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異伝 銀河英雄伝説~新たなる潮流(ヴァレンシュタイン伝)

作者:azuraiiru
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異聞 第四次ティアマト会戦(その1)




帝国暦 486年 8月17日   シュワルツ・ティーゲル  フリッツ・ヨーゼフ・ビッテンフェルト



グレーブナー、オイゲン、ディルクセンの三人が会話をしている。三人の前に置いてあるテーブルには大きな段ボール箱が四つも乗っていた。その段ボールの中から三人が一枚ずつハガキを取り出していた。見たくない、聞きたくない、だがそれ以上に大事なのは喋らない事だ……。

「随分と要望書が来たな、ディルクセン少佐」
「そうですね。副参謀長、これ全部確認するんですか」
「その必要は無いだろう。それに第一無理だよ、段ボールだけで百箱以上ある。とりあえず適当に選んで良いのが有ったら終わりだ。それで構いませんよね、参謀長」
「ああ、構わんよ。オイゲン中佐」
「それを聞いて安心しましたよ」

適当に終わらせろ、早くするんだ。

……七月初旬、帝都オーディンを出発した遠征軍は総司令官ミュッケンベルガー元帥の指揮の下、イゼルローン要塞を目指し進軍している。総艦艇数五万五千隻の大艦隊だ。その大艦隊の中にはミューゼル提督率いる一万四千隻の艦隊も含まれている。あと五日もすれば遠征軍はイゼルローン要塞に到着するだろう……。

「それにしても話になりませんね、どいつもこいつもビキニとかタンキニの水着をって書いてある。あとパレオも多い。この手の露出系は駄目だと言ったはずなのに」
「水着は却下だ。ヴァレンシュタイン少佐は帝国軍人だぞ。気持ちは分かるが戦場で水着など何を考えている」

「戦場だからだろう。そうは思わんか、オイゲン中佐」
「それは、まあ。……いっそ帝国も反乱軍のように前線に女性兵を出してはどうです、グレーブナー参謀長。そうなれば我々もこんな苦労をせずに済む」
「同感ですね、そうなれば司令部が少佐を独占しているなどという非難を受けずに済みます」
「まあ難しいだろうな、五百年近くこれでやってきたんだ。それを変えろと言われても……」

女性兵の最前線配備は俺も大歓迎だ、そうなれば俺の艦だけこんなトラブルに巻き込まれずに済む。

……俺、フリッツ・ヨーゼフ・ビッテンフェルト少将率いる二千隻の艦隊はミューゼル提督率いる一万四千隻の分艦隊として一角を担っている。ミューゼル艦隊には俺の他にもオスカー・フォン・ロイエンタール、ウォルフガング・ミッターマイヤー両少将が千五百隻を率いて分艦隊司令官として参加している。俺は中央の先頭集団に、左翼にミッターマイヤーで右翼にロイエンタールだ。

「今度はバニーガールですよ……。一体何を考えているんだか」
「こっちは猫耳を付けさせろと書いてある。猫耳で天気予報をやるのか? 論外だな」
「それを言うなら兎耳と網タイツはもっと論外です」
「ヴァレンシュタイン少佐が休みで良かったよ、こんなの見たらどう思ったか……」

じゃあ聞かされている俺の気持ちはどうなんだ? 俺はこの艦隊の司令官だぞ?

……ロイエンタールもミッターマイヤーも非常に優れた用兵家だ。俺もそれなりに戦闘指揮については自信が有る。俺達三人はこの戦いでは必ず勝利に貢献し、ミューゼル提督に俺達を認めてもらわなければならない。そしてその自信は有る。

特に俺は宇宙最強の艦隊を作る、正規艦隊司令官になりたいとミューゼル提督に言ったのだ。それにふさわしい能力を持っていると証明しなければ……。先頭集団か……。先鋒は武人の誉れ、俺の艦隊の破壊力、突破力をミューゼル提督の目に焼き付けてやる。

「こっちは白衣と聴診器を希望すると書いてある。天気予報で白衣と聴診器?まさに病気だな」
「看護師って事ですかね」
「聴診器だから女医さんだろう」
「頭に注射でも射って貰えばいいんだ。少しは賢くなるだろう」

良い考えだ、これ以上悪くなるかもしれないというリスクさえなければな。ついでにお前達も注射してもらえ。

……残念なことにミューゼル艦隊は必ずしも軍上層部から厚遇されていない。ミューゼル提督若く昇進が早すぎる事も有るが例のミッターマイヤー少将がコルプト大尉を射殺したこと、それをミューゼル提督が庇った事が響いている。今回の戦いに参加できたのは例のコルプト大尉の一件を不問に付す代わりに功績をたててこい、それでチャラにしてやる、そういう事だろう。

「ツインテールか、発想は悪くないが少佐の髪の毛はそんなに長くない。無理だろうな」
「ヴァーチャル・ガールの影響だな。あの中にツインテールの女の子がいるだろう、かなりの人気らしい」
「なるほど、それでか」

ツインテール? かなりの人気? オイゲン、卿は何故そんな事を知っている?

……ミューゼル艦隊の司令部はミューゼル提督の他には艦隊参謀のメックリンガー准将、ブラウヒッチ大尉、そして副官のキルヒアイス中佐が居るだけだ。一万四千隻の艦隊を運営するにはいささか人手不足で心許ない。しかしこれでも改善された方だ。

「メガネをかけさせろか、やっぱりメガネっ娘は根強い人気が有るな」
「女性の方は余りメガネを好みませんけどね」
「かけているのはアクセサリー代わりだよ。機能性を取るならコンタクトだからな」

馬鹿め、メガネとロリと巨乳は女の三大セールスポイントにして男の三大妄想だ。この三つを兼ね備えた女に出会えるのは四年に一度有るか無いかだろう。少佐にメガネをかけさせれば少なくとも二つはゲットだ。メイク次第では三つパーフェクトだろう。それを選べ!

……最初、ブラウヒッチ大尉は司令部には居なかった。ヴァレンシュタイン少佐が司令部の人手不足を心配してブラウヒッチ大尉の配属を人事部に依頼しなかったら司令部はメックリンガー准将とキルヒアイス中佐だけだったろう、お寒い限りだ。

「今度はブルマーか、男の欲望全開だな」
「ロングブーツと鞭よりはましですよ。ヒールで踏まれたいとか何を考えているのか……」
「だんだん酷くなるな、こっちはガーターベルトをと書いてある。うちの艦隊、大丈夫か?」

もはや何も言うまい……。

……人事部長のハウプト中将はヴァレンシュタイン少佐の依頼に快く応じてくれた。ロルフ・オットー・ブラウヒッチ大尉、なかなかの人材らしい。彼が配属されたおかげでメックリンガー准将の仕事もかなり改善された。准将は大いに喜んでいる。余程嬉しかったのだろう、彼はヴァレンシュタイン少佐だけでなく俺にまで礼を言ってきた。

……俺は准将のようなインテリタイプはどちらかと言えば苦手なのだがその一件以来彼とは親しくしている。よく一緒にヴァレンシュタイン少佐のケーキを食べるのだが口髭をはやした彼がケーキを美味しそうに食べるのは見ていて楽しい。微笑ましくなる。それに彼は優れた戦略家で色々と勉強にもなる。

「エプロン姿か……。スイーツを作ってくれと書いてある」
「料理か……、悪くないな」
「手作りのスイーツを司令部だけで食べているのは狡いと書いてありますよ。確かに一理ある」

「……これで行くか?」
「そうですね、悪くないと思います。それなりに時間を稼げますし少佐もケーキ作りなら負担に感じずに済むでしょう」
「小官も同意します」

どうやら話しが終わったようだ。グレーブナー、オイゲン、ディルクセンの三人が俺を見ている。
「閣下」
「何だ、グレーブナー」
「例の兵士達からの要望ですが」
「決まったのか」

兵士達からの要望……、俺の艦隊の兵士達が司令部に要望を出してきた。ヴァレンシュタイン少佐の朝の挨拶だが、時間が短い、他にも何かさせろと言うものだった。そこで兵士達から要望を取ったのだが……。

グレーブナーもオイゲンもディルクセンも日常業務よりもこっちに夢中になった。俺がそれを咎めても“兵の士気を保つため”と言われればそれ以上は口を噤まざるを得ない。俺に出来るのは連中の変な病気が俺にうつらないように近づかない事だけだ。

「ヴァレンシュタイン少佐にケーキを作ってもらおうと思います」
「……そうか」
何故メガネを選ばない……。

「朝の挨拶の時間帯を伸ばして二時間程度の特番として放送します」
「……そうか」
メガネ……。
「宜しいでしょうか」

さてどうする? ここはさりげなく、さりげなくだ。
「あー、ヴァレンシュタイン少佐の同意を得る事無しではいかんぞ、グレーブナー。それと無理強いはいかん」
「分かっております」

「それとどうせならメガネでもかけさせてはどうだ、喜ぶ奴もいるだろう」
「確かに」
俺の宇宙最強の艦隊が……。涙が出そうだ。でもメガネっ娘……、ちょっと楽しみかもしれない……。いかん、悪い病気がうつったみたいだ。



帝国暦 486年 8月25日   イゼルローン要塞  第三十九会議室  オスカー・フォン・ロイエンタール



第三十九会議室、ミューゼル艦隊の士官に宛がわれた部屋の一つだ。この部屋にはささやかながら戦術シミュレーションの設備が有る。俺、ミッターマイヤー、ビッテンフェルト、そしてお天気女の四人がこの部屋に居た。

本来なら士官クラブで過ごすべきなのだろうがあそこは門閥貴族出身の士官達の溜まり場だ。俺達にとって居やすい場所ではない。特にコルプト大尉を殺したミッターマイヤーにとっては居辛い事このうえ無しだろう。そしてお天気女は女性だ。見知らぬ男性士官の中に女性一人では居辛いのだろう。常に俺達と一緒にこの部屋にいる。

「突出したはいいが見殺しされたのでは堪らんな」
シミュレーションマシンを操作しながらミッターマイヤーが口を開いた。それを聞いてトサカ頭が後に続いた。
「後方から、前方に展開する邪魔な味方ごと敵を撃つ。このイゼルローンでは味方殺しは珍しい事じゃない」

「俺達は二重の意味で貴族達に恨まれている。提督自身、それと……」
「俺か……」
「今じゃ俺達だ。ロイエンタールも俺も首まで漬かっている」
ビッテンフェルトの言葉に皆が顔を見合わせた。お天気女も憂鬱そうな表情をしていた。

ドアが開いて一人の士官が姿を見せた。傲慢そうな表情の男だ。何処かで見たことが有る様な気がする、しかし初対面のはずだが……。
「ミッターマイヤー提督に一言伝えたい事がある。コルプト子爵だ、聞いたことが有るだろうが……」

皆が顔を見合わせた。そしてコルプト子爵に視線を向けた。なるほど、初対面のはずだ、しかし記憶に有るのも当然か。写真で見たのだ、それで覚えていた。年恰好からすると兄か……。一人頷いているとコルプト子爵が話し始めた……。



帝国暦 486年 8月25日   イゼルローン要塞  ラインハルト・フォン・ミューゼル



部屋でキルヒアイスと話をしていると外から女性の悲鳴が聞こえた。聞き間違い? キルヒアイスの顔を見た、キルヒアイスも俺を見ている。聞き間違いじゃない、そう思った時また女性の悲鳴が上がった。ここにいる女性と言えばヴァレンシュタイン少佐だけだ。少佐の悲鳴? 彼女に何か有った?

慌てて外に出ると人が集まっている場所が有った。第三十九会議室、ミューゼル艦隊の士官に割り当てられた部屋だ、あそこだ。部屋に向かって走ると今度は女性の泣き声が聞こえた。キルヒアイスと二人で集まっている人間を掻き分ける。中に入ると蹲って泣いている少佐を抱きしめている男がいた。

「フレーゲル男爵! 卿、一体どういうつもりだ、少佐に何をした!」
俺の叱責にフレーゲルが顔を上げた。少佐を抱きしめたまま恥じ入る様子もない、殴りつけてやろうかと思った時、フレーゲル男爵が憤然とした様子で言い返してきた。

「勘違いするな、ミューゼル! 私じゃない、あの男だ!」
フレーゲルじゃない? 彼が指をさす方向を見ると一人の士官が呆然とした様子で立ち尽くしている。どういう事だ? フレーゲルが少佐を助けた? キルヒアイスも困惑している。あの男がヴァレンシュタイン少佐に乱暴をしたのか? なんだ、この男? 何処かで見た様な……。

「卿、何者だ、何処かで有った事が有るか?」
俺の言葉に反応したのはフレーゲル男爵だった。
「馬鹿か卿は! 彼はコルプト子爵だ、分かったか」
「馬鹿は余計だろう!」
「何!」
「ラインハルト様!」

キルヒアイスが俺の袖を強く引く。少しバツが悪かったがムッとしている男爵を置いてコルプト子爵を見た。なるほど確かにコルプト大尉に似ている。子爵家の当主という事は兄か? ここには大尉の復讐をしに来たという事か……。
「一体何が有ったのだ」
誰かに問いかけたわけではなかった。だがフレーゲル男爵が俺の問いに答えた。

「廊下を歩いていると突然悲鳴が聞こえた、助けてくれと言う声もな。慌ててドアを開けると彼女が服を破かれた姿で倒れていた。駆け寄ると泣きながら助けを求めてきた。子爵が乱暴しようとしたらしい……。何だその眼は? 疑うのか」
「いや、そういうわけではない」

この男が少佐を助けた? 弱みに付け込むなら有りそうだが助けた? どうも信じられない……。キルヒアイスも奇妙な表情をしている、納得がいかないのだろう。しかし少佐は抵抗していないのだ、事実か、或いは事実に極めて近いのだろう。

部屋を見渡した、今まで気付かなかったがロイエンタール、ビッテンフェルト、ミッターマイヤーの三人が居る。一体何をやっていた? 何故三人とも呆然としているのだ? 憲兵隊がやってきた、しかし俺達の様子に踏み込めずにいる。まあ確かにそうだろう、貴族二人に帝国軍大将が争っているのだ。

「ビッテンフェルト少将、一体何が有ったのだ?」
「はっ、それは」
ビッテンフェルトが困惑した表情でロイエンタール、ミッターマイヤーを見た。視線を向けられた二人も困惑したような表情をしている。どうもはっきりしない。

「コ、コルプト子爵が、突然部屋に、は、入ってきて……」
ヴァレンシュタイン少佐が話し始めた。これで何が起きたか分かると思ったが、すぐに少佐は咽び泣き話が中断した。
「フロイライン、大丈夫だ、このフレーゲル男爵が付いている。落ち着いて」
フレーゲルが少佐の背をさすっている。こいつ、どうもムカつく。

「ミッターマイヤー少将を、殺すと。戦場で後ろから撃ってやると……、弟の復讐だと言って……」
途切れ途切れの少佐の言葉に皆がコルプト子爵に視線を向けた。
「な、なんだその眼は。あの平民に復讐するのは当然だろう」

「や、止めてくださいって、頼んだんです、……そうしたら、あ、あの男の事が好きなのか、あの男と、ね、寝ているのかって……。あの男を、助け、たいなら、自分の言う事を聞けって……」
「う、嘘だ、いい加減な事を言うな!」

コルプト子爵が叫んだ。その声にヴァレンシュタイン少佐が怯えた様な表情を見せフレーゲルに縋りついた。フレーゲルの手が少佐を強く抱き寄せる。その手を離せ! 厚かましい!

「ひ、酷い、わ、私、嘘なんか吐いていません。その後、子爵がいきなり私の服を破いて……。フレーゲル男爵が来てくれなかったら、私……」
「大丈夫だ、フロイライン」
フレーゲルが囁くように少佐に話しかけると少佐が頷いた。

「う、嘘だ! その女が自分で破いたんだ! 私じゃない!」
「違います、子爵が破いたんです」
「嘘を吐くな!」
コルプト子爵が少佐に近づくと少佐がフレーゲルに強くしがみついた。またフレーゲルが少佐を強く抱きしめた。

「コルプト子爵、近づくな!」
「その女は嘘を吐いている! 私を信じてくれ、フレーゲル男爵」
「そこを動くなと言っている!」
フレーゲル男爵とコルプト子爵が睨みあっている。不本意だ、極めて不本意だ。どうしてフレーゲルが正義の味方なのだ。何故俺がフレーゲルの味方をしなければならない……。

「そこを動くな、コルプト子爵。少佐の服を調べれば全てが分かるだろう。卿の言う事が真実なら少佐の服には卿の指紋は付いていない。少佐の言う事が真実なら卿の指紋が付いているはずだ」
「そ、それは」
コルプト子爵の表情が強張った。こいつ、やはり嘘か。

「どうした、服を破いたのは少佐なのだろう? 問題は無いはずだ」
コルプト子爵の目が落ち着きなく動いている。
「……そ、その女の服に触った、……だが服は破いていない、本当だ、信じてくれ、その女が触らせたんだ」

もう少しましな嘘を吐け。
「信じられんな、卿の言う事は一貫性が無い。後は憲兵隊に任せるべきだろう。弁解はそこでするとよい」
「不本意だがミューゼル大将に同意する」
何が不本意だ、この野郎。こっちの方が不本意の極みだ。

その言葉に触発されたかのように憲兵隊が動き出した。コルプト子爵の両腕を抑え部屋を出て行く。子爵が自分の無実を訴えているが誰もそれに応えようとしない。本来なら子爵を連れて行くなど有り得ない事だが今回はフレーゲルが正義の味方になっている。憲兵隊も遠慮する必要が無いと判断したのだろう。



憲兵隊の調査は迅速に行われた。出兵前に処分をしておきたいと言うミュッケンベルガー元帥の意向が有ったようだ。少佐の服からはコルプト子爵の指紋が検出された。軍服だけでなく、シャツからもだ。誤って手が触れた等という事ではない。コルプト子爵が少佐に暴行を働こうとしたと判断された。

コルプト子爵は暴行を否定したが本人の証言が曖昧である事、またコルプト大尉の復讐を考えている事が明白な事も有り受け入れられなかった。暴行、復讐、そのどちらもがミュッケンベルガー元帥の不興を買ったようだ。

ミュッケンベルガー元帥に意見を求められたフレーゲル男爵もコルプト子爵を卑劣漢と手厳しく批判したと聞いている。子爵を処分してもブラウンシュバイク公は抗議しないという事だ。コルプト子爵は戦闘終了までイゼルローン要塞内で謹慎となった。いずれオーディンに戻ってから正式に処分が出るらしい。

ヴァレンシュタイン少佐は事件直後は沈んでいたが最近では以前のように業務をこなしている。ビッテンフェルト、ロイエンタール、ミッターマイヤーもようやくぎこちなかったがとれ以前のように少佐に接している。

フレーゲル男爵に礼を言った。面白くは無かったが少佐は俺の艦隊の士官であるから一言礼を言うべきだと思ったのだ。キルヒアイスも同意見だった。男爵の所に行くと相変わらず尊大で嫌味な応対で腹が立った。だが帰り間際に男爵は妙に真面目な表情で話しかけてきた。ヴァレンシュタイン少佐は後方勤務に戻すべきではないか……。どういう事だ? 何を考えている、フレーゲル……。


 
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