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戦国異伝

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第百六十九話 三方ヶ原の戦いその二

「敵もな」
「そうした状況だと、っていうんだね」
「ああ、やばいだろ」
 こう言うのだった。
「武田だからな、相手は」
「強いよね」
「純粋に兵の強さなら織田より遥かに上だよ」
 武田の兵の強さはよく知られている、それで言うのだった。
「正直に言ったな」
「おいらもそう思うけれどね」
「徳川よりもな。ましてな」
「まして?」
「あの武田信玄だからな」
 彼のことも言うのだった。
「甲斐の虎、しかもその下には二十四将もいるんだぞ」
「揃ってるね」
「真田幸村に十勇士もな」
 彼等もだというのだ。
「相当なものだよ」
「おいら達のことにも気付いてるかな」
「気付いていないとおかしいんじゃないの?」
 ここでこう言って来たのは大蛇だった、小柄な身体で駆けている。
「やっぱり」
「そうなるんだ」
「これだけ勢いよく駆けていたらね」
 それこそだというのだ。
「向こうも気付くよ」
「武田も馬鹿じゃないから」
「そうだよ、おいらが見てもまずいよ」
 大蛇もからくりと同じ意見だった。
「今のこの状況はね」
「そうだよね」
「そもそも数が少ないよ」
 武田と比べてというのだ。
「圧倒的にね」
「こちらは一万二千」
 拳も言う。
「対する武田は四万五千」
「ここでぶつかれば」
 どうなるか、大蛇が言うことは最早自明の理だった。
「ましてや武田信玄と二十四将、それと精兵が相手だよ」
「負ける」 
 あや取りがぽつりと述べた。
「そうなる」
「そうとしか考えられないでやんす」
 煙もそうなるとしか考えられなかった。
「悪い状況が重なり過ぎているでやんす」
「今の徳川殿は周りが見えておられぬ」
 ヨハネスも甲冑の中から述べる。
「これは非常に危うい」
「家康殿大丈夫かね」 
 風は駆ける中で仲間達に問うた。
「正直相当やばいだろ」
「討ち死にも否定できねえな」
 からくりはあえてこの最悪の事態を口に出した。
「冗談抜きでな」
「そうだね、今は」
「だからここはな」
「ここは?」
「わし等が一肌脱ぐか」
 からくりはこう言うのだった、飛騨の仲間達に。
「真田十勇士もいますし」
 命は彼等の名前を出した。
「楽には見られませんね」
「ではここは」
 鏡も進みつつ述べる。
「私達が徳川殿の後詰になりましょう」
「そうする?」
 獣も言ってきた。
「僕達で武田を止める」
「いや、それよりも術を使った方がいいだろうな」
 だが、だ。ここでこう言ったのは煉獄だった。 
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