ドラゴンクエストⅤ〜イレギュラーな冒険譚〜
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第十八話 決別
前書き
今回、死の火山編です!
「天空の盾だけど、炎のリングと水のリングさえ集めれば、フローラと結婚しなくてもよくなった」
「よかったじゃん」
私たちは今宿屋にいて、情報交換を行っているところだった。
「ルドマンさんに全て話したら『炎のリングと水のリングさえ持ってきたら、フローラと結婚しなくともよろしい』って言ってくれた。どうやら僕のことが気に入ったらしい。ミレイは?誰かに連れて行かれたようだけど」
「デボラの事?あれは旅のことを話しただけで」
「そうか。じゃぁ、そろそろ行こうか」
「うん」
私たちは旅支度を整え、死の火山に向かった。
*
「ミレイ殿、魔法に乱れが見えますぞ」
「えっ、乱れ?」
魔物との戦いが終わった直後にマーリンに言われた。
「左様。魔法というものは、使い手の精神状態に左右されるものでございます。つまり、使い手の精神状態がよい状態であったら、魔法は本来以上の力を発揮し逆に使い手の精神状態が悪かったりする場合は、魔法は本来未満の力しか出せず失敗したり暴走する場合もあるのでございますがミレイ殿、何かありましたかな?」
何か大ありだった。デボラの事だった。デボラが『影響』によって現れた人物なのは間違いない。
そして、この世界に転生したときに私が背負った役目は『影響』を消すこと。
つまり。『影響』を消すことでデボラも消えてしまうことにはならないか?
私は友人を失った。この世界で始めての友人のデボラが消えてしまうことに私は耐えられない。
だから私は思ったんだ。『だったら元の世界に帰らなくてもいいかな』と。
私はあの世界ではとっくに死んだんだ。それに小池さんは『元の世界に戻れない』といったんだ。生まれ変われないわけじゃあない。
アベルたちとの旅をこのまま続けていこうと、そう思っっていたのが魔法に反映されたらしい。
「あー。たぶん私緊張しているんだよ。だから魔法に乱れが生じたんだ」
「そうでございますか」
ごめんねマーリン。嘘ついちゃった。
*
ゴウッ!という音を立て燃え盛る火炎が襲い掛かってきた。
「ヒャダルコ!」
私のヒャダルコが燃え盛る火炎と激突し軽い水蒸気爆発を起こした。
「スクルト」
スラリんちゃんがスクルトを唱える。
キメラのメッキーが冷たい息を吐き、私はヒャダルコをそれに上乗せした。
が、魔物_溶岩原人の三位一体の炎に対しては炎を軽減するといった効果しかない。
そして炎が私たちを襲った。
「ベホイミ」
私はやけどの痛みをこらえアベルたちを回復していく。
だが、私たちの全快を悠長に待ってくれる様な溶岩原人ではない。
再び三位一体の炎が私たちを焼いた。
『デボラ。ごめん私ここで死ぬかも』
溶岩原人の炎で私は戦えなくなっていた。アベルたちが回復しようにも溶岩原人がそれを阻む。
『けど、デボラが消えちゃうよりはいいでしょ。お願いデボラ。私が死んでも悲しまないで』
『影響』がなんであるかわからないし、消すにもどうすればいいのかわからない。
だが、私のしたことが何かの弾みで『影響』を消すことになったら。
それを思うと怖かった。だったらこの世界で死んでしまってもかまわない。けど、
『生きたい』
そして私は気づいた。結局のところ私は『影響』を消したせいで自分の心のよりどころを失うことが怖かったのだ。折角死ぬまでにやればいいという猶予が与えられているにも関わらず、私は怯え、『影響は消すがデボラはこの世界に残す』ということが思いつかなかった。
私だって子供じゃない。そんな都合のいいことが起こるわけがない。
けど、そんな都合のいいことを起こすためにがんばったっていいじゃないか。だから、まずは。
『この戦いを終わらせなきゃ』
私は痛みで思い通りにならない体に鞭打ち、立ち上がる。
そのとき、私の心にある呪文が浮かび上がった。それが、どのような呪文であるかはどうでもいい。
私はそれがこの戦いを終わらすことを願って、ただ唱える。
「ヒャダイン」
冷気が溶岩原人に集約、そして氷柱が溶岩原人を貫いた。
後書き
今回はミレイの役目についてスポットを当ててます。
ちなみにシリアスを入れたのは喪失、気まずさ以来でしょうか。
溶岩原人「急にヒャダインとか使ってきたコワイ」
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