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『曹徳の奮闘記』改訂版

作者:零戦
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第二十九話







 それから三日後、漸く祝勝会も終わったらしく俺達は南陽へ帰還した。

 洛陽を離れる際に霞と桜花に別れを言っておいた。

 二人も仕方ないと言っていたからな。

 また遊びに来いと言われた。




―――玉座―――

「七乃、荊州の様子はどうなっておるのじゃ?」

「はい。劉表は大分、税を民衆から取っていたみたいです」

 七乃が美羽に報告する。

「劉キ殿に直ちに税の見直しをするように言うのじゃ。税は三公七民で調整するのじゃ」

「はいは~い。分かりましたお嬢様。それと治安も少し悪いみたいです」

「ふむ、ならば長門。警備隊を率いて荊州に向かってくれぬか?」

「分かった。人選は俺に任してくれないか?」

「任せるのじゃ」

 俺の言葉に美羽は頷いた。

「では会議はこれで終了じゃ。長門、頼んだぞ」

「分かった」

 俺は直ぐに人選をした。

「それで、私達が荊州に向かうのか?」

「あぁ」

 クロエの言葉に俺は頷く。

 武将は俺、クロエ、ロッタ、星、焔耶で兵員は一万二千だ。

「それじゃあ行くか」

 俺を先頭に部隊は荊州に向かった。





―――荊州城―――

「王双殿、お待ちしていました」

「これは劉キ様。自分なんか頭を下げないで下さい」

 玉座に来ると、荊州牧に命じられた劉キが俺に頭を下げた。

「いえ、父が病死してしまったためにこのような事態が起きたのです。これは我々の責任です」

 草食系ぽい体つきをした劉キはそう言った。

「分かりました。我々も出来る限りの事はしましょう」

 俺は劉キにそう言った。






 劉表の息子、劉キ。

 劉表亡き後に荊州牧に指名された長男だ。

 次男に劉ソウがいる。

「さぁ王双殿。もう一献どうぞ」

「劉キ様、いくら自分が袁術様から派遣されているとはいえ、そこまでされるのは……」

 今は宴会中であり、俺は劉キが新しく酒を注ごうとするのをやめさせる。

「いえいえ、これは私の性格なので……」

 と、劉キが俺に近づいてきた。

「(実は王双殿に相談がありまして……)」

「(……分かりました。後ほど伺いましょう)」

 まさか、暗殺とかは無いだろうな?

 俺、まだ死にたくないし。

 それから、宴会が終わると劉キの部屋を尋ねた。

「劉キ様、王双です」

「どうぞ、入って下さい」

 中から返事があり、俺は用心をして入った。

 部屋には劉キと継母が産んで、劉キの弟にあたる劉ソウがいた。

「これは劉ソウ様。これは一体……」

 何でいるんだ?

「王双殿、お待ちしていました。率直に言いますが、我々を助けてほしいのです」

 劉キが言う。

「えっと……話しが見えてこないのですが……」

「これは失礼しました。話しが率直過ぎました。実は、助けてほしいのは私の命が狙われているからです」

 ………ほぅ。

「それは誰にですか?」

「それは自分の母親である蔡氏と叔父の蔡瑁からです」

 そこへ劉ソウが言う。

「私と継母は血が繋がっていません。父親である劉表が亡くなる寸前、継母はさりげなく後継者を劉ソウにと言いましたが父は私を後継者にしました」

「表面上は何も音沙汰は無いのですが、兄上の暗殺を狙っているようです」

「……そこへ自分達が来たので、協力して二人を最悪処刑まで……と?」

 二人は無言で頷いた。

「しかし劉ソウ様。貴方にしてみれば絶好の機会のはずですが?」

 俺の言葉に劉ソウは苦笑した。

「自分は政治より外に出ている方が好きなんですよ。政治は兄上が好きなので……」

 ……成る程ね。

「劉ソウ様、最悪処刑は本当に宜しいので?」

「国をより良い方向にするためなら仕方ありません」

 劉ソウはそう断言した。

「……分かりました。自分達も協力しましょう」

「おぉ、王双殿ありがとうございます」

 劉キが頭を下げる。

「しかし、証拠が無ければ二人を捕らえる事は出来ませんが……」

「それは分かっています。しかし、グズグズとしていれば兄上が毒殺されてしまいます」

「……何か心当たりでも?」

 俺は劉キに聞く。

「……食材の中に毒が仕込んであったのが何回もあります」

 劉キはそう言った。

「………芝居を打ちましょうか」

「芝居ですか?」

「はい。このように………」

 そして、それは実行された。




―――南陽―――

「お嬢様~。長門さんから連絡が来ています~」

 書簡を携えた七乃が玉座にやって来た。

「分かった。見せてたも」

「はい、どうぞ」

 七乃から書簡を渡された美羽は長門からの報告を見た。

「………七乃。荊州の蔡瑁を処刑したみたいじゃ」

「蔡瑁ですか?」

「うむ。どうやら劉キ殿の腹違いの弟……まぁ蔡瑁の妹の子どもじゃな。蔡氏は劉表の妻じゃからな。その子どもを荊州牧をやらそうと劉表キ殿を暗殺しようと考えてたみたいじゃ。それには蔡氏も加わっているみたいじゃのぅ」

 書簡を読みながら美羽が言う。

「じゃあ劉キ殿は継母も処刑したんですか?」

「いや、蔡氏は屋敷で幽閉のようじゃな」

「そうですか。ですが、何で私達に報告をしてきたんですか?」

「一応、荊州は後継者の劉キ殿の領地ではあるのじゃが、領地的には妾の領地じゃからな。それとなく、何かあれば報告するようにと妾が言っておいたのじゃ」

「………お嬢様……立派になられて……」

 七乃は美羽の成長ぶりに思わず涙を流した。

 その時、一人の兵士が来た。

「袁術様。細作からの報告です」

「うむ。七乃、受け取るのじゃ」

「はい」

 兵士は七乃に書簡を渡すと、玉座を出た。

「……………」

「………お嬢様。これを見て下さい」

 七乃は書簡を美羽に渡した。

 美羽は書簡を読むと、思わず溜め息を吐いてしまった。

「……とうとう来てしまったようじゃな……」

「そうですね………」

 細作からの報告……それは劉宏が死去した事の報告だった。






 
 

 
後書き
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