アラガミになった訳だが……どうしよう
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派遣社員になった訳だが……どうしよう
14話
キュウビから命からがら逃げたあの後、体を元に戻すまでアラガミを喰った。そして、サカキに頼みロシアに滞在する期間を十年に延長してもらった。
将来、日本はアラガミ集まってアラガミ動物園とでもいうような状態になるのだが、今はそれほどでもないしロシアの方がヴァジュラなどの大型アラガミは多い。キュウビは縄張りにさえ入らなければ問題はないので、北へさえ行かなければ遭遇することもないだろう。それに俺もまだまだ調べたい事が幾つかあるからな、それを調べるにはこの無駄に広いロシアは非常に適している。
俺の体のオラクル細胞は総量だけで言えばウロヴォロスのようなアラガミと比べても遜色はないだろうし、それだけのアラガミは既に喰らってきた筈だ。だが、戦力となると話は違ってくるだろう。
ウロヴォロスはオラクル細胞をあの巨体に使うことで触手という近距離、中距離での圧倒的な武器と遠距離でのレーザーを手に入れた。それは進化という最適化をもってして手に入れた力だろう。
俺の場合、その場に合わせて変化させる事で戦っているのだが、言ってしまえばそれは急拵えの武器でしかない。恐らくキュウビの攻撃も本物のボルグ・カムランの盾なら破壊されたとしても、消し飛ばされるようなことにはならなかっただろう。では、俺はどうするべきか?
俺にとっての最適化な変化を探す、それだけだ。今まで複数のアラガミ能力を行使することはあっても、その能力を合成するということはしなかった。単純にする必要がなかったという理由もあるが、難易度も中々に高いのだ。分かりやすく言えば、複数使う事は元々あった道具を手にとって使うことと何ら差は無いが、合成となると形状、剛性、柔軟性、素材の兼ね合いなど様々な要素を考慮して全て自分で変化させなければならない。
しかし、それはあらゆるアラガミにおいて俺だけが持つ武器となり、俺の強みとなるだろう。それに自由度で言えば神機を上回り、メンテナンスも不要という武器としての優位性もある。
故にこれは挑むに値する挑戦であり、挑まなければならない挑戦なのだ。
で、まず俺の使える素材はオウガテイル、コクーンメイデン、ザイゴート、コンゴウ、シユウ、グボロ・グボロ、サリエル、ヴァジュラ、ボルグ・カムラン、ウロヴォロスが少し、こんな物か………兵器の塊のようなアラガミであるクアドリガも喰っておきたかったが、数が少ないのか情報がまわってこない事が残念だ。まぁ、無い物ねだりは良くないので何かを作り出すとしよう。
まずは遠距離だ、基本は遠距離で戦い隙があれば近距離でトドメを刺すというのが俺の戦い方なので、致命傷は期待しないが動きを鈍らせるような牽制としての攻撃がいい。それも精密射撃よりも面制圧に向いているショットガンのような方がいい、そもそもアラガミとの戦闘で狙いを定めている時間などないからな。
だが、ショットガンとなると遠距離での威力の低下が問題だな、いくら当てれたとしても豆鉄砲では何の意味もない。しかし、ショットガンで遠距離の威力を上げるとなると、射出時に必要なエネルギーを溜める時間が必要だ。それでは牽制の意味がない。
かと言って火炎放射のような攻撃は燃費も飛距離も最悪だ……
さて、連射性、射程に優れ、ある程度の攻撃力を持ったショットガン……夢のような話だが、それを実現するためにわざわざ考えているのだ。
まぁ、これは一旦置いておこう。今は浮かびそうにもないし、それ以外の能力も考えなければならないんだ。
中距離は……さっきのショットガンが完成すれば問題ないか。精々、自分の周囲を一掃する機能を求めるくらいか?
となると………尻尾だな。
ゲームでも随分と広い範囲を攻撃出来たし、威力も中々だった。人型を維持しなければならないという妙な変化の制限のお陰で尻尾は無理、だが鞭という形であればどうだろう?試しに両肩から触手のような物を出して見たところ、ザッと両肩合わせて20m近くを攻撃範囲とする事ができ、体を回転させればそれなりの威力もあるようで近くにあった岩が砕けていた。
アラガミ相手には不十分な威力だが、試作の段階でこの威力は幸先が良いと言えるだろう。ある程度任意で動かせることもあり、拘束用としても十分に使える。と、なると振った時の威力の向上が目標だな。
重量を増やして威力を増やす……のはダメだな。機動力が落ちては非常に厄介だろうし、いっそ刃でも付けてみるか?いや、中途半端ではダメだ。
鞭そのものを刃とするべきだが……紙の様な薄さまでに薄くして密度を上げればいいのではないか?そうすれば斬れ味と強度の両立が可能であり、重量の増加も大した事にはならないだろう。伸縮自体は瞬時に行えるので普段は縮めて衣類の一部の様にできる、必要に応じて伸ばせばいいので一々変化させる手間が省ける上に、密度を上げることで防御にも転用できるな。
素材はヴァジュラのマントをベースに、柔軟性の優れたシユウの翼で加工といったところか。ヴァジュラベースならば雷を纏わせることも可能だろうし、シユウの翼なら熱もある程度耐えれるだろう。
さて、最後は近距離だな。
これに関しては様々なバリエーションが欲しいところだ、防御を砕く打撃、バランス性に秀でた斬撃、急所を突いてトドメを刺す刺突と最低三種は欲しい。
打撃は単純に硬度を活かして殴るのが一番俺に向いているだろうから、ボルグ・カムランの盾をベースに籠手、手甲あたりを作るとして、それだけでは火力不足だろう。
となると、打撃の威力を上げるのに手っ取り早い方法としては拳を加速させて、その勢いのまま叩きつける事だ。硬度の方は元々硬いボルグ・カムランの盾をオラクル細胞の密度を上げれば、殆どのアラガミに硬度で上回られることは無くなるだろう。
で、速度の話だが、噴出口をコンゴウの圧縮空気では足りないのでそこにシユウの火を加えて爆発させることで、ブースターの様にして速度を上げるとしよう。それにグボロ・グボロの能力で水を加えれば水蒸気爆発で更に速度が………ってそこまでいくと籠手の方が先に壊れそうだな。水蒸気爆発の威力は凄まじいので最後の手段として使うにはいいだろうが、普段からやるには少々負担が大きい。切り札として使うとして、選択肢に含めるか。
次は、刺突だ。
斬撃よりも考えるのは簡単だからな。ボルグ・カムランの尻尾である針を上回る刺突に適した武器はアラガミで他にないだろうし、これをベースに改造する事は決定しているのだから考えるのは幾分か楽だ。それで、俺の中で浮かんだ貫通力のある物と言えば杭打ち機、つまりパイルバンカーだな。個人的には"射突型ブレード"、"とっつき"と言いたいが………うん、ゲームが違うのでやめよう。
幸いにも爆発力は先程の籠手で準備は整っているし、それで強化したボルグ・カムランの針を打ち出せばいい。威力は十分だろうが、針の強度に不安が残るのでそれは色々な実験で調べるとしよう。
どうせここまで複数の機能を籠手に持たせるんだ、籠手だけじゃなくて脚鎧も作って両手両足を武器にしてしまえ。
さて、最後は斬撃系だが………イマイチこれと言った刃がないのだ。どのアラガミもそう言った刃は爪や牙があるので必要とせず、剣やらを持っているアラガミがいない……というか、オウガテイルの尻尾位しか剣として向いてない。
正直、斬撃はマントでいいんじゃないかとすら考えている。
まぁ、これで大まかな武器の構想は出来ただろう。銃の方はサカキから銃型神機を貰って、それを喰ってバレットの操作方法を覚えてからにしよう……あれからいくら考えても俺の理想を満たせそうな考えが欠片も浮かばん。世の中にはバレットを作ることに命をかけている様な奴もいるのだから、そう言う奴らの研究をアテにすれば多少は理想に近づけるだろう。
さて、それでは銃以外の実験といこうか。
近くにコンゴウの群れでがいるので、彼らには実験台となって威力の程確かめさせてもらおう。探すのに若干手間は掛かったが、その甲斐あって十体近い大きい群れを発見できた。少々、安全性やらに不安はあるものの人間には時として歩くことよりも、走ることから始める勇気が必要なのだ。
まずは打撃からだ、四肢を変化させた具足に空気を溜め込ませて準備を整える。近づいて来たコンゴウは四匹、丁度いい数と言えるだろう。正面の一匹の大振りなパンチを懐に潜り込んで回避してから、右腕の具足に点火して爆発を起こしてっ!?
か、肩が外れるかと思った……いや、威力は十分どころか拳当たったコンゴウの顔面付近が爆散する程なんだが、強すぎる勢いのせいで俺の肩を尋常じゃない衝撃が襲った。少々、火力を抑えて使わなければ、俺の体が途中で壊れかねん。
幸い具足の硬度は充分だったようで、具足には一切の傷もなく鈍い銀色の輝きを放っている。
今度は空気の圧縮率を下げて解放するとしよう、先程の半分くらいを目安にして………右腕で他のコンゴウの腹部をアッパー気味に殴りつけると、コンゴウの体が二つに裂けたぞ。俺への負担は気にするようなレベルではないので、空気の圧縮率はこの辺りが丁度いいのだろう。
しかし、最初の圧縮率のままで水蒸気爆発のブーストを加えたならば………確実に片道ロケットパンチ確定だな。
残りの二匹にはパイルバンカーを試させてもらおう、これならば最悪杭が飛んでいくだけなので遠慮は必要ないだろう。片方に狙いを定めて一気に距離を詰めると、先程の二匹の末路を見ていたコンゴウは両腕を自分の体を守るようにクロスさせた。防御してくれるなら寧ろこちらとしてはありがたい、このパイルバンカーは防御を突き破る為の武器なのだから!!
具足の先端から杭を出現させて、コンゴウの腕に突き立てる。流石はボルグ・カムランで作っただけはあり、杭は抵抗無くコンゴウの腕に刺さった。後は先程の拳同様、圧縮空気に点火するだけだ。恐らく、先程の拳同様に攻撃対象である両腕は吹き飛ばせるだろうし、上手くいけばコアを貫けるだろう。
………うん、結果として俺の予想は大きく外れた。腕は吹き飛ばず、綺麗に両腕を貫通した上で杭はそのままパイルバンカーから飛び出して、俺の狙ったコンゴウのコアを貫いても止まらずに後ろで様子を見ていたコンゴウを貫いた。
いや、先程とは逆に随分と綺麗に倒せたので問題はないんだが、心の準備をしていた分拍子抜けとでも言うべき感覚だな。重ねて言うが威力に問題も不満もないぞ。
二匹の惨殺死体と二匹の胸に穴を開けて殺された死体を見て、残りのコンゴウは一斉に背を向けて逃げ始めた。距離としては脚部の解放で追いつける距離だが、このマントの性能試させてもらおう。
マントを最大限伸ばした状態で、フィギュアスケートを真似て勢いをつけてから空中で体を回転させる。マントは体の回転に従って、横一閃に周囲のあらゆる物を無差別に両断した。
性能は十分、だがやはりと言うべきか規模が大きすぎるな。新しい武器の攻撃力での不満は一切ないのだが、些か過剰な威力と規模であることは確かだ。
今後はその辺りを重点的に改造するとしよう。
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