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美しき異形達

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第十五話 白と黒の姉妹その五

「そうだろ」
「ええ、お金がないのは命がないのと同じっていうし」
「あたしのところの孤児院は八条グループが経営しててそんなに苦しくはなかったけれどさ」
 財政的にだ。
「やっぱり無駄遣いはよくないしさ」
「そう、それはね」
「海軍さんは無茶苦茶だったらしいけれどさ」
「お金の使い方が」
「馬鹿みたいにでかい戦艦や空母作ってな」
 他にも色々と建造していた、大和だけでも相当なものだった。
「美味いもの作りまくってな」
「御飯よかったんですよね、海軍って」
「何か山海の珍味陸軍さんとの会議の前に出してさ」
 そして、とだ。伸子にも話す。
「陸軍の人怒らせたんだってさ」
「それどうしてですか?」
「国民が戦争中で質素に耐えているのに何事かって」
 当時は臣民であったが薊は今の言葉で言ったのだ。
「それで怒ったらしいんだよ」
「ううん、戦争中のお話ですか」
「陸軍さんは質素だったらしいけれどさ」
「海軍さんは食べるものにもだったんですね」
「金使ってたらしいんだよ」
「それはあまりよくないですね」
 伸子もこう言うのだった、尚この激怒した陸軍士官の名前を辻政信という。頑健な肉体と勇敢な精神、鋭利な頭脳を持っていたが空気を全く読まず協調性が皆無であり尚且つ己を基準として作戦を考えるという参謀としての適正はあまりにも疑問符のつく人物だった。
「それは」
「だろ?院長さんも言ってたんだよ」
「お金は無駄遣いするな、ですか」
「そう、実際に孤児院だしさ」
 如何に経済的には困っていないとしてもだ。
「節約第一だからな」
「だからですか」
「ああ、孤児院に勤務している人も宗教の人が多くて」
「そうそう、八条大学って宗教学部もあるのよ」
 朱美がここでこのことを指摘した。
「仏教や神道、キリスト教に天理教ってね」
「色々な宗教を勉強出来るんですよね」
 伸子もその朱美に応える。
「それで、ですよね」
「そう、八条グループって宗教の人にも縁があるから」
「孤児院でもですね」
「そう、協力を頼めるのよ」
「だから孤児院でも働いているんですか」
「そうだと思うわ」
 朱美はこの予想を伸子に話した。
「多分だけれど」
「そうなんですね、ですから」
「ああ、あたしのいた孤児院でもな」
 そこもだとだ、薊は伸子のその問いに答えた。
「そうだったんだよ」
「やっぱりそうですか」
「そうだよ、それでだったんだよ」
「成程、そうですか」
「牧師さんと神主さんが一緒にいたりな」
 薊のいた孤児院では、というのだ。
「そういうのが普通だったよ」
「それうちの大学の宗教学部もだから」
 朱美は薊にそのことも話した。
「神社にお寺に教会があってね」
「ああ、そういえばそういうの色々あるよな」
 薊も校内のランニングで見ていてそういうことは知っている。
「この学園って」
「かなり色々なものがある学園だけれど」
「天理教の教会もあるし」
「宗教関係も色々あるわよ」
 実際に、というのだ。
「うちの学園は」
「だからあの孤児院もか」
「色々な宗教の人がいたのね」
「どの人もいい人だったよ」
 薊は孤児院の思い出を感慨を込めて述べた。
「というかついこの前までいたんだけれどさ」
「そうよね、じゃあ今も」
「ああ、あそこがあたしの故郷だよ」
 そうだとだ、薊は笑顔で朱美に話すのだった。 
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