| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

久遠の神話

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第百八話 最後の戦いその十二

「彼等も、特に水の剣士はね」
「戦いたくはない」
「傷つける痛みを知っているからこそ」
 セレネーは上城を見た、その彼を。見ればじっと自分を見上げている。やはり案じている顔で。
「そうなんだよ。他にもそうした剣士がいたね」
「ええ、これまでにも」
「彼等も同じだったんだ、今の君と」
「戦いたくなかった」
「だから水の剣士も願ったんだよ」
 この剣士の戦い自体の終結、それをというのだ。
「だからもう」
「これで」
「終わろう」
 また言う声だった。
「そうしよう、僕のことはいいから」
「そうなのね、もう・・・・・・」
「君の僕への愛はわかったよ、それで満足だよ」
 エンディモンはこうも言った。
「だからこれでね」
「もうこれで」
「さようなら」
 遂にだ、エンディミオンはセレネーにこの言葉を告げた。
「君に愛さて。僕は本当に幸せだったよ」
「エンディミオン・・・・・・」
「だからもうこれで。さようなら」
 最後にこう言ってだった、そうして。
 エンディミオンはその気配を消した、後には何も残っていなかった。
 セレネーは一人になった、そして一人になったところで。
 聡美達に顔を戻してだ、俯いて言った。
「水の剣士の願いを聞き入れます」
「では」
「終わりました」 
 今完全に、とだ。セレネーは自ら言った。
「もうこれで」
「そうですか」
「はい、長い戦いでしたが」
 これで、というのだ。
「もう終わりました、そして私も」
「お姉様は」
「もう。エンディミオンもいないから」
 月、自身が司るそれを見上げての言葉だった。そちらに顔を向けて。
「何をしても」
「そうですか」
「暫くの間は」
 聡美を見てだ、こう言うのだった。
「月、狩猟のことを貴女に預けて」
「そうしてですか」
「姿を消すわ」
 そうするというのだ。
「何時までそうするかわからないけれど」
「そうされますか」
「ええ、その間色々と考えたいから」
「わかりました、では」
「私は罪を犯してしまっていたのね」
 こうもだ、セレネーは言った。
「剣士達を戦わせて」
「はい」
 このことについてはだ、智子が答えた。普段は凛としている智子も今は俯き沈痛な面持ちである。その顔でセレネーに言うのだった。
「確かに。そのことは」
「彼等は罪を犯したけれど」
「それはあくまでその生だけのことだったのね」
「転生をすれば罪は消えていたわね」
「そうでした、私達も申し上げるのが遅れました」
「いえ、本当は気付いていたわ」
 ここでだ、こう言ったセレネーだった。
「それでも私はあくまで。エンディミオンと共にいたいが為に」
「彼等を戦わせたと」
「そう、そうしたことは罪ね」
 このことをだ、セレネーは一人になった時に自覚したのだ。そうなったことを理解してそうしてこう言ったのである。
「私はその罪とも向かい合うか」
「そうされますか」
「その為にも。今は」
 どうするか、聡美は妹にも等しい三人の女神達に言った。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧