問題
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第七章
第七章
「今の軍隊ではね」
「けれど自衛隊ってあまり数多くないんでしょ?」
「そうだよ」
当然のことながらこれもわかっている構成だった。
「それでもそれで充分なんだ」
「数が少なくてもなの」
「守るだけだからね。攻める必要もないし」
これが数が少なくてもいいという理由だった。理由もちゃんとあるのだ。
「だから少数精鋭でいいんだよ。問題は」
「その質を支える装備と動かす法整備ということね」
「そういうこと。それが問題なんだよ」
困った顔をしてパソコンのデータを打ちながら彩名に答える。
「装備の整いが悪いのと高いのと法整備が全然駄目なのと」
「いざって時に動けないのね」
「全然動けないよ」
はっきりと彩名に対して述べた。
「動こうにも。法律がないから」
「あっ、そうね」
構成に言われてあらためて気付いた。
「自衛隊だってお役所だからね」
「そうなんだよ。お役所なんだよ」
そこを強調する。自衛隊もまたお役所であることを。
「間違っても無法集団じゃないよ。それじゃあテロリストだよ」
「だから法律がないと」
「いざという時動けないんだよ。そのテロリストが何かした時も」
「何処かの国がミサイル撃った時も」
「一発なら誤射かも知れないじゃ話にならないの」
とあるマスコミの記事を批判する。こうした考えは完全に受け入れないのだった。それどころか頭から全否定していた。そうした考えへの批判的考証もサイトに載せている。
「それがわかっていないんだよ」
「そういうことなのね」
「何もかもね」
何もかもとまで言った。
「徴兵制だって少し考えたらわかるし」
「考えられないのね」
「それがどうかしているんだよ。それをどうかしたくて」
「サイトも開設して勉強もして訴えてるのね」
「うん」
彩名の言葉に頷く。
「それでも。反応がなくて」
「このままずっと反応がないのかしら」
「そうは思いたくないよ」
彼は言った。
「それだけはね」
「信じているの?」
「信じていたい」
返事は曖昧で微妙なものだった。
「それだけだよ。それだけ」
「わかったわ。それじゃあ」
彩名は彼の言葉を受けてさらに問うた。
「どうするの、これから」
「これから?」
「そうよ。これからどうするの?」
それを彼に問うのだった。
「今の日本のそうしたところを変えたいのよね」
「そうだよ」
その気持ちは変わらない。本気だった。
「絶対にね」
「その為に。これからもこうしたことを続けていくのね」
「いや」
だがここで。彼は言うのだった。
「もう一つ考えているんだ」
「もう一つって?」
「防衛省に入るよ」
ここでまた一つサイトのリニューアルを終えた。これは順調に進んでいる。
「防衛省なのね」
「結局。それしかないと思うんだ」
今度はマウスを動かしながらの言葉だった。動かしながら首を捻る。
「やっぱり。中から変えていくのがね」
「それなのね」
「勉強するよ」
真剣な言葉だった。それを発する顔も。どちらも真剣なものだった。
「入る為にね」
「しかも偉くなるつもりなのね」
「偉くならないと変えられないよ」
やはり真剣な顔と言葉だった。
「結局のところね。変えるのには中から変えないと」
「中から」
「そういうこと。だからやってみるよ」
「わかったわ」
彩名もその言葉を受けて微笑むのだった。受け入れる微笑みだった。
「応援させてもらうわ」
「うん。やってみるよ」
「背中は任せて」
二人で笑顔になって言い合う。これからのことに不安は感じている。しかしそれでもだった。その不安を心の中に収めて今は進むことにしたのだ。不安に包まれていても何もならないことがわかっているから。だからこそ今一歩を踏み出すのだった。少しでも前へ。それだけだった。
問題 完
2008・4・16
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