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Ball Driver

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第一話 帰ってきた男

第一話 帰ってきた男


南十字島、ここは地上の楽園だ。
暖かくて、海は宝石のように輝いていて、緑にも溢れている。
美しい光と太陽の島。
俺は帰ってきた。
旅に出たのは、いつか逞しくなって帰ってくる為だ。
そうして俺は帰ってきた。
年がら年中“青い春”のこの島に。


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※この物語では、男女の体力差を無いものとします。ありえない事ですが、そこはもう何とか前提から何とかして下さい。
スタドラのキャラが野球します。男女関係なくやっちゃいます。
少し本作の設定とズレるのは許して下さい。




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南国にも、春という物はやってきて、桜は咲き、木の芽は芽吹くのだが、しかしそれらは4月を待つことなく過ぎ去って、雪解けはないし、まぁつまり、入学式の時には辺り一面、まるで5月か6月のように青々としているという事だ。

(……久しぶりに帰ってきてみると、あっついなぁ〜)

島に唯一の教育機関、南十字学園の制服に身を包んだ権城英忠は、丸3年ぶりの南十字島の春にふっかり辟易していた。島外からの編入組と一緒に船に揺られてやってきて、12年をずっと過ごしてきた生まれ故郷だというのに、今はあまり声をかけてくれる者も居ない。東京での3年間を経ても、この島には田舎なりに沢山のものが揃ってるという認識は変わらない。しかし、やはり田舎だ。離島だ。一度出て行った俺は、やはりよそ者なのか……

「あら。権城さんでは無いですか。」

グダグダと余計な考えを巡らせて一人神妙な顔をしていた権城だが、そんな風に疎外感を意識化した途端に、話しかけてくれる人が現れた。
その人は、校門前のベンチに腰掛けていた。長い栗色の髪をなびかせ、メガネの奥の目は実に優しい。

「山姿ジャガー!良かった、誰にも声かけられないから、みんなすっかり俺の事忘れちゃったのかと思ったよ!」
「それはやはり、権城さんが中学の3年間で様変わりしたからですよ。実に精悍になって…」

権城とジャガーは、幼少期からの付き合いである。実家が近所だった。ジャガーは“お勤め”があるとか言って、小学校も後半になると、だいぶ遊ぶ回数は減っていたのだけれど。
しかし、三つ子の魂なんとやら、誰よりも先に権城に気づいてくれたようである。

「また一緒になって、嬉しいです。権城さん、伝え聞く所によりますと、野球がかなり凄かったみたいではないですか。島から出て行って大活躍してるから、そのまま帰ってこないのかと思いましたよ。」
「いやいや、俺はこの南十字学園で甲子園に出たいから、中学は都内に行って、強豪クラブで鍛えてきたんだ。最初から戻って来る気満々だったよ。」
「まぁ、それは……立派な夢ですね。」

誇らしげに語る権城を見るジャガーの視線は優しく、そしてどこか生暖かかった。
その視線には、まだ権城は気づいていなかった。



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「ちょっ!?南十字学園の生徒は運動部と文化部の掛け持ちが基本で、それぞれの部は週3回の活動だってェ!?」
「あれ?権城さん、知らなかったんですか?南十字学園は文武両道を是としていますので、運動部と文化部両方に所属して、平等に活動しなければならないんですよ?」

入学式諸々が終わってから、さっそくクラブ見学に回ろうとしていた権城は、HRで配布されたプリントを見て愕然としていた。
ジャガーはそんな権城を、微笑ましく見ている。

「こんな規則あるの知らなかったんだけど!えぇ、これマジかよ……」
「まぁ、クラブ活動が始まるのは中学からですから、その時ここに居なければ分かりませんよね。」

割と本気でショックを受けている権城の肩を、ジャガーはポンポンと叩いた。

「でも、高校生のうちに色々しておいて損はしないと思いますよ。野球ばかりが人生ではありませんし。それに、活動が週3回というだけで、別に甲子園を目指しちゃいけないという訳ではありませんから……」
「ま、まぁな!そうなんだけどな!」

ジャガーの言いたい事は権城も分かった。
確かに、週3でも甲子園には行ける。……可能性はある。ゼロではない。
別に、毎日毎日ストイックに土に塗れる事でしか、結果は出ないという決まりは無いんだし。
……中学の時の同僚が進学した、帝東や吉大三の話を聞いた後では、やたらとヌルい話をしているように感じられるけど。

「ほら、そんな風にお口を開けてないで、早くグランドに行きましょうよ!今日は確か野球部の活動の日ですから!」
「あ、ああ!じゃあ早速……」

やや強引にジャガーに背中を押されて、権城はグランドへと向かう。これが、権城英忠の、南の島での青い春の幕開けだった。




 
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