久遠の神話
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第百八話 最後の戦いその二
「このところな」
「そうでしょうか」
「ああ、振っていてな」
その素振りが、というのだ。
「音が鳴ってるよ」
「音が、ですか」
「風を切ってる感じでな」
「そんな感じですか」
「これだとな」
その振りなら、というのだ。
「次の試合も期待出来るな」
「出させてくれたら」
「頑張れよ」
部長は笑顔で彼に言った。
「試合も」
「はい、そうさせてもらいます」
「真面目に練習してるとな」
上城は部活も真面目にしている、その彼ならというのだ。
「結果が出て来るからな」
「そうですね、それは」
「真面目にしていたら」
他の部員達も部長のその言葉に応える。今彼等は紺色の道着の上に胴と垂れを付けてそのうえで素振りをしているのだ。
「よくなりますね」
「結果が出ますよね」
「だからな」
部長は彼等にも話した。
「俺達もな」
「はい、真面目にですね」
「練習するべきですね」
「真面目にしないと怪我するからな」
気を抜いているからだ。
「そうもならない為にもな」
「やるからには真面目に」
「そういうことですね」
「そういうことだよ」
部長はこう彼等にも言うのだった。
「怪我はしたくないだろ、皆」
「後が大変ですからね」
「怪我は」
「そう、だから」
それでだというのだ。
「真面目にな」
「気を抜かないで」
「それで、ですね」
部員達も応えて部活に励む。上城は部活も普通にした。
下校もだ、樹里と共に歩きつつ家に帰った、そして別れる時に彼女に微笑んでこう言った。
「じゃあね」
「うん、十二時ね」
「あそこに行くから」
「グラウンドに行って」
「終わらせるから」
「一緒に行くから」
樹里も微笑んで彼に言った。
「見させてもらうわね」
「うん、それじゃあね」
こう話してだ、そしてだった。
上城は樹里と別れて家に帰った、そのうえで。
風呂に入り夕食を食べた、それからだった。
時間が来るまでは勉強をした、そこまで日常通りだった。
加藤も同じだった、朝早く起きトレーニングをしてだった、トマトとパンを食べて勤務先に行って働いて昼食に蕎麦を食べ。
午後も働きストリートファイトを楽しんだ、そうして時間を待ってだった。
十二時には総合グラウンドの中にいた、上城もまた。
樹里はその二人を観客席の一番前から見守っている、聡美達三人の女神達も一緒だ。聡美は眉を曇らせてこう言った。
「最後ですが」
「最後だからこそ」
「不安ですね」
「はい」
そうだとだ、智子と豊香にも答える。
「二人共死なず」
「水の剣士が勝ち」
「そうして」
「彼が戦いの終結を宣言し」
そして、というのだ。
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