魔法少女リリカルなのは ~優しき仮面をつけし破壊者~
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オリジナルストーリー 目覚める破壊者
オリジナル~StrikerS 日常編
66話:海水浴だよ、全員集合~!(PART2)
前書き
なんかこんなに早く書けちゃいました。
「『第一回スイカ割り王は誰だ!』決定せ~ん!」
「「「「イエ~イ!」」」」
スイカを片手で抱え、木の棒を担ぎながら高らかに宣言する。
俺のテンションについてきたのは、なのは達地球生まれ組。
「スイカ割り…?」
「スイカを持って、どうするのだ?」
「う~ん…」
「割るんだから、棒で叩くとか?」
頭の上に?マークを浮かべるのは、こっちの文化に疎いミッド・ベルカ組だ。
「そうだね。ヴィータちゃん当たり」
「正確には目隠しをした上で、離れた場所のスイカまで行って棒で叩くんや」
「叩く前に何回か回ったりする事もあるんだけど…」
ふっ、だが今回はそんなお遊び程度のレベルではないのだよ。
「まぁミッド・ベルカ組のこっちの文化に慣れてもらうのも兼ねて、折角だから一番でも決めようなんてことだ」
「折角だからって……」
「また、今回の決定戦で設定するルールは、日本すいか割り協会の公式ルールに沿ったものとする」
「そんな協会あるの!?」
そんななのはのツッコミは置いておいて、
「本来のルールでは叩く人一名、サポーターが数名とされているが…今回はそれぞれを一名ずつ、二人一組でチームを組んでもらう」
「チーム対抗ってことね」
アリサがそう言うと、この場にいるメンバーがそれぞれ思い思いに顔を合わせる。
「そんで役職を交代して、一チーム二回で一個のスイカを叩いてもらう。二人でスイカを叩いて、スイカの状態で点数をつける」
今回その点数をつける審査員は、鮫島さんとノエルさん、桃子さんの三人に頼んでいる。
「叩けるのは、当たるまでに三回。三回棒を振るか、一分半が経過した時点で終了だ」
ん?と頭をひねるのが数人。まぁ、そんなんで止まるつもりはないが。
「んで点数で順位をつけて、スイカ割り王を決める。優勝チームには何か景品みたいな物を用意しようと思うんだが―――」
「じゃあその景品は、この旅の間限りの『絶対命令権』一回分なんてどう?」
「「「「「「「―――っ!?」」」」」」」
美由希さん、なんて事を言うんですか!?そんなのやったら大変な事になりそうだってこと、わかるでしょ!?
ほら見なよ、なんか皆の目が鋭くなっちゃったよ!?しかもシグナムやヴィータまで!?なになに、どういうこと!?
「い、いや…景品は別の物にしても…」
「皆、早速チーム決めや!急げ~!」
「「「「「「おぉ~!」」」」」」
何この結束力!?
んで、止める暇もなくチームが決まっていき、早速第一チームから始まった。
「頑張ろう、フェイトちゃん!」
「うん。行こう、なのは」
第一チームは仲良しコンビ、なのはとフェイトの組み合わせだ。
最初に棒を掴むのは、運動神経があまりないなのはから。
「それじゃあ、回すよ~」
「うん、お願いお姉ちゃん」
目隠しをさせて、美由希さんがなのはの肩を掴む。ここから本来、二回と三分の二回分回転させるのだが……
「にゃぁあぁああぁぁあぁぁぁ!?」
美由希さん、それは明らかに回し過ぎです。もう十回転ぐらいはしてるんじゃないか?
「にゃぁぁ、目が回って…へふら…へらほれ……」
「な、なのは頑張って!右、もう少し右!」
ふらっふらになりながら歩き出し、フェイトの指示になんとかついて行こうと頑張る。
いや運動神経がよくもないなのはが、うまい具合にスイカの前まで何とか辿り着いた。フェイトとの信頼も、結構なものだなと思う。
だが、これで終わらないのがなのはだ。
「え、えいっ!」
―――ポスッ
「「「「「「………」」」」」」
大きく振り上げた棒を一気に振り下ろすんだが……足元にあるのに、見事にそのすぐ脇に棒が突き刺さった。
なのはが振り下ろした棒は、まっすぐにはいかず若干弧を描くような軌道で振り下ろされたのだ。そして見事にスイカを素通りし、何もない地面に到達したのだ。
これには一同、何も言葉を発せなかった。
「あ、あれ…?」
「な、なのは!まっすぐ、まっすぐ振り下ろせば当たるよ!真下にあるから!」
フェイトの言葉にもう一度棒を振り上げ、一気に―――
「えいっ!」
―――ガツッ
今度は見事に命中。ヒビを入れるまでに至った。
審査員の三人は2点・2点・3点の計7点。これで次に繋がった。因みに3点は桃子さんだ。ちょっと笑ってた。おそらく我が子の行動が、面白かったのだろう。
次はフェイトの番。フェイト自身が運動神経のいい方であることは周知の事。これは期待できるか?
「こ、これは…結構難しい…」
「フェイトちゃん、もう少し前だよ!」
フェイトも美由希さんに結構回され、平衡感覚が乱れる。それでもなのはよりもすんなりスイカの前まで行き、棒を振り下ろす。
元からヒビが入っていたこともあり、見事にスイカが割れた。飛び散る破片も少なく、断面もそこそこ。
審査員の点数は、8点・6点・7点で計21点。なのはのを合わせて28点となった。
続いて第二チームはアリサとすずか。最初に叩くのはすずかだったのだが……
「えいっ!」
―――ボカッ!
女の子らしい掛け声とは裏腹に、見事一撃でスイカを割って見せた。どうやら一個分先に割って、点数を稼ぐ作戦らしい。
点数は9・8・8で計25点。かなりの高得点だ。アリサの作戦勝ち、狙い通りなのだろう。
次にアリサ。こちらは無難に叩き、赤い部分が見える程度まで割れた。
点数は7・5・6で18点。合計で43点、一気にトップ……と言っても、まだ二組目だが。
三チーム目ははやてと龍也という異色の組み合わせ。まぁちょっとした余りものズと言ったところだ。
最初に叩くのは龍也。こちらもアリサ達と同じようにするつもりらしいが……
「龍也、お前ハンデとして片手でやれよ」
「………」
回りは女子ばかりなのだ、ハンデぐらいあっても―――
「はっ!」
―――ボカッ
………うん、まぁ一撃だったな、うん。見事に割れてる。
点数は8・7・9の24点。個人最高のすずかにはギリギリ届かず。
「おっしゃ~、頑張るで~」
お次ははやて。肩を回しながら定位置に着く。
龍也の適切な指示もうまく働き、はやても一撃でスイカを砕く。6・7・6で19点、合計で43点で第二チームと同一1位となった。
最後のチームはヴィータ、シグナムのベルカ騎士組。最強候補筆頭だ。
最初にヴィータ。しかしやはりこのチームは歴戦の勇士だ。ハンデとして回転数はなのは達の倍、棒は片手で持つ事、そしてサポーターによる指示もなしという事にした。
だが、そのぐらいで揺らぐベルカの騎士ではなかった。
「これぐらいの回転、私は慣れっこだ」
そう、ヴィータは元々攻撃パターンの中で回転することもあり、倍にしたぐらいじゃ全然効いてない風だった。
「うぅりゃぁああ!」
案の定ヴィータはふらつくこともなく辿り着き、しかも回転してから叩くという大技をもやってのけた。
スイカは見事に割れ、点数は9・8・9の26点と、見事にすずかを超えて個人最高記録に。
しかし、それ以上だったのはシグナムだった。
「……門寺、本当にこの棒を使っていいのだな」
「ん?まぁ規定内の長さだから、大丈夫だと―――」
「わかった」
そう言ってビュンビュンと片手で棒を振るうシグナム。
美由希さんはさっきのヴィータの事もあり、倍以上にシグナムを回した。
「ふぅ~……」
何やら呼吸を整えて気合を入れているようで、シグナムはゆっくりと…しかしまっすぐにスイカの元へ向かう。何故か足元はふらついていない。何この二人、ちょっとおかしくね?
そして、その時はやってきた。
「はぁ~…」
スイカの前に辿り着いたシグナムは、今度は息を吐き、ゆっくりと棒を掲げる。
残り三十秒と言ったところで、一気に棒を―――
「はぁっ!」
―――斬っ
…………あれ、何か効果音が違う気が……
そう思った瞬間、スイカは見事に真っ二つとなり、ビニールシートの上に転がった。
その断面は……まるで包丁で切ったかのような、綺麗な断面だった。
「ふむ……目隠しというのも、面白いものだな。今度この状態で訓練をしてみようか」
ヤバいこの人、超人だ。なんで棒でこんな斬り方できんの?
皆が同じように唖然とする中、点数は文句なしの全員10点。ヴィータのも合わせて56点、単独首位となった。
―――スイカ割り王決定戦、優勝者ヴィータ・シグナム組となった。
その後、スイカはスタッフ(選手含めて)全員で食しました。旨かったね。
後は夕暮れ時まで、海水浴を楽しみまくった。
アリサとフェイトと龍也に競争を挑まれたり、戻ってきたらスイカ割りに参加していなかったカオルがディズ●ーラ●ドのシン●レラ城並のハイクオリティ砂のお城を作り上げていたり、勇気試しに少し高めの崖から海にダイブしたり……
「あ~あ!楽しかった~!」
「砂がジャリジャリ…」
「そりゃ海に来ればそうなるだろうよ」
三人がそれぞれ仕切られているシャワー室で水を浴び、砂を洗い流す。
「にしてもあれは凄かったな。カオルの城」
「いや~、それほどでも…」
元より芸術系が大の得意であるカオル。この夏に至るまでにも、美術部などの部活からの勧誘を受けたり、コンクールに出す作品に選出されたり、噂を聞くだけでも色々あったらしい。
「ふぅ~…先上がってるよ~」
「お~」
それでもカオルは部活の勧誘には一切応じず、コンクール出場も断り続けた。なんでも本人曰く―――
『だって皆といた方が楽しいんだもん』
だそうだ。そんなんでいいのか、このバカは。
「あいつにとっては大した事でもないんだろ」
「確かにな」
乾いた笑いをしながら、俺はバルブを捻ってシャワーを止め、タオルを手に取る。
「じゃあ龍也、俺も先に上がるが…大丈夫か?」
「髪が長い者の性だ。慣れてる」
「そうかい。それじゃあ後よろしくな~」
そう言って俺はシャワー室を後にした。
しかし、その先には悪夢が待っていた。
「あ、おかえり士君」
そこにいたのは、紛れもなく俺を死に追いつめた悪夢。それが今まさに、再誕しようとしているのか。
「な、なんでここにいるんですか―――シャマルさん…」
俺に名前を呼ばれた悪夢―――またの名をシャマルさんという悪夢は、えへっと可愛げに照れてから、
「だって、私だけ海行けないとか寂しいから…来ちゃった♪」
「いや来ちゃったじゃなくて…」
別に来るのは問題ない。だが来るタイミングがいけなかった。
それは丁度、桃子さんや士郎さん達が加わった厨房が、全員分の料理を作るべく腕を振るっている時間なのだ。つまりはそれにシャマルさんが下手に加わったりしたら―――
しかし、その考えすらも甘かった。
「皆海水浴で疲れてるだろうから、私が特製栄養ジュースを作ってみました♪」
そう言って手で促す先には、丸テーブルを囲みながら座るなのは達と、そのテーブルの上にある……何やら緑色に淀む液体―――シャマルさん曰く〝ジュース〟というものが人数分置かれていた。
シャマルさん、何故に―――何故に一番チョイスしちゃいけないものを選んだ!?ダメだよ合成ジュースとか!一番ダメなやつだよ!テニヌじゃないんだから、そんなもの作らないでよ!
「「「「「………」」」」」
先に座っているなのは達も、沈黙を保ったまま動かない。若干顔を俯かせて、一向に前を見ようとしない。現実から目を逸らしている。
どうやらアリサやすずかもシャマルさんの料理技術については、知っていたようだ。いや、もしかしたらただあの〝ジュース〟の雰囲気に飲まれているだけかも。
いや、気持ちもわかる。誰だって死にたくはないだろう。
だがこれを……この状況をどうやって切り抜けるか。それは誰かを生贄にするしか、今の俺では思いつかない。しかし彼女らにその役をやらせる訳には―――
「え?シャマルさんこれ飲んでいいの?」
「―――はっ!」
そこで突如として俺の意識を浮上させたのは、いつの間にかやってきていたカオルだった。
彼はまっすぐにテーブルへ向かい、目の前の〝ジュース〟に手をかけた。
そう、何を隠そう…奴はシャマルが〝ダークマター製造者〟であることを―――まだ知らない。
「カオル待っ―――」
「いっただっきま~すっ!」
ゴキュッゴキュッと豪快な音を立て、グラス内の液体を一気に飲み干していくカオル。周りに座るなのは達も目を真ん丸にしてカオルを見入る。
そして遂に、最後の一滴まで飲み干したカオルは、グラスをテーブルの上に置く。
「うん、なんか最初さっぱりした感じガして、ソノあとはマッタリしなガらコッテリしてテ、ソレデいてフルーティ―――
ドサッ……
「か、カオル?カオル!?―――カオルゥゥゥゥゥ!!?」
遅かった、何もかも遅かった!
俺はすぐにカオルの元へ向かい、イスから倒れた体を起こす。
「しっかりしろカオル、しっかりするんだ!」
若干の意識はあったのか、カオルは震える手を拳に変え、天に向かってゆっくりと突き上げた。
「我が生涯に……一片の未練―――いっぱい、あるんだけど…(パタッ」
「カオルゥゥゥ!?」
「未練あるんかい!?」
カオルの手が落ち、俺が叫ぶと同時にはやての鋭いツッコミが飛んだ。流石関西生まれ、いいツッコミだ。
「僕が死んだら墓に入れないで…千の風になるの、夢だった…から…」
「あぁ…わかった」
「……何処からどう突っ込めばいいか、わかんないよ…」
諦めたらダメだ、なのは!試合終了になっちゃうよ!
「そ、そんなに美味しくなかったんですか…?」
そんな騒動の合間に、シャマルさんがテーブルの上のグラスを手に取る。勿論中身は入って―――ってまさかっ!?
「シャマルさん待っ―――」
「んっ……」
その後当然シャマルさんも倒れ、なんか大騒動に。
後からやってきた龍也は、その騒動の光景を見て―――
『なんてカオスな……』
とぼやいたそうだ。
シャマルさんもカオルも意識を取り戻し、皆でまったりゆったりと夕食を楽しんだ。
その後は日の沈んだ浜辺で、花火大会と洒落込んだ。
「見よ、僕の〝六爪流〟の花火の舞を!レッツパァリィィィ!」
「なんの、ならば俺は―――〝十爪流〟だ!」
「士、花火を口に銜えるの危ないよ!?」
しかしやっぱり花火となると、多刀流遊びをしたくなるのは男の性。
カオルは親指と人差し指の間以外の指の間に一本ずつ、両手で計六本を。俺は指の間四つに加え、口で花火を外側に向けた状態で両側に二本銜えて、計十本だ。
いや、でもこれ…意外と熱い……
まぁ他に誰もいないのも幸いして、皆でワイワイと花火をやっている。
線香花火でどれだけ耐えられるかの勝負をしたり、ねずみ花火で皆を驚かしたり、数発のロケット花火をカオルに向けて放ったりと、夏の風物詩を満喫していった。
「最後に、主役の登場よ!」
手持ちの花火が切れそうになったその時、アリサがそう言って指を鳴らすと、何やら大筒らしきものと大きな玉を持った鮫島さんと、それらしい恰好をしたその他数名がやってきた。……っておいおい、まさか…!
「打ち上げ花火でも打とうってんじゃねぇだろうな?」
「その通りよ!花火のラストはこうでなくっちゃ!」
ほんとに打ち上げるつもりだったよこの娘!大丈夫なの、これ!?普通こういうのって資格とか何か必要だったりしない!?勝手に打ち上げちゃっていいの!?
「大丈夫、鮫島は色んな資格を持ってるそうだから」
アリサの言葉に反応して、セッティングをしている鮫島さんは親指を立てる。
流石バニングス家の執事!俺達にできない事を平然とやってのける!そこにシビれる憧れ―――ゴホンッ!さて、ネタは程々にして。
まずは一発目の花火が撃ちあがり、空に大輪の花を咲かせる。
「わぁ~!」
「綺麗…!」
「三年前のこと、思い出すね」
「そうだね~」
そう言えば、フェイトと会って間もないときに、フェイトとアルフの記念日に魔力花火を打ち上げたっけか。
今となっては懐かしい思い出だが、もう三年経ってるのか……
「あ、また上がった!」
空には二発目、三発目と次々に花火が咲いていく。咲き誇る花火の光が見上げる面々の顔を照らし、そして儚く消えていく。
「た~まや~!か~ぎや~!」
「風流だね~」
潮風が吹く浜辺で、日本の風流を感じながら……旅行一日目を終えた。
後書き
誤字・脱字等ありましたら、感想よろしくお願いします。
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