| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

万華鏡

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第八十一話 寮生活その九

「一体」
「えっ、部長さんですけれど」
「普通に」
「そうお呼びしていいんですよね、部長さんで」
「そうですよねえ」
「ええ、いいわよ」
 宇野先輩は五人に問題ないと答えた、だがだった。
 ここでだ、こうも言ったのだった。
「最近あんた達部長も副部長も名前で呼んでないわね」
「そういえば」
「そうよね」
「書記さんもね」
「お名前で呼んでないわよね」
「そうだよな」
 五人も言われて気付いた、このことに。
「最初の頃はお名前だったけれど」
「今はね」
「まあ私達二年生も部長って呼んでるけれどね」
 宇野先輩自身もだ、実際に今もそう呼んでいる。
「けれど名前で呼んでもいいのよ」
「別にいいんですか」
「そうお呼びしても」
「福園ちゃん、高橋ちゃん、植田ちゃんってね」
 部長、副部長、書記の三人の苗字を呼んだ。
「それでもいいのよ」
「ちゃん付けはともかくとしてですね」
「お名前でお呼びしてもいいんですか」
「そう、下の名前でもいいわよ」
 こちらも問題ないというのだ。
「紗英ちゃん、美恵子ちゃん、香織ちゃんってね」
「そこもさん付けで」
「そうお呼びしても」
「いいから、あの娘達も別にそれで怒ったりしないから」
「お名前で呼ばれても」
「それでもですね」
「そう、いいから」
 だからだというのだ。
「そのことは覚えておいてね」
「わかりました、じゃあ」
「そのことも」
 五人も納得した、そしてだった。
 その話をしてからだった、五人は充分汗をかいたところで。
 一旦サウナルームを出て汗を流してからまた水風呂に入り再びサウナルームに入った、そうしてまた水風呂に入り。
 最後は湯舟に入った、そこで宇野先輩はまた五人に言った。
「こうしてね、全力で走った後は」
「身体をほぐすんですね」
「お風呂で」
「そうすれば筋肉痛になってもね」
 それでもだというのだ。
「かなりましだから」
「そうなんですね」
「これで」
「お風呂はいいわよ」
 実にしみじみとした言葉だった、いささか親父めいてもいるだろうか。
「身体が綺麗になって心がリラックスするだけでなく」
「身体をほぐしてもくれる」
「それがお風呂なんですね」
「シャワーはただ綺麗になるだけよ」
 身体が、というのだ。
「気分転換になるかも知れないけれど」
「身体はほぐれない」
「それで心もですね」
「お風呂程にはね」
 リラックスしないというのだ。
「少なくとも私はそう思うわ」
「リラックスですか、まずは」
「それですね」
「そうよ、リラックスよ」
 それがあってこそ、というのだ。
「まずはね」
「身体もだけれどね」
「だからお風呂はいいんですね」
「シャワーよりも」
「私夏もお風呂よ」
 暑いあの季節でもだというのだ。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧