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普通だった少年の憑依&転移転生物語

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ゼロ魔編
  025 〝王権〟奪還作戦


SIDE OTHER

才人の〝俺を雇わないか?〟発言から明くる日、場所はニューカッスル城に設置されている作戦参謀室。そこで6人の男女が集っていた。

「皆、本当にいいのかい?」

机の上に、デカデカと広げられているニューカッスル城周辺の地図を見ながら、上座に座っているウェールズは机を囲んでいる──執事のパリーは別として、机を囲んでいる4人へと訊ねる。

「俺は構わない。友人に並び立てる〝力〟が有るのにも拘わらず友人をむざむざ戦場に送ったら、俺は多分一生後悔するからな。それよりも、ルイズ達は帰った方が良い。……今から〝戦争〟をするんだからな」

才人はルイズ、ユーノ、ギーシュに暗に〝ここは俺に任せてトリステインに帰れ〟と言う。

「サイトが居るところに私在り、私が居るところにサイト在り。……使い魔を残したまま尻尾を巻いて帰ったらラ・ヴァリエールの名が泣くわ! ……て云うか、サイト? 〝これ〟は、普通に考えたら逆じゃないのかしら?」

「まぁまぁ、ルイズ。サイトは使い魔ですから、ルイズの事を危険に晒したくないのでしょう。……さて、ウェールズ皇太子殿下。ここで止めて置かないと、レコン・キスタの矛先は必ずトリステインに向けられるでしょう。その為、一トリステインの人間としてレコン・キスタの暴動はここで食い止めたいのです」

「僕の言いたい事はミス・ユーノとルイズが言ってくれた。……ウェールズ皇太子殿下、このギーシュ・ド・グラモン。必ずや役に立って見せましょう!」

「……はぁ、勝手にしてくれ」

才人の言葉は才人の意図した事とは逆に働き、ルイズ達に次の戦い──ロイヤル・ソヴリン奪還戦への参加を固く決意させてしまった様で、ルイズ達の目を見て説得するのを諦めた才人は額に手を当てながら溜め息を吐き、ルイズ達──主に、主であるルイズへと参戦の許可を出した。……別に才人の許可は必要ないのだが──否、ルイズの言う通りで、使い魔と主の関係性を鑑みるなら、才人がルイズに許可を取らなければならない。

……ルイズと才人は未だに“コントラクト・サーヴァント”を執り行っていないので、〝対外的には〟との注釈は付くが。

閑話休題。

「……ありがとう。この礼は、テューダー家の名に掛けていつか必ずや返そう」

ウェールズはルイズ達の決意を聞くと、万感の表情で礼を言う。
SIDE END

SIDE 平賀 才人

あれから──ウェールズのお礼から、表立った人間の内から軍人の家系の人間を呼び寄せ、その軍人やウェールズが作戦の提案をし、ギーシュと俺がその作戦の肉付けする。次に、頭が良いルイズとユーノ、それに人生経験の多いパリーさんがその作戦の粗を探し、可能か不可能を判断する。

「……決まったね」

ウェールズが、心無しか疲れ気味に呟いた。ルイズ達に〝不可能〟を出されること幾数回。漸くロイヤル・ソヴリンを奪還する作戦が採決された。……がしかし、ウェールズはこの作戦内容にあまり乗り気じゃないようだ。

作戦も決まり、各々は戦いの準備をするため作戦参謀室から退室して行く。……そして残ったのは俺とウェールズのただ2人。

「……サイト、君には多大な苦労を掛けてしまう事になって──君の〝虚無〟に頼る事になってしまった。……本当に済まない」

「……水臭いぞ、ウェールズ。それに、俺の〝虚無〟は、前例が無い魔法なだけで、本当の〝虚無〟じゃないかもしれないんだ」

ウェールズを助ける時、“五本の病爪(ファイブフォーカス)”と“腑罪証明(アリバイブロック)”を使ったのが拙かったのか、友誼を結んだ後だが、当たり前の様にウェールズからそれらのスキルについて突っ込まれた。

……が、よもやスキルの事を言う訳にはいかなかったので、とりあえずは〝虚無〟だと嘯いた。……ウェールズはそれを聞いた時に大層なリアクションで驚いたが、ウェールズもどうして良いか判らなかったのか、その事を陛下に相談して、陛下の決断を仰いでいる状態だ。

「じゃあな。俺も眠るとしよう」

「サイトが出るなら、そろそろ僕も部屋に戻るとしようか」

因みに、明後日の作戦決行日に備えて明日一日を使い、英気を養う事になっている。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

翌々日、作戦決行日。俺は周囲から夥しいほどの期待の視線に晒されていた。……と云うのも、ウェールズが俺の、元レコン・キスタの人間を表立たせた時に聞こえていた演説がいたく気に入ったらしく、俺が音頭を取る事になってしまったからだ。

(とりあえず、言いたい事を〝それっぽく〟言えばいいか。……嗚呼、胃が痛い)

喉元に杖をあてがい、声が届かない者の為に先日と同じ様に〝拡声〟の魔法を使う。

『皆、聞いてくれ。今回の作戦の音頭を取る事になった、サイト・ヒラガだ』

――ザワ…ザワ…ザワ…

『……いいか? 続けるぞ』

やはりと言うべきか、いきなりの俺の演説にどよめきが走る。1分程どよめかせた後、聴衆を落ち着かせる。

『いきなりの演説に驚いているかもしれないし、なんで在野のメイジである俺が音頭を取るか納得出来ない者がいるかもしれないが、時間はそこまで取らせないから心して聞いてくれ。……先日も言ったことだが、相手──レコン・キスタは〝それ〟を〝虚無〟と嘯いて人の心を操り、在ろう事か人の遺骸を操る術を持っている。……このままレコン・キスタの畜生共を放置して置けば、その内に必ず──そう、必ずハルケギニアをレコン・キスタの連中が席巻する事になるだろう』

俺はここで一拍置き、更に問い掛ける。

『……それを許せるか? 赦せるか? ……許せない者、赦せない者が居るなら、武器を掲げ、声を張り上げろっ!!』

――オオオオオオオオオォォォォォォォォ!!

漢達の野太い怒声が上がる。

(効果は上々か……)

怒声もやがて治まりが着き、最後はウェールズに締めて貰うために口を開く。

『最後はウェールズ皇太子殿下に締めて貰おうか。……後は頼みますウェールズ皇太子殿下』

「ウェールズ」

「ありがとう、サイト」

後はウェールズに交代して、俺は下がる。ウェールズは俺に一礼すると俺と同じように、喉元に杖をあてがい、徐に口を開く。

『私の我が儘で音頭を取ってくれたミスタ・ヒラガに感謝の言葉を。……皆の想いは私の肌を衝くほどだった。……元はと云えば、レコン・キスタなどが出来たのは我がテューダーの不始末。自分の家の不始末は私自らが着けよう。……これは私の我が儘だが、皆…私に力を貸してくれ!!』

瞬間、比喩では無く──冗談じゃなく、城が揺れた。それくらいの声量だった。……ただ、その声は概ね野太いがそれは別に気にならず、俺のテンション及びに作戦決行に向けてのモチベーションが上がっているのが判る。

(これが〝王〟か……)

明らかに違う歓声の量。ウェールズと俺、山と平地ほどの差を叩き付けられた。……尤も、ウェールズと俺──〝王〟と〝在野のメイジ〟。それらを比較する事さえ烏滸がましい事なのだが。

SIDE END

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

SIDE ユーノ・ド・キリクリ

「見えた。あれがロイヤル・ソヴリン号か。……じゃあ、行ってくるな。……“腑罪証明(アリバイブロック)”」

サイトはロイヤル・ソヴリン号を視認すると、音も無くスキルで転移していった。

「……凄いわね〝虚無〟って」

ルイズはスキル──〝虚無〟を見て、口をあんぐりと開けながら徐に呟く。

「……そうですね。……あ、合図ですね」

「……そうね。……一昨日の私達の苦労は一体何だったのかしら?」

ルイズとのんびりと四方山話をする事数秒。“遠視”の魔法で見ていると、ロイヤル・ソヴリン号から合図──サイト曰く“フラッシュ・バン”が立ち上がり、旗も貴族派の物から王党派の物へと変わる。

周りの艦隊も、ロイヤル・ソヴリン号が奪取された事を悟ったのか、砲撃や騎竜等でロイヤル・ソヴリン号を墜とそうとするけど、“絶霧(ディメンション・ロスト)”らしき〝霧〟に依って阻まれる。

その内、ロイヤル・ソヴリン号もこちらの制空権に入り、ロイヤル・ソヴリン奪還作戦は成功に終わった。

SIDE END

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

SIDE 平賀 才人

とりあえず、“腑罪証明(アリバイブロック)”で操舵室に転移して〝覇王色の覇気〟で一気に制圧すること自体は割と余裕だった。

「……ん? これは?」

操舵を“別魅”の分身に任せて艦長室っぽいところを船員を〝(バインド)〟で捕縛しつつ検分していると、金髪カールの30~40歳程の男が泡を吹いて気絶していた。

……そんな男がただ倒れているだけなら問題なく、普通に捕縛するだけだが、問題はその男が身に着けている恐ろしい程の魔力が内包されている指輪だ。何やらコイツが持っていたらロクな事にならなそうなので、丁重に〝倉庫〟に仕舞っておく。

SIDE END 
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