影を見たわ。タワーから見て南西にある交流会館前の広場よ》
「! 分かった。すぐ行く」
紘汰は一度だけ咲をふり返った。
簡易ベッドの横に膝を突き、咲の額に手を置く。
(これ以上、咲ちゃんにヒマワリアームズを使わせない。敵は全部俺が振り払う)
決意新たに、紘汰はガレージを飛び出した。
紘汰は湊に示された場所に着いて、すぐに湊と合流した。
「ここよ」
と、言ったきり無駄口を叩かない湊に、紘汰は居た堪れないものを感じ、つい口を開いた。
「なあ。何であんたはユグドラシルを裏切ったんだ?」
「気になる?」
「そりゃ仲間になってくれるのはいいけど、理由が分からないと安心できないっていうか」
「裏切ったわけじゃないわ。あっちに見捨てられて、こっちも見限ったってだけ」
会話しながらも、紘汰も、湊も、周囲の警戒は怠らない。
「それに、ここには戒斗がいるもの。――私は力を求める人が好きなの。どこまで行けるか、見届けたくなる」
「力なら、何でもいいのか」
すると湊は警戒を解いて、いささか不機嫌さを浮かべて紘汰をふり返った。
「君はどうなの? その力で何をするの?」
「みんなを守る」
「“みんな”ってどこからどこまで?」
全く想像しなかったとは言えない、だが想像を拒んできたシミュレーションを突きつけられ、紘汰は狼狽した。
「同じビートライダーズの子たち? 街の全ての人たち? 世界中の人間?」
「そ、そんなの」
世界など紘汰の手には負えない。だから街の人々と答えようとして、しかし思い留まった。どこからが境界線か、紘汰自身にも分からなかったのだ。
「やっぱりね。あなたでは戒斗には勝てない」
「戒斗と戦う必要なんてない!」
「ほんっとに甘いのね。知恵の実は一つしかないのよ。戦い取る覚悟がないなら、食われるだけよ」
湊は言うだけ言って紘汰に背を向けた。
(突き放してるんじゃないって分かってる。湊さんは湊さんなりに俺を心配してくれてる。でも、俺が守りたいのは本当に“みんな”で……)
その時だった。鬱金色のオーバーロードが現れたのは。
鬱金色のオーバーロードは、波上の剣を揮って紘汰と湊に襲いかかった。
紘汰たちは何とか剣撃を躱し、二人してそれぞれのロックシードを開錠した。
《 オレンジ 》《 レモンエナジー 》
《 ピーチエナジー 》
「「変身!」」
紘汰をレモンの陣羽織が、湊を桃の鎧が覆い、鎧武とマリカへ変える。
鎧武とマリカはソニックアローを携えて鬱金色のオーバーロードに斬りかかった。だが、派手派手しい外見とは裏腹に、鬱金色のオーバーロードは弓撃を素早く捌き、鎧武とマリカを剣状のソニックブームで吹き飛ばした
『ぐあ!』
『ああ!』
鬱金色のオーバーロードが標的にしたのはマリカだった。鬱金色のオーバーロードが連続してマリカに斬りつける。
マリカは地面に転がり、その拍子に変身が解けた。
『湊さん!』
次に鬱金色のオーバーロードが標的にするのは鎧武――かと思いきや、鬱金色のオーバーロードは鎧武まで後一歩というところで、交流会館の屋根に跳び上がって姿を消した。
「私は大丈夫! 追いかけて!」
倒れたままながら湊は叫んだ。
ここで鎧武は考える。走って追ってもいいが、それだと鬱金色のオーバーロードが罠なり用意した場所に誘い込まれるかもしれない。ならば。
鎧武はカチドキロックシードと極ロックシードを取り出し、バックルにセットし、鍵を開けた。
《 ロック・オープン 極アームズ 大・大・大・大・大将軍 》
変身を終えて、鍵を回す。
《 ヒマワリフェザー 》
咲がまとう物より小さな機動翼が背中と足に装備された。鎧武は地面を蹴って空へ飛び上がった。
(さすがに咲ちゃんみたいには飛べないか。せいぜいジャンプの飛距離が伸びた程度。多分この鍵で無理に制御してるからだ。でもこれでアイツの頭上は取れる!)
交流会館のテラスまで舞い上がる。
案の定、沼地色の何かがあった。鎧武はそれを飛び越し、鬱金色のオーバーロードに直接上から無双セイバーで斬りつけた。
『何!?』
『はあああ!!』
無双セイバーの一斬は見事に鬱金色のオーバーロードに対して決まった。
後書き
斬月・偽の登場なしにさくっと決まりました。戦闘に期待してくださった読者の皆様、申し訳ありません<(_ _)>
いえね、この後ちゃんと火縄DJ大橙銃で決めたりとかあるんですが、尺の都合が……
月花の機動翼、正式名称ヒマワリフェザーは、咲以外の人間では制御できないという部分を書きたくてこういう描写になりました。
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