美しき異形達
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第十四話 幻の力その二
「菫ちゃんもな」
「お強いですね」
「薙刀自体もそうだけれどな」
「菫さんご自身が」
「ああ」
薊はその菫を見つつ答えた。
「菫ちゃんは強いよ」
「確かにね」
菖蒲もその薙刀の速さを見て言う。
「あの薙刀の筋はね」
「太刀筋って言うべきかね」
薙刀ではあるが、というのだ。
「いいね」
「ええ、そうね」
「あの筋だとな」
馬の怪人は一撃離脱を繰り返しながら菫の攻撃をかわしている、確かにかわされているがそれでもだというのだ。
「出せるな」
「あれがなのね」
「あたし達は皆飛び道具も使えるけれどな」
「力でね」
このことは五人共だ、薊も炎を出せるし菖蒲にしろ氷を出せる。それで向日葵程ではないが離れた場合でも相手を攻められるのだ。
だが、だ。菫はというと。
「菫ちゃんの力は幻か」
「幻は直接攻撃するものではないわ」
「ああ、けれどな」
「それでもよね」
「あの太刀筋ならな」
またこう言う薊だった。
「真空刃出せるな」
「鎌ィ足ね」
「それが出せるな」
「そうね、かなりのものがね」
「むしろ薙刀の方が出しやすいかもな」
薊は菫のその薙刀の振り具合を見つつ述べた。
「あれは」
「そうね、剣はね」
「案外出しにくいだろ」
「振る遠心力が違うから」
薙刀と比べてだ、剣で相手を斬るのは腕力よりも遠心力だ、それを使って斬るものなのだ。
「薙刀はそこが違うわ」
「長い分な」
「だからね」
「ああ、菫ちゃんも刀より出しやすいんだよ」
「それに薙刀自身が」
薊はこの要素も指摘する、とかく薙刀自体の特性がというのだ。
「刀よりも遠心力が出るからな」
「いけるわね」
「そこに菫ちゃんの力を使えば」
「勝てるわね」
「ああ、いけるよ」
今闘っている馬の怪人にというのだ。
「勝てるよ、あの娘」
「そうね、けれど」
「いざっていう時はな」
「私が行くわ」
極めてクールな口調でだ、菖蒲は薊に答えた。
「その時は」
「いや、あたしが行くよ」
薊は笑って菖蒲の名乗りに自分がと返した。
「さっきからうずうずしてるしさ」
「闘いたくて、というのね」
「そうだよ、だからな」
「そうなのね、では」
「譲ってくれないかい?」
「じゃんけんで決めるべきね」
双方の意見が衝突していてしかもどちらも譲らない、そうした状況を打開するにはというのだ。
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